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2章
女騎士の使者
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一月の終わりに差し掛かった時、ヴインダム国王の使者として赤い髪の女騎士がヴァンハロー領へとやってきた。
まだ、雪のブロックで道を塞いでいた為に、女騎士は入るのに苦労した様で獣騎は領の外に居るとかで、屋敷の皆でブロックをどかす羽目になった。
「思ったより早めに呼び出しが来たようだ」
「そうだね……王様にイクスが虐められないと良いんだけど……」
「虐められはしないが、今回は他国の王達に色々言われて機嫌は悪いだろうな」
軍服に着替えてイクシオンが支度をして、私もお屋敷のメイド服に着替える。
前髪もおでこが見えない様に櫛で梳かして整え、イクシオンの手袋を手に取って手渡す。
「また離れちゃうね」
「暫くの辛抱だ。直ぐに帰ってくるよ」
「うん……気を付けてね?」
「リトも、風邪をひかない様に温かく過ごして、無茶をしないようにな」
抱きしめられてキスをしていると、部屋のドアがノックされて使者の女騎士がドアを開けた。
ビックリしてイクシオンに回した手を離せずにいると、女騎士は眉間にしわを寄せて口を開く前に、イクシオンが口を開く。
「入室の許可を出した覚えはないが? そんな事も教わらずに、よく騎士になれたものだ」
「なっ……! いえ、失礼しました。私は、王太子付きの騎士に任命されたばかりの外海育ちですので、ご無礼はお許しください」
確かに「どうぞ」と入っていいとは返事をしていなかったかも?
赤い髪に茶色の丸い耳に長い猫みたいな尻尾……どこかで見た様な顔だと思ったのは気のせいだろうか?
イクシオンから腕を離したものの、イクシオンが私を抱きしめたまま離してくれない。
まぁ、見られた時点で誤魔化しようは無いけど……
「エルファーレン付きの騎士が、何故、国王の使者等しているんだ?」
「それは、私が志願したからです。本来、王であるべきだと言われる人を、自分の目で確かめたかったもので」
「オレは王になどなる気は無い。エルファーレン付きの騎士なら、彼を支えてやる事だけ考えていろ」
「ええ、そのつもりです。私は王太子を王にします。けれど、王族は貴方しかいない。獅子族として、国王や軍部の不正は一掃し、もし、王太子すらも今までの獅子族の様になれば、私が粛清する。そう王太子には約束しました」
この女騎士さんも国王の身内なんだ……
ああ、だからどことなく王太子やガリュウさんになんとなく雰囲気みたいなのが似てるのかな?
「王族殺しは極刑だぞ?」
「いいえ、そうはなりません。獅子族はヴインダム王家との婚姻は行われていないことが、判明致しましたので王族を名乗る偽証罪にも問えるのです。王太子が王として相応しくない場合は、貴方に王家をお返ししようと思っています」
なんだか、この女騎士の言い方に私はカチンときてしまった。
王太子といい、獅子族の人はどうして……人を馬鹿にすれば気が済むんだろう……
「なんですかそれ! 散々、今までイクスを殺そうとしておいて! 王太子が王の器じゃ無ければ、王座を返すって……ッ! イクスを馬鹿にしないで! 結局自分達の尻拭いをイクスに押し付けようとしているだけじゃない! 初めから王家と関りが無いなら、直ぐに行動を起こして、王座を王も王太子も降りるべきでしょ!」
「リト、別にオレは王座に未練がある訳じゃない。だから、オレの為に怒ってくれただけで充分だから、そんなに噛みついて行かなくても大丈夫だ」
イクシオンに抱きしめられながら、フーッと興奮した猫の様に暴れる私の背中を撫でて、落ち着く様に静かな声で言い聞かせてくる。
確かに、私はイクシオンが王座を望まないのを知っているけど、それでも、こんな身勝手な事を言ってくる傲慢な一族は大っ嫌いである。
「悪いが、話は後で聞く。ここから出ていって貰おうか」
「ここ以外に、貴方に話をする場は無いと踏んでいます」
「はぁ……ここは寝室だ。他人に入られたくはない場所だ。意味は解るか?」
「……っ! 解りました。失礼致しました」
少し顔を赤らめた女騎士さんが出ていき、イクシオンが「なんだかな」と溜め息交じりの声を出す。
「イクス、私を抱きしめたままだと、色々不味いんじゃないの?」
「エイゾウ様たちが他国の王に、王族が召喚に必要だと言ってしまったからな。オレに妻が居なければ、他国の娘を嫁にと縁談が持ち込まれて、良い様に使われてしまうだけだから、妻を得た事は宣言しにいくつもりだよ」
「そう、なんだ……うん。じゃあ、メイド服着ない方が良かった?」
「いや、リトのメイド姿は可愛いから、メイド姿でも全然問題ないよ」
コスプレ好きなのかな? とか思ったけど、お屋敷のメイドさんは皆同じ服装だから、そう言う事じゃないだろうなぁ? と首を傾げると、キスが降り注いでくる。
「リト、帰ってきたら続きをしよう」
「うん。いっぱいしようね? ご主人様」
茶目っ気を出して、メイド服のスカートを摘まんで笑うと、「あ」と言った時には壁際に追い込まれて深いキスに、スカートをめくり上げられて手淫されてイカされた後に、イケナイご主人様に美味しく頂かれてしまった。
やっぱりコスプレプレイが好きなのかも?
まだ、雪のブロックで道を塞いでいた為に、女騎士は入るのに苦労した様で獣騎は領の外に居るとかで、屋敷の皆でブロックをどかす羽目になった。
「思ったより早めに呼び出しが来たようだ」
「そうだね……王様にイクスが虐められないと良いんだけど……」
「虐められはしないが、今回は他国の王達に色々言われて機嫌は悪いだろうな」
軍服に着替えてイクシオンが支度をして、私もお屋敷のメイド服に着替える。
前髪もおでこが見えない様に櫛で梳かして整え、イクシオンの手袋を手に取って手渡す。
「また離れちゃうね」
「暫くの辛抱だ。直ぐに帰ってくるよ」
「うん……気を付けてね?」
「リトも、風邪をひかない様に温かく過ごして、無茶をしないようにな」
抱きしめられてキスをしていると、部屋のドアがノックされて使者の女騎士がドアを開けた。
ビックリしてイクシオンに回した手を離せずにいると、女騎士は眉間にしわを寄せて口を開く前に、イクシオンが口を開く。
「入室の許可を出した覚えはないが? そんな事も教わらずに、よく騎士になれたものだ」
「なっ……! いえ、失礼しました。私は、王太子付きの騎士に任命されたばかりの外海育ちですので、ご無礼はお許しください」
確かに「どうぞ」と入っていいとは返事をしていなかったかも?
赤い髪に茶色の丸い耳に長い猫みたいな尻尾……どこかで見た様な顔だと思ったのは気のせいだろうか?
イクシオンから腕を離したものの、イクシオンが私を抱きしめたまま離してくれない。
まぁ、見られた時点で誤魔化しようは無いけど……
「エルファーレン付きの騎士が、何故、国王の使者等しているんだ?」
「それは、私が志願したからです。本来、王であるべきだと言われる人を、自分の目で確かめたかったもので」
「オレは王になどなる気は無い。エルファーレン付きの騎士なら、彼を支えてやる事だけ考えていろ」
「ええ、そのつもりです。私は王太子を王にします。けれど、王族は貴方しかいない。獅子族として、国王や軍部の不正は一掃し、もし、王太子すらも今までの獅子族の様になれば、私が粛清する。そう王太子には約束しました」
この女騎士さんも国王の身内なんだ……
ああ、だからどことなく王太子やガリュウさんになんとなく雰囲気みたいなのが似てるのかな?
「王族殺しは極刑だぞ?」
「いいえ、そうはなりません。獅子族はヴインダム王家との婚姻は行われていないことが、判明致しましたので王族を名乗る偽証罪にも問えるのです。王太子が王として相応しくない場合は、貴方に王家をお返ししようと思っています」
なんだか、この女騎士の言い方に私はカチンときてしまった。
王太子といい、獅子族の人はどうして……人を馬鹿にすれば気が済むんだろう……
「なんですかそれ! 散々、今までイクスを殺そうとしておいて! 王太子が王の器じゃ無ければ、王座を返すって……ッ! イクスを馬鹿にしないで! 結局自分達の尻拭いをイクスに押し付けようとしているだけじゃない! 初めから王家と関りが無いなら、直ぐに行動を起こして、王座を王も王太子も降りるべきでしょ!」
「リト、別にオレは王座に未練がある訳じゃない。だから、オレの為に怒ってくれただけで充分だから、そんなに噛みついて行かなくても大丈夫だ」
イクシオンに抱きしめられながら、フーッと興奮した猫の様に暴れる私の背中を撫でて、落ち着く様に静かな声で言い聞かせてくる。
確かに、私はイクシオンが王座を望まないのを知っているけど、それでも、こんな身勝手な事を言ってくる傲慢な一族は大っ嫌いである。
「悪いが、話は後で聞く。ここから出ていって貰おうか」
「ここ以外に、貴方に話をする場は無いと踏んでいます」
「はぁ……ここは寝室だ。他人に入られたくはない場所だ。意味は解るか?」
「……っ! 解りました。失礼致しました」
少し顔を赤らめた女騎士さんが出ていき、イクシオンが「なんだかな」と溜め息交じりの声を出す。
「イクス、私を抱きしめたままだと、色々不味いんじゃないの?」
「エイゾウ様たちが他国の王に、王族が召喚に必要だと言ってしまったからな。オレに妻が居なければ、他国の娘を嫁にと縁談が持ち込まれて、良い様に使われてしまうだけだから、妻を得た事は宣言しにいくつもりだよ」
「そう、なんだ……うん。じゃあ、メイド服着ない方が良かった?」
「いや、リトのメイド姿は可愛いから、メイド姿でも全然問題ないよ」
コスプレ好きなのかな? とか思ったけど、お屋敷のメイドさんは皆同じ服装だから、そう言う事じゃないだろうなぁ? と首を傾げると、キスが降り注いでくる。
「リト、帰ってきたら続きをしよう」
「うん。いっぱいしようね? ご主人様」
茶目っ気を出して、メイド服のスカートを摘まんで笑うと、「あ」と言った時には壁際に追い込まれて深いキスに、スカートをめくり上げられて手淫されてイカされた後に、イケナイご主人様に美味しく頂かれてしまった。
やっぱりコスプレプレイが好きなのかも?
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