黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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4章

東国の公爵

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東国、着物文化といわれる、その昔【異世界召喚】された勇者が色々と広めた文化が根付いている場所。
その文化は近隣の島国である温泉大陸にも少なからず根付いている。
大陸の広さは温泉大陸の2つ分の大きさといった島国。

最近になり、他国の血が混じりすぎ、東国はやや東国らしさが薄らいできた様にも思える。
そして貴族と呼ばれる者達の圧政が激しさを増し、王族軽視が浮き彫りになっているのが現状である。
王族は【勇者】の末裔という事もあり【黒髪】が勇者の証の様な風潮がある事を利用し、第二王子のカイナ・ヒイロ・ツグモの髪が黒色をしている為に【勇者】として祀り上げた。

国民の支持を得て王族の権威を取り戻すための打開策、それが【勇者】カイナの役目。

黒髪の勇者、それは黒髪を英雄視する国民の心を今まさに鷲掴み状態にしている。

そして、カイナは【勇者】の力を確かに受け継いでいる様で冒険者の間でも英雄視される程には腕前が広まり始めている。

それが面白くないのは貴族たちだ。

彼等貴族が、東国にルーファスを招待したのも、黒髪を持ち温泉大陸の所持権利を有しているいわば一国の王の様なものだからと、ルーファスの番が黒髪黒目のまさに英雄の様ではないかと、王族を馬鹿にする為に妻同伴で招待したのである。



東国に到着したルーファスは、馬車に揺られながら目の前のよく喋る男を見つめているが、頭の中では「アカリとアルビーに何を土産に持って帰るかな」と考える程にどうでもいい存在だと思った。

ロルド・カワヤ・ナイノー公爵。
中肉中背の少し頭の寂しい中年でよく喋る男。
それ以上でもそれ以下でもなく、ルーファスの中の評価は「よく喋る男」でしかない。

「それにしても奥様は黒髪黒目の美しい方ですね」
そう言われ、ルーファスは朱里を思い出しながらも自分の横に座っている『妻』に微笑む。
「よかったな。美しいとのお言葉だ」
ルーファスの言葉に黒髪美女もニコリと微笑み返す。
「お上手ですこと。うふふふ」
色の白い細い指で口元を押さえながら笑いつつ美女は隠した口元で舌を出して「ぉぇー」と声の無い言葉を発している。

ロルド公爵は「いやぁーさすが【刻狼亭】の黒真珠と噂されているだけは有りますなー」と美女を褒め称える言葉を長々と喋っている。

一体、いつの間にオレの朱里は黒真珠と噂されたのやら?と、思いつつも、色の白い肌は貝の白の様で、黒髪と黒目はまさに黒真珠に見えなくもないな。と、少し感心もする。
そうこうしているうちに、ロルド公爵の屋敷に着き、ルーファス達は客室に案内される。

「お荷物はこちらで運び入れておきますね」

「ああ、それなりの量があるので大変だろうがよろしく頼む。あと、東国の王族へ贈り物も用意しているので箱が黒塗りの物は私からだと贈っておいてもらえるか?」

ロルド公爵家の使用人にルーファスはそう言いながら流し目をして微笑む。
使用人は頬を染めて「かしこまりました!」とそそくさと出ていく。

それを横で見ていた黒髪美女はやれやれと首を振る。

「旦那様、そういう流し目・・・どうかと思います」

「仕方がないだろう?お前の化粧が剥がれ始めているから気を反らしてたんだ。感謝して欲しいぐらいだ」

「それはそれは。すいません、若」

「今は、若はやめろ。何処で聞かれるかわからん」

「失礼。旦那様」

化粧台の前に座り美女は化粧を直し、ハーッとため息を吐く。

「こんな夏場に化粧とか女性はよくできますね・・・」
「まぁ夜会までは辛抱してくれ」

ルーファスは窓から外を見ながら、黒塗りの巨大な箱が馬車で運ばれるのを見送り「まずは第一段階か」と呟く。
執事が呼びにきて2人はロルド公爵にお茶に誘われ、また長々と夜会までの時間を喋り続ける男の相手をすることになった。

ルーファスは「土産を買いに行く暇もないな・・・アカリとアルビーが騒ぎそうだし、明日の船には馬車は断って店巡りでもして帰るか」と、やはりロルド公爵の話を右から左へ流し帰る時の事を考えていた。





ルーファスの贈った黒塗りの巨大な箱が城に届き、第一王子のグレン・ヒイロ・ツグモがその箱に手を掛けていた。

「兄上!何をしているのですか!」

第二王子のカイナがグレンを止めに部屋に入るとグレンは憎々し気な目でカイナを睨みつける。
カイナと違い真珠色の髪にシルバーピンクの瞳をしたグレンは顔つきも似ておらず、共通点といえば、妹のパールディアと同じ髪色と瞳をしている兄と髪や目の色が違うがパールディアと顔つきが同じの弟という事だけだ。
第一王子でありながら第二王子のカイナに【勇者】を取られ、王位継承権も第二王子にいくのでは?と噂されるほどに彼の立場は不安定な所がある。
特に悪い事もせず、普通に王族として過ごしているだけのグレンとしては納得のいかない物もある。
それゆえにグレンはカイナと仲が悪い。

「またお前か・・・私が王族として【刻狼亭】の主から贈られた物を開ける事もお前は気に入らないのか?」
グレンの苛立つ声にカイナは理解はできるが、今回の物は自分宛の物なので譲るわけにはいかなかった。
「ええ、それは【勇者】である私に【刻狼亭】のルーファス殿が贈られた物です。ご本人に確認されてもそう言うと思います。私がルーファス殿に頼んだものですからね」
その言葉にグレンが黒塗りの箱に蹴りを入れる。

ガンっと大きな音と共に小さな声が漏れる。

「わぁっ」

黒塗りの箱をグレンとカイナは急いで開ける。

そこには様々な箱と一緒に黒髪の白い着物を着た少女が頭を押さえて入っていた。
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