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4章
旧友
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【刻狼亭】別館の宿屋の最上階【月光の間】
仕事の書類をテーブルに山積みにしながらルーファスは算盤を弾いて黒い眼鏡を指で押し上げる。
目の前にはルーファスの仕事を眺めながら首をゆらゆらと落ち着かない旧友がソワソワとルーファスの仕事が終わるのを待っている。
「今、立て込んでいてな。すまないな」
「それは構わないよ。私はルーファスに久々に会えて嬉しいよ」
「ああ、オレも久々にお前に会えて嬉しいよ。アルビー」
アルビーは名前を呼ばれて嬉しそうに頬を緩ませる。
アルビーの嬉しそうな表情にルーファスも頬を緩ませる。
「お前は変わりなさそうだな」
「うん。私は変わらないよ。ルーファスは少し尖ったね」
「尖る?なんだそれは。お前は相変わらず、表現が難解だな」
クスリと笑ってルーファスはアルビーにお茶を差し出す。
「ありがとう。ルーファスは前は全体的に周りを見ていたけど、今は極端な視線で全体を監視してる感じだよね。常に野生に居るみたいな?」
ズズズっと音を立ててお茶を飲みながらアルビーは長い尻尾をくねらせる。
ルーファスもお茶に口を付けながら、ふぅと、息をつく。
「そうだな。前は自分と従業員だけの世界を守っていたが、今は番がオレの世界の中心で守るべき者の中心だからな、守る物が増えるとゆるく周りだけ見ているわけにはいかないからな」
アルビーは目を細めながらルーファスを見る。
「ルーファスは番の事、大事なんだね。幸せそうで良かったよ。でも私は悪い事しちゃったな」
「あまり、アカリを責めないでやってくれると助かる。アルビーの事を説明してなかったのもあるんだが、1ヵ月程、竜人の国に捕らわれていてな、危うく死ぬとこだったんだ。だから、アルビーの姿が竜人に見えてしまったんだと思う」
少し困った顔でルーファスがアルビーを見ると、アルビーは小さく鼻でため息を拭く。
「私は竜人じゃないけど、よく間違えられるからね。うん。仕方がないよ」
そう言ってアルビーは自分の鱗にまとわれた姿を見る。
白金の鱗に覆われルーファスの様な金の目をしているドラゴン。
それがアルビーの姿。
3メートルほどの小さなドラゴンなのだが、人よりかは、はるかに大きい。
「でも、仲良くしてもらえたらいいなぁ。私はルーファスの番に嫌われたくないな」
首をゆらゆらさせながらアルビーは目をパチリと閉じてうっそりとしている。
「多分、アカリに説明すればわかってもらえるとは思うんだが、竜人の国から、つい1週間前ここへ戻ってきたばかりで、まだ精神的に安定していないんだ。悪いな」
ルーファスが少し申し訳なさそうに眉を下げると、アルビーは小さく笑う。
「いいよ。大変な目にあった時は時間がかかるものだしね」
「呼び出しておいて悪いな。お前にも言っておくべきだったよ。人型で来いとな」
ルーファスの言葉にアルビーは半目で胡乱な視線を向ける。
「私は人型は苦手なんだけどね。まぁルーファスの番が怖がらないでくれるなら少しの間なら我慢するよ」
「悪いな。実はアカリの腕に傷が残ってしまって、アルビーなら治せると呼び出したんだが、こんなに早く来るとは思わなかったよ」
「それくらいならお安い御用だよ。ルーファスが番を得たと聞いて早く会いに来たかったんだよ」
アルビーは口元を緩めて目を細める。
朱里とは別の意味でこの旧友も寂しがりやな所があったのをルーファスは思いだす。
ルーファスの母方の叔父がドラゴンの卵を拾ってきて、小さなルーファスに冬の間、卵を温めさせ、孵化して生まれたのがアルビーだ。
山奥のひっそりとした場所のせいかアルビーの友達はルーファス以外おらず、子供の頃は泣きながらルーファスの後をついて歩いていた。
ルーファスが【刻狼亭】に帰る時は大泣きして3日間泣き通しだった。
たまに様子を見に行っていたが、【刻狼亭】を引き継いでからはすっかりご無沙汰だった。
アルビーは人型をとると首をコキコキ鳴らしながら、ルーファスに笑いかける。
ルーファスは眼鏡を押さえながら、小さく項垂れる。
「やはり人型だとその姿なのか?」
「うん。だって私は人が混じっているわけではないから『人型』はあくまで見様見真似の魔法だからね。一番知ってる人にしか似せれない」
そう言ったアルビーの姿はルーファスをそのまま白金の髪色に変えただけの姿をしていた。
仕事の書類をテーブルに山積みにしながらルーファスは算盤を弾いて黒い眼鏡を指で押し上げる。
目の前にはルーファスの仕事を眺めながら首をゆらゆらと落ち着かない旧友がソワソワとルーファスの仕事が終わるのを待っている。
「今、立て込んでいてな。すまないな」
「それは構わないよ。私はルーファスに久々に会えて嬉しいよ」
「ああ、オレも久々にお前に会えて嬉しいよ。アルビー」
アルビーは名前を呼ばれて嬉しそうに頬を緩ませる。
アルビーの嬉しそうな表情にルーファスも頬を緩ませる。
「お前は変わりなさそうだな」
「うん。私は変わらないよ。ルーファスは少し尖ったね」
「尖る?なんだそれは。お前は相変わらず、表現が難解だな」
クスリと笑ってルーファスはアルビーにお茶を差し出す。
「ありがとう。ルーファスは前は全体的に周りを見ていたけど、今は極端な視線で全体を監視してる感じだよね。常に野生に居るみたいな?」
ズズズっと音を立ててお茶を飲みながらアルビーは長い尻尾をくねらせる。
ルーファスもお茶に口を付けながら、ふぅと、息をつく。
「そうだな。前は自分と従業員だけの世界を守っていたが、今は番がオレの世界の中心で守るべき者の中心だからな、守る物が増えるとゆるく周りだけ見ているわけにはいかないからな」
アルビーは目を細めながらルーファスを見る。
「ルーファスは番の事、大事なんだね。幸せそうで良かったよ。でも私は悪い事しちゃったな」
「あまり、アカリを責めないでやってくれると助かる。アルビーの事を説明してなかったのもあるんだが、1ヵ月程、竜人の国に捕らわれていてな、危うく死ぬとこだったんだ。だから、アルビーの姿が竜人に見えてしまったんだと思う」
少し困った顔でルーファスがアルビーを見ると、アルビーは小さく鼻でため息を拭く。
「私は竜人じゃないけど、よく間違えられるからね。うん。仕方がないよ」
そう言ってアルビーは自分の鱗にまとわれた姿を見る。
白金の鱗に覆われルーファスの様な金の目をしているドラゴン。
それがアルビーの姿。
3メートルほどの小さなドラゴンなのだが、人よりかは、はるかに大きい。
「でも、仲良くしてもらえたらいいなぁ。私はルーファスの番に嫌われたくないな」
首をゆらゆらさせながらアルビーは目をパチリと閉じてうっそりとしている。
「多分、アカリに説明すればわかってもらえるとは思うんだが、竜人の国から、つい1週間前ここへ戻ってきたばかりで、まだ精神的に安定していないんだ。悪いな」
ルーファスが少し申し訳なさそうに眉を下げると、アルビーは小さく笑う。
「いいよ。大変な目にあった時は時間がかかるものだしね」
「呼び出しておいて悪いな。お前にも言っておくべきだったよ。人型で来いとな」
ルーファスの言葉にアルビーは半目で胡乱な視線を向ける。
「私は人型は苦手なんだけどね。まぁルーファスの番が怖がらないでくれるなら少しの間なら我慢するよ」
「悪いな。実はアカリの腕に傷が残ってしまって、アルビーなら治せると呼び出したんだが、こんなに早く来るとは思わなかったよ」
「それくらいならお安い御用だよ。ルーファスが番を得たと聞いて早く会いに来たかったんだよ」
アルビーは口元を緩めて目を細める。
朱里とは別の意味でこの旧友も寂しがりやな所があったのをルーファスは思いだす。
ルーファスの母方の叔父がドラゴンの卵を拾ってきて、小さなルーファスに冬の間、卵を温めさせ、孵化して生まれたのがアルビーだ。
山奥のひっそりとした場所のせいかアルビーの友達はルーファス以外おらず、子供の頃は泣きながらルーファスの後をついて歩いていた。
ルーファスが【刻狼亭】に帰る時は大泣きして3日間泣き通しだった。
たまに様子を見に行っていたが、【刻狼亭】を引き継いでからはすっかりご無沙汰だった。
アルビーは人型をとると首をコキコキ鳴らしながら、ルーファスに笑いかける。
ルーファスは眼鏡を押さえながら、小さく項垂れる。
「やはり人型だとその姿なのか?」
「うん。だって私は人が混じっているわけではないから『人型』はあくまで見様見真似の魔法だからね。一番知ってる人にしか似せれない」
そう言ったアルビーの姿はルーファスをそのまま白金の髪色に変えただけの姿をしていた。
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