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小梅の恋
憤怒の小梅
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せつと佐平が、相談役の乕松に話を持っていった方がいいのではないかと話をしていたところへ、小梅が夕飯の買い物を終えて帰ってきていた。
「小松のおばちゃん……珍しいね。うちの父ちゃんになんか用なんですか? それとも小松が何かやらかしたの?」
「こら! 小梅! 口の利き方に気を付けろってんだ! せつさん、すまないね。口の悪い娘で」
小松のことが絡むとへそを曲げた物言いになってしまう小梅に、佐平も少しばかり難儀な性格だと思いつつも叱りつける。
人間、合う合わないはあれど、小梅と小松は子供の時分から一緒に育ったのに、普通は幼馴染として仲良くなるものだと思うが、そうはいかなかった二人なものだから、余計に頭を悩ませてしまう。
「いいんですよぉ。小梅ちゃん、今回は、うちの小松が千吉さんを借りちまって悪かったねぇ」
「……どういうことです? 千吉さんの女、小松なんですか!?」
せつが自分の口元に手を当て佐平を見れば、佐平もまた「あっちゃー」と声をあげていた。
目を吊り上げて、怒りで身を震わせる小梅は、買ったばかりの浅蜊が入った竹籠を足元に落としてしまう。
「おい。小梅、人の話は聞くもんだ。ちゃんと理由があってだな……」
「父ちゃんは黙ってて! 何さ、皆であたしを莫迦にして……! 絶対に、小松も千吉さんも許さないんだから……!!」
「おい! 小梅!」
ここで泣いて騒ぐぐらいなら小梅も可愛いものだが、そうはいかないのが小梅だ。
憤怒の形相で家を飛び出して行ってしまった。
すぐさま佐平も小梅を追って走り出す。
「すまねぇ! せつさん、ちぃとばっかしここを任せた!」
「え! ああ、はいよ! 余計な事言ってごめんよー!」
飛び出した小梅と佐平を見送り、残ったせつは床に散らばった浅蜊を竹籠に丁寧に戻して、床を懐に入れた布巾で拭き上げるのだった。
そして、勝手をするのは悪いかもしれないが、詫びついでに浅蜊の砂抜きでもしておこうと台所へと向かった。
「小松のおばちゃん……珍しいね。うちの父ちゃんになんか用なんですか? それとも小松が何かやらかしたの?」
「こら! 小梅! 口の利き方に気を付けろってんだ! せつさん、すまないね。口の悪い娘で」
小松のことが絡むとへそを曲げた物言いになってしまう小梅に、佐平も少しばかり難儀な性格だと思いつつも叱りつける。
人間、合う合わないはあれど、小梅と小松は子供の時分から一緒に育ったのに、普通は幼馴染として仲良くなるものだと思うが、そうはいかなかった二人なものだから、余計に頭を悩ませてしまう。
「いいんですよぉ。小梅ちゃん、今回は、うちの小松が千吉さんを借りちまって悪かったねぇ」
「……どういうことです? 千吉さんの女、小松なんですか!?」
せつが自分の口元に手を当て佐平を見れば、佐平もまた「あっちゃー」と声をあげていた。
目を吊り上げて、怒りで身を震わせる小梅は、買ったばかりの浅蜊が入った竹籠を足元に落としてしまう。
「おい。小梅、人の話は聞くもんだ。ちゃんと理由があってだな……」
「父ちゃんは黙ってて! 何さ、皆であたしを莫迦にして……! 絶対に、小松も千吉さんも許さないんだから……!!」
「おい! 小梅!」
ここで泣いて騒ぐぐらいなら小梅も可愛いものだが、そうはいかないのが小梅だ。
憤怒の形相で家を飛び出して行ってしまった。
すぐさま佐平も小梅を追って走り出す。
「すまねぇ! せつさん、ちぃとばっかしここを任せた!」
「え! ああ、はいよ! 余計な事言ってごめんよー!」
飛び出した小梅と佐平を見送り、残ったせつは床に散らばった浅蜊を竹籠に丁寧に戻して、床を懐に入れた布巾で拭き上げるのだった。
そして、勝手をするのは悪いかもしれないが、詫びついでに浅蜊の砂抜きでもしておこうと台所へと向かった。
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