悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

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二章 学園生活

犬猿の仲

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 馬車でのんびりとルカリオンと二人で実家に帰る気だった……とだけ、俺は言いたい。
 実家から衣服をすべて持ってきていたのもあって、カバンに数日分の服を詰め込み、屋敷の使用人たちにお菓子でも買って帰ろうと、手土産の焼き菓子を学園にあるお店で買い、弟のシグマにも小さなぬいぐるみを買った。

「坊ちゃん、荷物をお持ちします」
「馬車に直ぐ乗るから、大丈夫」
「そうですか」

 目の前に王宮から支給された馬車が停まり、扉が開くと中の様子を見たルカリオンが静かに手早く扉を閉めた。

「どうやら、馬車に手違いがあったようですね」

 うん、俺も手違いがあったと思いたい。
 中にラローシュが笑顔で座っていたなんて、きっと幻。見間違い。
 キィッと扉が開き、「早く乗って」と笑顔でラローシュが言い、ルカリオンと俺は眉間に手を置いた。
 
「二人共、私の顔を見て扉を閉めるなんて、酷いじゃないですか」
「いや、ラロがなんで馬車に……って、話だよ」
「我々に任せたのならば、あなたが出てくる必要は無いでしょう?」

 第一、王太子が護衛もつけずに馬車で移動するのもどうかと思う。
 ルカリオンの言う通り、俺たち二人に任せたというのに、何故一緒の馬車に? 
 
「フェルとルカリオンに渡しておく物があってね」
「なんだ、一緒に公爵家に行くのかと思っていたよ」
「あ、公爵家へは行くつもりだよ」

 来るのか……別に歓迎しないわけではないけど、ラローシュは国の重要人物だから何かあっては責任なんてとれない。
 ラローシュは俺の気持ちを知ってか知らずか、とても涼しい顔をしている。

「あなたはご自分の立場が分かっていますか? 少しは自重した方が良いのでは?」
「ふふっ、ルカリオンは優しいね。私を気にかけてくれるのですね」
「いいえ。わたしは、折角の坊ちゃんとの時間を、あなたに邪魔されたくないだけです」

 ルカリオーン、そうハッキリ自分の気持ちを明け透けにいうものじゃないからね? その人、王子様、偉い人! 俺とお前の首を絞首台に送るなんて平気で出来ちゃうからぁ!
 幼馴染特権で多少の無礼は許されているけど、笑顔で火花を散らすの止めてー!

「フェルは、私と一緒でも構わないですよね?」
「へっ!?」
「坊ちゃん、こういう事は、ハッキリ言ってあげた方がいいですよ」
「ふえっ!?」

 俺を巻き込むのは止めて欲しい。本当に、俺は悪い事はとりあえずしていないけれど、悪役ポジションだから、いつ首が胴体と離れてもおかしくないキャラクター。俺に安寧を! そして安全な休息を!
 ジリジリと二人で俺に近付かないで欲しい。うん。やめて。
 馬車の中で可哀想な俺の悲鳴が響き、この二人の犬猿の仲につける薬は無いと思った。

 
 公爵家に着くと、ラローシュは俺の親指とルカリオンの小指に紫色のアメジストのような宝石の付いた指輪を付けてくれた。
 ラローシュも同じ指輪をしていて、魔法反射の指輪なのだという。

「こんな高そうな物いいのか?」
「うん。フェルの誕生日にあげたかったんだけど、倒れていたようだしね」
「わたしまで頂いて良かったのですか?」
「ルカリオンにも、色々世話になっているからね」

 ちなみにこの指輪は、全ての魔法が跳ね返される……という便利なものではなく、どちらかと言えばデバフ、つまりは能力を下げるような魔法を無効化する指輪で、ゲームでは最終ダンジョンの宝箱にあるか、URカードのアクセサリーで出るかというレア物。
 流石、王族。ただの幼馴染に高級品をくれるものだ。
 このアクセサリーをキャラ全員分揃えたくて、ガチャを回した事がとても懐かしい……
 二葉ちゃんはアクセサリーよりキャラカードを寄越せー! と、大騒ぎしていたけど。

「ラロ、ありがとう。凄く嬉しい」

 実物を手に入れられるとは思っていなかったから、嬉しくて素直にお礼を言っておいた。
 しかし、この指輪が存在するという事は、他にもUR武器や防具があるのなら手に入れて見たくなる。

「……ッ!」
「坊ちゃんッ!」

 顔を真っ赤にしたラローシュに、何故か尻尾の毛を逆立てて怒るルカリオンという訳の分からない状況に、頭の中は「???」状態だ。
 
「えーと、どうかした……?」
「フェル、もう一度同じ表情をしてみて」
「ダメです! 坊ちゃんのこうした顔は、わたしだけの特権なんです!」

 なんだかなぁ……こいつら本当に、仲が悪い。
 ラローシュとルカリオンがギャアギャア騒ぐのを尻目に、俺は公爵家の扉を開ける。
 いつもならば、執事長かメイド長が出てくるはずだが、それも無い。

「なんか……荒れてないか?」
「そうですね。掃除もしていないようですし、花も枯れていますね」

 玄関ホールは屋敷の顔であり、公爵夫人の母親が唯一と言っていいほど口出しをしていた場所である。
 それなのに、飾られた花は枯れ、装飾品もホコリを被っていること自体、おかしい事だ。
 一抹の不安を抱え、俺たちは屋敷の中へと進む。
 ルカリオンが先頭を歩き、ラローシュは真ん中で最後が俺。
 なんだかんだ言っても、ラローシュに何かあればゲームオーバーまっしぐらだろうからね。 
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