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4章
船上
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ルーファスが【魔王】との交渉に船で出た後、【刻狼亭】は忙しく従業員が動き回っていた。
医務室の隣りにある製薬室。
「若女将、このポーションは飲ませないで傷にぶっかけて下さい。まぁ飲ませても良いけど、味で昇天するかもしれないっすね」
製薬組みの交渉に行かなかった居残り組ピルマーが朱里に赤い瓶に入ったポーションを説明しながら箱に詰めていく。
「わかりました。こっちの黄色い瓶は?」
朱里がテーブルに並んだ黄色いポーションを指さすと居残り組のロタルスとウェイトが朱里の周りに集まる。
「若女将、この黄色は無茶したバカがいたら飲ませて下さい。即時回復ポーションです。まぁ、味は保証しないんですけど」
「こっちの青い瓶のは安全安心マグノリアさんが作ったちょっと不味いだけの回復ポーションだから適当に飲ませたり傷にぶっかけて下さい」
2人の説明に朱里は「どれも美味しくはないのね」と、苦笑いしつつピルマーに渡された箱を手に宿舎の方へ向かう。
【刻狼亭】から少し離れた宿舎は、玄関ホールと歓談スペースのみ共同であとは、女性従業員入口と男性用従業員入口に分かれている。
ピルマーから渡された箱の上に着替えの入った風呂敷きとルーファスにお世話になる女性従業員達と食べる様に持たされたお菓子を持って玄関ホールで立っていると、普段着を着た女性従業員達が朱里を出迎えに来る。
「若女将、いらっしゃーい!」
「早く入って入って」
「女の園へようこそー」
朱里を取り囲みながら賑やかに連れ込まれ、朱里は【病魔】騒ぎの時から仲が良くなった若手の従業員の三人組と同じ部屋に通される。
女の子らしい配色の薄い桃色のカーテンに箪笥やテーブルも細かな花の細工のしてある可愛らしい物で3人の女子っぷりが伺える部屋に朱里は目を輝かせる。
「お邪魔します。今日はよろしくお願いします」
朱里が3人に笑うと3人ともいい笑顔で返してくる。
薄い小麦色のストレートの髪にこげ茶色の目をした羊獣人のプリシー。
水色のゆるいウェーブのかかった髪に青い目をした水人のヨルン。
さび色の髪をお団子にした緑色の目をした鳥獣人のオリアナ。
「今回も若旦那を落とす会を開きますよ!」
プリシーがビシッと海上を指さしながら高らかに宣言し、朱里が苦笑いした頃、船の上でルーファスの尻尾がゾワっと逆立っていた。
「若旦那、どうしたんですか?」
マグノリアに聞かれ、ルーファスは首を鳴らしながら小さく伸びをする。
「いや、アカリがそろそろ宿舎に着いた頃だと思ってな」
「若女将なら大丈夫ですよ。製薬室のとっておきを持たせてますから!」
グッと親指を立てるマグノリアにルーファスはそれが一番問題なのだが・・・とは言えなかった。
効能一番、味は二の次のポーションを作りまわる【刻狼亭】の製薬部隊は危険物も平気で混ぜ込む時があるので間違ってもお世話にはなりたくない。と、他の従業員に言われている。
ルーファスもそれは常々思っている。
「そろそろ目的地の海域付近ですから停止しましょう」
テッチが海域地図を見ながらテンに言うとテンが手を上げて船がゆっくり停止する。
「着いたの?私、海に潜っても良い?」
アルビーが船内から顔を出しキョロキョロと辺りを見回す。
今回、アルビーは【病魔】が近づいたら見抜く役目と、【聖女】が本物ならば光竜であるアルビーには見抜く事が出来る為、見抜く役目。そして何か船であれば空を飛んで【刻狼亭】へ知らせに行くという3つの役目がある。
「潜っても良いが、ここら辺は海獣がいるぞ?齧られても知らんぞ?」
ルーファスがアルビーに意地の悪い顔をするとアルビーは自分の尻尾を持ってブルっと身震いをして首を振る。
「潜るのは止めておくね?」
「そうするといい」
素直に撤回したアルビーにルーファスが小さく笑い、アルビーがルーファスの横にトコトコと歩いてきて甲板で小さく欠伸をする。
ルーファスが懐中時計を懐から取り出して時間を見ると約束の時間までわずかとなった。
海面が揺らぎ、段々と大きな揺れになり波が船を揺らすと、船の先にドーム状の白い巨体が海から上がってくる。
「お待たせしてすまない!」
そんな声が上からし、まるで羽の様に軽やかに甲板に【魔王】リロノスが【聖女】ありすを抱えて舞い降りる。
リロノスが甲板に降りると、ドーム状の巨体は海の中に沈んでいく。
「今の何?何?」
アルビーが首を振りながらリロノスに聞くとリロノスはアルビーの瞳を見ながら目を細める。
「あれは海獣のホエールデビルだ。船代わりに乗ってきた」
「ぶっちゃけクジラだよね。真っ白いクジラ」
リロノスが言うとありすが楽しそうに笑いながらクロノスの腕から甲板に降りる。
「ホエールデビルかぁ。私、遠目でしか見た事なかったけど大きかったんだね」
アルビーが海面を見ながら尻尾を振ると、ルーファスに尻尾を軽く足で踏まれ、慌ててルーファスの後ろに戻る。
アルビーが瞬きをして「大丈夫だよ」と小声でルーファスに言うとルーファスが頷く。
「さて、そちらは2人だけ・・・と、言う事はないのだろう?」
ルーファスが値踏みするように2人を見ると、リロノスは小さく降参ポーズで首を振る。
「いや、私とシノノメの2人だけだ。シノノメの居ない間は国に【病魔】が入ってきても対応出来ないからな。他の者に対応に当たらせている。それに、ただでさえ混乱している所へ大人数で訪れるのは不躾というものだろう」
リロノスはアルビーに興味を持っているありすの制服のシャツを掴み、失礼のない様に止めている。
テンが「嘘はないようです」とルーファスに伝え、ルーファスは少し首をひねる。
「誠心誠意・・・と、いう所か?しかし、【魔王】がノコノコ護衛もつけないで来るのは些か危険だと思うが?」
誠心誠意というよりは、一歩間違えれば、こちらを馬鹿にしていると思われても仕方がない行動ではある。と、ルーファスは若い【魔王】に生暖かい目を向ける。
「私は【魔王】だ。でも替えの利く【魔王】だからな。私がここで朽ち果てても弟が継ぐだろうし、まぁ、これでも自分の身とシノノメぐらいは守れるつもりだ」
「何とかなるっしょ!」
リロノスの言葉にありすが元気に答えると、リロノスはありすに苦笑いを浮かべる。
「うちの作った薬はコレ」
ありすが制服のポケットから小瓶を出してルーファスの目の前に差し出す。
リロノスがありすに「交渉には順序があると言っておいただろう?」と慌てて注意するが、マグノリアとテッチが奪う様に小瓶を受け取る。
「安全かどうかも判らない物を若旦那に触らせられない」
「とりあえず、【鑑定】と製薬分解をして調べるから、しばらくおれ達に近づくなよ。毒ならすぐに緊急音が出る様に結界張るからな」
マグノリアとテッチはそう言いながら、船の後ろに牽引してきた小型の船の上に移動し、結界を張りながらポーションを調べに入る。
もし何かあっても小型の船を切り離し、被害が出るのは2人だけにするという措置である。
2人がポーションを調べている間、ルーファスの後ろにいたアルビーが鼻を鳴らす。
「この子【聖】属性なのは間違いないよ。アカリとは違ってすっごく甘すぎて濃縮された香りがする」
ルーファスの背中に鼻を押しつけて「うーん」とアルビーが唸る。
「なんかこのトカゲ失礼じゃね?」
ありすはアルビーがルーファスの服で鼻を誤魔化すのを見て少し頬をふくらます。
「シノノメ、トカゲじゃなくて光竜だ。ドラゴン。失礼に値するから言わないでくれ」
リロノスが困り顔でありすをたしなめる。
「だってリロっち、女の子に「うわっくさっ!」みたいな態度どーかと思う」
アルビーに指をさすありすに対して、アルビーも小さい手をありすに指す。
「だって、アカリみたいに花みたいな香りじゃなくて、果物が熟しすぎた香りなんだもの。君は舐めなくてもニオイが喉に痛いぐらい強い」
アルビーがルーファスの背中に鼻を押し付けたまま、ありすに頬をふくらます。
リロノスが胃を押さえながら、ありすに止める様に何度か注意するものの、アルビーとありすの睨み合いはポーションの結果が出るまで続いた。
小型の船からマグノリアとテッチが戻り、ポーションの結果を伝える。
「こちらの効果は【病魔】対策用と通常の病気やケガなど治せるもので間違いはありません。ただし、体力回復や他の付属効果はありませんね」
「【刻狼亭】側の素材提供者にも効果はあります」
医務室の隣りにある製薬室。
「若女将、このポーションは飲ませないで傷にぶっかけて下さい。まぁ飲ませても良いけど、味で昇天するかもしれないっすね」
製薬組みの交渉に行かなかった居残り組ピルマーが朱里に赤い瓶に入ったポーションを説明しながら箱に詰めていく。
「わかりました。こっちの黄色い瓶は?」
朱里がテーブルに並んだ黄色いポーションを指さすと居残り組のロタルスとウェイトが朱里の周りに集まる。
「若女将、この黄色は無茶したバカがいたら飲ませて下さい。即時回復ポーションです。まぁ、味は保証しないんですけど」
「こっちの青い瓶のは安全安心マグノリアさんが作ったちょっと不味いだけの回復ポーションだから適当に飲ませたり傷にぶっかけて下さい」
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「若女将、いらっしゃーい!」
「早く入って入って」
「女の園へようこそー」
朱里を取り囲みながら賑やかに連れ込まれ、朱里は【病魔】騒ぎの時から仲が良くなった若手の従業員の三人組と同じ部屋に通される。
女の子らしい配色の薄い桃色のカーテンに箪笥やテーブルも細かな花の細工のしてある可愛らしい物で3人の女子っぷりが伺える部屋に朱里は目を輝かせる。
「お邪魔します。今日はよろしくお願いします」
朱里が3人に笑うと3人ともいい笑顔で返してくる。
薄い小麦色のストレートの髪にこげ茶色の目をした羊獣人のプリシー。
水色のゆるいウェーブのかかった髪に青い目をした水人のヨルン。
さび色の髪をお団子にした緑色の目をした鳥獣人のオリアナ。
「今回も若旦那を落とす会を開きますよ!」
プリシーがビシッと海上を指さしながら高らかに宣言し、朱里が苦笑いした頃、船の上でルーファスの尻尾がゾワっと逆立っていた。
「若旦那、どうしたんですか?」
マグノリアに聞かれ、ルーファスは首を鳴らしながら小さく伸びをする。
「いや、アカリがそろそろ宿舎に着いた頃だと思ってな」
「若女将なら大丈夫ですよ。製薬室のとっておきを持たせてますから!」
グッと親指を立てるマグノリアにルーファスはそれが一番問題なのだが・・・とは言えなかった。
効能一番、味は二の次のポーションを作りまわる【刻狼亭】の製薬部隊は危険物も平気で混ぜ込む時があるので間違ってもお世話にはなりたくない。と、他の従業員に言われている。
ルーファスもそれは常々思っている。
「そろそろ目的地の海域付近ですから停止しましょう」
テッチが海域地図を見ながらテンに言うとテンが手を上げて船がゆっくり停止する。
「着いたの?私、海に潜っても良い?」
アルビーが船内から顔を出しキョロキョロと辺りを見回す。
今回、アルビーは【病魔】が近づいたら見抜く役目と、【聖女】が本物ならば光竜であるアルビーには見抜く事が出来る為、見抜く役目。そして何か船であれば空を飛んで【刻狼亭】へ知らせに行くという3つの役目がある。
「潜っても良いが、ここら辺は海獣がいるぞ?齧られても知らんぞ?」
ルーファスがアルビーに意地の悪い顔をするとアルビーは自分の尻尾を持ってブルっと身震いをして首を振る。
「潜るのは止めておくね?」
「そうするといい」
素直に撤回したアルビーにルーファスが小さく笑い、アルビーがルーファスの横にトコトコと歩いてきて甲板で小さく欠伸をする。
ルーファスが懐中時計を懐から取り出して時間を見ると約束の時間までわずかとなった。
海面が揺らぎ、段々と大きな揺れになり波が船を揺らすと、船の先にドーム状の白い巨体が海から上がってくる。
「お待たせしてすまない!」
そんな声が上からし、まるで羽の様に軽やかに甲板に【魔王】リロノスが【聖女】ありすを抱えて舞い降りる。
リロノスが甲板に降りると、ドーム状の巨体は海の中に沈んでいく。
「今の何?何?」
アルビーが首を振りながらリロノスに聞くとリロノスはアルビーの瞳を見ながら目を細める。
「あれは海獣のホエールデビルだ。船代わりに乗ってきた」
「ぶっちゃけクジラだよね。真っ白いクジラ」
リロノスが言うとありすが楽しそうに笑いながらクロノスの腕から甲板に降りる。
「ホエールデビルかぁ。私、遠目でしか見た事なかったけど大きかったんだね」
アルビーが海面を見ながら尻尾を振ると、ルーファスに尻尾を軽く足で踏まれ、慌ててルーファスの後ろに戻る。
アルビーが瞬きをして「大丈夫だよ」と小声でルーファスに言うとルーファスが頷く。
「さて、そちらは2人だけ・・・と、言う事はないのだろう?」
ルーファスが値踏みするように2人を見ると、リロノスは小さく降参ポーズで首を振る。
「いや、私とシノノメの2人だけだ。シノノメの居ない間は国に【病魔】が入ってきても対応出来ないからな。他の者に対応に当たらせている。それに、ただでさえ混乱している所へ大人数で訪れるのは不躾というものだろう」
リロノスはアルビーに興味を持っているありすの制服のシャツを掴み、失礼のない様に止めている。
テンが「嘘はないようです」とルーファスに伝え、ルーファスは少し首をひねる。
「誠心誠意・・・と、いう所か?しかし、【魔王】がノコノコ護衛もつけないで来るのは些か危険だと思うが?」
誠心誠意というよりは、一歩間違えれば、こちらを馬鹿にしていると思われても仕方がない行動ではある。と、ルーファスは若い【魔王】に生暖かい目を向ける。
「私は【魔王】だ。でも替えの利く【魔王】だからな。私がここで朽ち果てても弟が継ぐだろうし、まぁ、これでも自分の身とシノノメぐらいは守れるつもりだ」
「何とかなるっしょ!」
リロノスの言葉にありすが元気に答えると、リロノスはありすに苦笑いを浮かべる。
「うちの作った薬はコレ」
ありすが制服のポケットから小瓶を出してルーファスの目の前に差し出す。
リロノスがありすに「交渉には順序があると言っておいただろう?」と慌てて注意するが、マグノリアとテッチが奪う様に小瓶を受け取る。
「安全かどうかも判らない物を若旦那に触らせられない」
「とりあえず、【鑑定】と製薬分解をして調べるから、しばらくおれ達に近づくなよ。毒ならすぐに緊急音が出る様に結界張るからな」
マグノリアとテッチはそう言いながら、船の後ろに牽引してきた小型の船の上に移動し、結界を張りながらポーションを調べに入る。
もし何かあっても小型の船を切り離し、被害が出るのは2人だけにするという措置である。
2人がポーションを調べている間、ルーファスの後ろにいたアルビーが鼻を鳴らす。
「この子【聖】属性なのは間違いないよ。アカリとは違ってすっごく甘すぎて濃縮された香りがする」
ルーファスの背中に鼻を押しつけて「うーん」とアルビーが唸る。
「なんかこのトカゲ失礼じゃね?」
ありすはアルビーがルーファスの服で鼻を誤魔化すのを見て少し頬をふくらます。
「シノノメ、トカゲじゃなくて光竜だ。ドラゴン。失礼に値するから言わないでくれ」
リロノスが困り顔でありすをたしなめる。
「だってリロっち、女の子に「うわっくさっ!」みたいな態度どーかと思う」
アルビーに指をさすありすに対して、アルビーも小さい手をありすに指す。
「だって、アカリみたいに花みたいな香りじゃなくて、果物が熟しすぎた香りなんだもの。君は舐めなくてもニオイが喉に痛いぐらい強い」
アルビーがルーファスの背中に鼻を押し付けたまま、ありすに頬をふくらます。
リロノスが胃を押さえながら、ありすに止める様に何度か注意するものの、アルビーとありすの睨み合いはポーションの結果が出るまで続いた。
小型の船からマグノリアとテッチが戻り、ポーションの結果を伝える。
「こちらの効果は【病魔】対策用と通常の病気やケガなど治せるもので間違いはありません。ただし、体力回復や他の付属効果はありませんね」
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