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4章
東国の病魔
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バサッと羽を広げてアルビーが東国の王城のバルコニーに静かに降りる。
朝日が丁度出始めた時刻。
コンコンとアルビーが窓を叩き、室内の人間がバルコニーへ近づいてくる。
カチャリと、窓の蝶番が開けられ、バルコニーに刀を片手にしたカイナが出てくる。
「ドラゴン・・何者だ?」
「私はアルビー。ルーファスから伝言だよ『宿屋の毒物は【病魔】即刻、宿屋を焼き払い、回収した他の遺体も燃やす様に。感染した警備兵が出たから警備砦を封鎖するように命令を出し、城下町に他の感染者が居ないか騎士団に探させろ』だったかな?」
アルビーは首をかしげながらカイナにルーファスからの伝言を伝える。
カイナは困惑した表情でアルビーを見つめる。
「あの、本当にそんな事が?【病魔】の出所はあの宿屋からでいいのでしょうか?」
カイナがアルビーに質問をするもアルビーは首をかしげてカイナを見つめ返す。
「私に聞かれても出所がどこかはサッパリだけど、宿屋から回収した物は【病魔】だったし、警備砦で感染した人がでたのも確かだよ。早くしないと駄目だよ。私は今から【刻狼亭】にも伝言を伝えて回復薬を持ってこないといけないから、それじゃあ確かに伝言したからね」
羽を動かしてアルビーが空に一気に急上昇して羽ばたいていくのを見届け、カイナも踵を返して行動を開始する。
「爺!今すぐ伝令を!それと騎士団を呼んでくれ!」
「かしこまりました」
カイナの部屋に居た老人が頭を下げ部屋を出ていく。
東国の警備砦。
少し街中から離れた森の中にある砦は昨夜の宿屋から持ちかえった毒物のせいで大混乱が起こっていた。
警備団長が冷静な事がせめてもの救いという所だろうか?
既に【病魔】の話は伝え、毒物を回収した際に感染した人間も確保されている。
しかし、それでも目に見えない恐怖というモノが伝染し、家族の心配をする者や感染した人間と同じ場所に居たら自分も感染すると、怖がる者で勝手な行動をとる者も出て対応に追われていた。
赤毛の爽やかな感じの30代程の男、この警備砦の団長ノブ・ビドルフは静かに隔離した部下達の部屋に入る。
隔離部屋には既に感染した下っ端の部下3人とベテランの部下2人、そして【刻狼亭】のルーファスとシュテンが居た。
「こんな事になって本当にすまない!」
ルーファスとシュテンにノブが土下座せんばかりに頭を下げる。
2人は小さく息を吐き下っ端の3人を睨み付ける。
睨み付けられた3人は首をすぼめてお互いに目線を向け合い身を縮める。
「謝って済む問題ならとっくに片付いているんですよ!」
シュテンが切れ気味に怒りを露わにする。
シュテンが砦に【病魔】の事を伝え、そして関わった者達を集めて隔離をしていた時、ルーファスとアルビーも大丈夫な者をアルビーの鼻で確かめ、街の方へ他の感染者が居ないか捜査に参加させるように要請に来た。
毒物回収に関わった下っ端3人組はすでにパニック状態になっており、あろうことか【病魔】の入った樽をぶちまけた挙句、そこでもパニックを起こし暴れ、止めに入ったベテラン2人と、樽を燃やすために近くに居たルーファスを庇おうとしたシュテンが【病魔】に触れてしまい、すぐさま洗い流したものの、感染しているかは判らない状況になり、隔離された。
ルーファスも近くに居た事から一応の隔離をされ、アルビーに朱里が作った回復ポーションを【刻狼亭】から持ってくるように言い、今現在、一緒に隔離されている状態である。
【病魔】はすぐさま出るわけではなく、咳や熱が出始め、1週間かそこらで体が持たずに破裂するらしい。熱や咳が出た時点で発症しているかがわかる。と、アルビーが言っていたので猶予はまだ少しある。
朱里の回復ポーションを早急に飲むこと、全てはアルビーの飛行速度と体力に掛かっている。
アルビーが温泉大陸にたどり着いたのは、出発してから10時間後。
直ぐにおかしいと思ったのは、温泉街に歩く人が居なかった事と【刻狼亭】に長蛇の列が出来ていた事だった。
アルビーは慌てて【刻狼亭】の料亭の庭園に降りると、庭園からルーファスの部屋に入り込む。
「アカリ、居る?」
部屋の中で朱里を呼ぶが返答は無い。
アルビーは氷室に向かい氷室の扉を開けるがそこには朱里と一緒に作った大量のポーションは入っていなかった。
アルビーは困惑しながら部屋を出て料亭の中を歩く。
「あっ、アルビーじゃないかい!」
アルビーの名を呼ぶ声にアルビーが振り向くと赤毛の三つ編みをしたきつい顔つきの女性従業員のフリウーラが出前箱を手に立っていた。
「フリウーラ、どうなってるの?外の人達は何なの?」
フリウーラは出前箱から薄く濁った水の入った水差しからコップにそれを注ぎアルビーに差し出す。
「とりあえず、これを飲んでからだよ」
アルビーが首をかしげながらコップに口をつける。
「あっ、これアカリの味がする・・・あと何かの薬草?」
「そっ、今【病魔】が蔓延しててね。それ飲めば治るから皆に配ってんの。外のはそれを求めてる人達だよ」
「じゃあ、アカリが作った回復ポーションはもうないの?」
「最初に感染者が出た時に感染者とうちの従業員で飲んだから無いよ」
「どうしよう!シュテンとルーファスの分持って帰らないといけないのに!」
アルビーがオロオロするとフリウーラがアルビーのお腹にポスっと拳を入れる。
「落ち着きな。若旦那達の方も【病魔】が広がってるのかい?」
「そうなんだ。だから急がないと」
「確かアルビーは透明化出来たよね?」
「うん。出来るよ」
「私の手を持ったまま透明化しな。アカリにポーション頼みに行くよ」
「わかった」
フリウーラの手を握り、アルビーは透明化の魔法を使いフリウーラに手を引かれながら歩き出す。
「フリウーラ、なんで透明化?」
「今、もし感染してる奴がアカリに近づいたら大変だからね。用心してんのさ」
なるほどとアルビーは頷きながら、フリウーラと温泉の源泉地帯を歩いて、森の奥へ進むと、少し崖肌と木々に囲まれた白い大きな門が見えてくる。
「ハガネ!扉を開けとくれ!」
フリウーラが呼びかけると薄暗い門の奥からハガネが出てくる。
「フリウーラ?どこだ?」
「あっ、アルビー手を離していいよ」
アルビーがフリウーラの手を離すと、ハガネが目の前に現れた2人に驚いて少し地面から足が浮く。
「んっだよ!ビックリした!」
「アハハ。悪いね。人が多いから見つからない様にして来たのさ」
ハガネは門の扉を乳白色の鍵で開けると2人を門の中に入れてからまた門に鍵をする。
「アルビー、お前どこほっつき歩いてたんだ?アカリが心配してたんだぞ」
「うーっ、ごめんなさい。ルーファス達に隠れて東国について行ってたんだ」
「やっぱりか。お前は・・・若旦那たちに怒られただろ?」
「怒られて頬っぺたギリギリされたよ」
ハガネが苦笑いしながら奥へ進んでいくと、奥では数人の【刻狼亭】の従業員が薬草を選別したり、鍋を掻きまわしたりしながら、ポーション造りを忙しくしている。
更に奥に行くと屏風に囲まれた場所で朱里が布団の上で寝ている。
「アカリ、寝たとこ悪い。アルビーが見つかったぞ」
ハガネに声をかけられ、朱里の目がゆっくり開き、ハガネに背に手を回されながら体を起こす。
「アカリ?どうしたの?顔色悪いよ?」
アルビーが青い顔をした朱里に心配そうな声を出すと、朱里がアルビーに手招きする。
アルビーが顔を朱里に近づけると、朱里がアルビーの鼻先をゴンっと叩く。
「アルビー、誰にも何も言わずに何処に行ってたの?駄目でしょ!」
アルビーは鼻先を手で押えながら「ごめんなさい」としょんぼりと声を出す。
「心配したんだよ?」
朱里が困った顔で笑うとアルビーは朱里の頭に擦り寄って喉をキューと鳴らす。
「アルビー、白い着物も勝手に持っていったら駄目よ?地図に花マークがいっぱい描いてあったから、着物の花の場所って小鬼さんの情報で解って、私の為だって解ったけど、すごく心配したの」
「ごめんねアカリ」
しょんぼりするアルビーに朱里が「もういいよ」と笑うとアルビーの金色の目が嬉しそうに輝く。
「アルビー、今【病魔】が蔓延してるから気を付けないと外は危ないのよ?」
「あっ、そうだよ。【病魔】が東国でも出てシュテンとルーファスも隔離されちゃって、アカリと一緒に作った回復ポーションが欲しいんだ。すぐに持って行かなきゃいけないんだ」
朱里は小さな箱をアルビーの目の前に差し出す。
「ルーファスとシュテンとアルビーの分をちゃんと取って置いたよ」
アルビーは箱を受け取ると嬉しそうに尻尾を振る
「ありがとうアカリ。あと、申し訳ないんだけど、もう少しある?他にも感染した人が居て・・・」
「わかった。もう少しならいけるから、ハガネ用意してくれる?」
朱里が背を支えているハガネに頼むとハガネは首を振る。
「駄目だ!それ以上は無理だ!」
「ハガネ・・・」
朱里が眉を下げるがハガネは首を縦には振らない。
「あっ、そうだ・・・アルビー、あなた聖水って作れる?」
「作れるよ?」
「そう。なら、大丈夫ね」
朱里はそう言うと髪をキツく縛り上げ、道具箱からハサミを出すとそのまま髪にハサミをいれる。
髪束を朱里が元の世界から持ってきたトートバックに入れてアルビーに渡す。
「私の髪を聖水に付ければ【聖域】で【病魔】も治るから、アルビーお願いね」
「アカリ?!なにしてるの!髪!」
アルビーが声を上げるとフリウーラとハガネも声を上げる。
「アカリなにしてんだい!」
「バカ!お前、なんつーことしてんだよ!」
3人に苦笑いしながら朱里は目を細める。
「髪はいつかは伸びるけど、命は失われたら戻らないんだよ?私の髪で誰かが助かるなら惜しくないよ」
朝日が丁度出始めた時刻。
コンコンとアルビーが窓を叩き、室内の人間がバルコニーへ近づいてくる。
カチャリと、窓の蝶番が開けられ、バルコニーに刀を片手にしたカイナが出てくる。
「ドラゴン・・何者だ?」
「私はアルビー。ルーファスから伝言だよ『宿屋の毒物は【病魔】即刻、宿屋を焼き払い、回収した他の遺体も燃やす様に。感染した警備兵が出たから警備砦を封鎖するように命令を出し、城下町に他の感染者が居ないか騎士団に探させろ』だったかな?」
アルビーは首をかしげながらカイナにルーファスからの伝言を伝える。
カイナは困惑した表情でアルビーを見つめる。
「あの、本当にそんな事が?【病魔】の出所はあの宿屋からでいいのでしょうか?」
カイナがアルビーに質問をするもアルビーは首をかしげてカイナを見つめ返す。
「私に聞かれても出所がどこかはサッパリだけど、宿屋から回収した物は【病魔】だったし、警備砦で感染した人がでたのも確かだよ。早くしないと駄目だよ。私は今から【刻狼亭】にも伝言を伝えて回復薬を持ってこないといけないから、それじゃあ確かに伝言したからね」
羽を動かしてアルビーが空に一気に急上昇して羽ばたいていくのを見届け、カイナも踵を返して行動を開始する。
「爺!今すぐ伝令を!それと騎士団を呼んでくれ!」
「かしこまりました」
カイナの部屋に居た老人が頭を下げ部屋を出ていく。
東国の警備砦。
少し街中から離れた森の中にある砦は昨夜の宿屋から持ちかえった毒物のせいで大混乱が起こっていた。
警備団長が冷静な事がせめてもの救いという所だろうか?
既に【病魔】の話は伝え、毒物を回収した際に感染した人間も確保されている。
しかし、それでも目に見えない恐怖というモノが伝染し、家族の心配をする者や感染した人間と同じ場所に居たら自分も感染すると、怖がる者で勝手な行動をとる者も出て対応に追われていた。
赤毛の爽やかな感じの30代程の男、この警備砦の団長ノブ・ビドルフは静かに隔離した部下達の部屋に入る。
隔離部屋には既に感染した下っ端の部下3人とベテランの部下2人、そして【刻狼亭】のルーファスとシュテンが居た。
「こんな事になって本当にすまない!」
ルーファスとシュテンにノブが土下座せんばかりに頭を下げる。
2人は小さく息を吐き下っ端の3人を睨み付ける。
睨み付けられた3人は首をすぼめてお互いに目線を向け合い身を縮める。
「謝って済む問題ならとっくに片付いているんですよ!」
シュテンが切れ気味に怒りを露わにする。
シュテンが砦に【病魔】の事を伝え、そして関わった者達を集めて隔離をしていた時、ルーファスとアルビーも大丈夫な者をアルビーの鼻で確かめ、街の方へ他の感染者が居ないか捜査に参加させるように要請に来た。
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ルーファスも近くに居た事から一応の隔離をされ、アルビーに朱里が作った回復ポーションを【刻狼亭】から持ってくるように言い、今現在、一緒に隔離されている状態である。
【病魔】はすぐさま出るわけではなく、咳や熱が出始め、1週間かそこらで体が持たずに破裂するらしい。熱や咳が出た時点で発症しているかがわかる。と、アルビーが言っていたので猶予はまだ少しある。
朱里の回復ポーションを早急に飲むこと、全てはアルビーの飛行速度と体力に掛かっている。
アルビーが温泉大陸にたどり着いたのは、出発してから10時間後。
直ぐにおかしいと思ったのは、温泉街に歩く人が居なかった事と【刻狼亭】に長蛇の列が出来ていた事だった。
アルビーは慌てて【刻狼亭】の料亭の庭園に降りると、庭園からルーファスの部屋に入り込む。
「アカリ、居る?」
部屋の中で朱里を呼ぶが返答は無い。
アルビーは氷室に向かい氷室の扉を開けるがそこには朱里と一緒に作った大量のポーションは入っていなかった。
アルビーは困惑しながら部屋を出て料亭の中を歩く。
「あっ、アルビーじゃないかい!」
アルビーの名を呼ぶ声にアルビーが振り向くと赤毛の三つ編みをしたきつい顔つきの女性従業員のフリウーラが出前箱を手に立っていた。
「フリウーラ、どうなってるの?外の人達は何なの?」
フリウーラは出前箱から薄く濁った水の入った水差しからコップにそれを注ぎアルビーに差し出す。
「とりあえず、これを飲んでからだよ」
アルビーが首をかしげながらコップに口をつける。
「あっ、これアカリの味がする・・・あと何かの薬草?」
「そっ、今【病魔】が蔓延しててね。それ飲めば治るから皆に配ってんの。外のはそれを求めてる人達だよ」
「じゃあ、アカリが作った回復ポーションはもうないの?」
「最初に感染者が出た時に感染者とうちの従業員で飲んだから無いよ」
「どうしよう!シュテンとルーファスの分持って帰らないといけないのに!」
アルビーがオロオロするとフリウーラがアルビーのお腹にポスっと拳を入れる。
「落ち着きな。若旦那達の方も【病魔】が広がってるのかい?」
「そうなんだ。だから急がないと」
「確かアルビーは透明化出来たよね?」
「うん。出来るよ」
「私の手を持ったまま透明化しな。アカリにポーション頼みに行くよ」
「わかった」
フリウーラの手を握り、アルビーは透明化の魔法を使いフリウーラに手を引かれながら歩き出す。
「フリウーラ、なんで透明化?」
「今、もし感染してる奴がアカリに近づいたら大変だからね。用心してんのさ」
なるほどとアルビーは頷きながら、フリウーラと温泉の源泉地帯を歩いて、森の奥へ進むと、少し崖肌と木々に囲まれた白い大きな門が見えてくる。
「ハガネ!扉を開けとくれ!」
フリウーラが呼びかけると薄暗い門の奥からハガネが出てくる。
「フリウーラ?どこだ?」
「あっ、アルビー手を離していいよ」
アルビーがフリウーラの手を離すと、ハガネが目の前に現れた2人に驚いて少し地面から足が浮く。
「んっだよ!ビックリした!」
「アハハ。悪いね。人が多いから見つからない様にして来たのさ」
ハガネは門の扉を乳白色の鍵で開けると2人を門の中に入れてからまた門に鍵をする。
「アルビー、お前どこほっつき歩いてたんだ?アカリが心配してたんだぞ」
「うーっ、ごめんなさい。ルーファス達に隠れて東国について行ってたんだ」
「やっぱりか。お前は・・・若旦那たちに怒られただろ?」
「怒られて頬っぺたギリギリされたよ」
ハガネが苦笑いしながら奥へ進んでいくと、奥では数人の【刻狼亭】の従業員が薬草を選別したり、鍋を掻きまわしたりしながら、ポーション造りを忙しくしている。
更に奥に行くと屏風に囲まれた場所で朱里が布団の上で寝ている。
「アカリ、寝たとこ悪い。アルビーが見つかったぞ」
ハガネに声をかけられ、朱里の目がゆっくり開き、ハガネに背に手を回されながら体を起こす。
「アカリ?どうしたの?顔色悪いよ?」
アルビーが青い顔をした朱里に心配そうな声を出すと、朱里がアルビーに手招きする。
アルビーが顔を朱里に近づけると、朱里がアルビーの鼻先をゴンっと叩く。
「アルビー、誰にも何も言わずに何処に行ってたの?駄目でしょ!」
アルビーは鼻先を手で押えながら「ごめんなさい」としょんぼりと声を出す。
「心配したんだよ?」
朱里が困った顔で笑うとアルビーは朱里の頭に擦り寄って喉をキューと鳴らす。
「アルビー、白い着物も勝手に持っていったら駄目よ?地図に花マークがいっぱい描いてあったから、着物の花の場所って小鬼さんの情報で解って、私の為だって解ったけど、すごく心配したの」
「ごめんねアカリ」
しょんぼりするアルビーに朱里が「もういいよ」と笑うとアルビーの金色の目が嬉しそうに輝く。
「アルビー、今【病魔】が蔓延してるから気を付けないと外は危ないのよ?」
「あっ、そうだよ。【病魔】が東国でも出てシュテンとルーファスも隔離されちゃって、アカリと一緒に作った回復ポーションが欲しいんだ。すぐに持って行かなきゃいけないんだ」
朱里は小さな箱をアルビーの目の前に差し出す。
「ルーファスとシュテンとアルビーの分をちゃんと取って置いたよ」
アルビーは箱を受け取ると嬉しそうに尻尾を振る
「ありがとうアカリ。あと、申し訳ないんだけど、もう少しある?他にも感染した人が居て・・・」
「わかった。もう少しならいけるから、ハガネ用意してくれる?」
朱里が背を支えているハガネに頼むとハガネは首を振る。
「駄目だ!それ以上は無理だ!」
「ハガネ・・・」
朱里が眉を下げるがハガネは首を縦には振らない。
「あっ、そうだ・・・アルビー、あなた聖水って作れる?」
「作れるよ?」
「そう。なら、大丈夫ね」
朱里はそう言うと髪をキツく縛り上げ、道具箱からハサミを出すとそのまま髪にハサミをいれる。
髪束を朱里が元の世界から持ってきたトートバックに入れてアルビーに渡す。
「私の髪を聖水に付ければ【聖域】で【病魔】も治るから、アルビーお願いね」
「アカリ?!なにしてるの!髪!」
アルビーが声を上げるとフリウーラとハガネも声を上げる。
「アカリなにしてんだい!」
「バカ!お前、なんつーことしてんだよ!」
3人に苦笑いしながら朱里は目を細める。
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