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2章
赤ちゃんが出来たよ
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お屋敷に私の黄色い声が響いたのは夕方の事である。
「キャーッ! イクス~ッ! 赤ちゃんが出来たよーっ!!」
「ああ、良かったな」
「すっごく嬉しいッ! 赤ちゃんいつぐらいで生まれるかな?」
「一、二ヶ月後くらいじゃないか?」
結構早い……これは新しい小屋を作る暇はあるだろうか?
安心して出産出来る為のスペースを確保しなきゃいけない。
これは、急務である!!
え? 私とイクシオンの子供? いえいえ、違いますよー。
いくら何でも私だって、人の子が一、二ヶ月で生まれるなんて事は思っていないですからね?
ふっふっふっ、我が家の姫ちゃんとボン助に赤ちゃんが出来たのである!
朝の新年会でお母さんが具合が悪くなって、夕方にお医者さんに来てもらったら、案の定、お母さんは飲み過ぎ!
「流石、公爵家よねぇ~。美味しいお酒がいっぱいで飲み過ぎちゃったぁ」と、お母さんの言葉に私はお祖父ちゃんに引き続き、うちの家族がすみません! 状態になっていたのですよ。
それで、お医者さんが帰りに、姫ちゃんとボン助とデンちゃんの健康診断もついでにしてくれてね、そこで姫ちゃんのお腹に赤ちゃんがいることが判明したわけです。
今年は本当にお目出度い事から始まった感じです。
しかし、姫ちゃんはついこの間まで子犬だと思っていたのに、成長が早いよねぇ……
「イクス、私ちょっと賢者の森に行って、木の板を取ってくる!」
「リト、嬉しいのは分かるが、今日は止めておこうか? それに、ヒメ達用の部屋は用意してあるのだから、今更作る必要はないと思うが……」
「それは駄目。母犬は出産時に周りに犬がいると、赤ちゃんを噛み殺したりする場合もあるから、ちゃんと隔離してあげないといけないの」
「そういうものなのか?」
「うん。なるべく私達も出産時は騒いだり、ウロチョロするのは駄目だから、静観して危ない時だけ手を出す感じかな?」
まぁ、いざとなれば、デンちゃんとボン助を部屋から追い出すか、お父さん達の家に姫ちゃんを預けるかなんだけどね。元々、お父さんの犬だしね。
そう、お父さんの犬だから、今現在、お父さんは姫ちゃんを心配してオロオロ中である。
無表情のお父さんの眉が下に下がって珍しい表情をしている。
「日都留さん、姫ちゃんじゃなくて、私を心配しないの?」
「いや、君は飲み過ぎだからな。でも姫は妊娠だぞ?」
「それなら私も、二十年前に妊婦だったわ」
おいおい。お母さん、犬相手に妬きもちはやめよう?
そして、お父さんはボン助を睨まない。すっかり、娘の敵を見る目だわ。お父さん……
「ボン助、お父さんが怖いから、姫ちゃんからは離れようねー」
「クゥーン……」
シュンッと項垂れるボン助の可哀想なことよ……でも、ボン助はパパになるんだからしっかりするんだよ?
よしよしと、ボン助の頭を撫でて、「お姉ちゃんは、ボン助の味方だからねー」と、言い聞かせておく。
デンちゃんは我関せずで、ウィリアムさんの居る厨房で料理のおこぼれを貰うのに必死だったりする。
厨房には入っちゃ駄目だよ……とは言ってあるんだけど、私が毎日ブラッシングしたりするから、毛が飛び散らないので、割りと大目に見て貰えている。
これも私の努力の賜物では無いだろうか?
「李都、姫は連れて帰る」
「そうなの? ボン助寂しくなるねー」
「クゥーン」
「ボン助、お前はここで暮らすんだぞ」
「お父さん、ボン助を苛めないで。子犬が産まれそうになったら言ってね? 私も多少はお手伝い出来るから」
「ああ。絵李果、先に姫を連れて帰っている」
「えーっ、もう、日都留さんったら、私も一緒に帰りますー」
お母さんがむぅっと口を尖らせて、アーデルカさんにお礼を言い、コートを着込むと「じゃあ、シオン君、李都、またねー」と、千鳥足で元気に帰っていった。
まったく、明日辺りに二日酔いになって無きゃいいけど。
ボン助は玄関を見つめて、益々しょんぼりしていたけど、お祖父ちゃんが絡んできて、お祖父ちゃんの膝の上で遊んでもらって少し元気になったかな?
「お祖父ちゃん、ぎっくり腰は大丈夫?」
「まだ痛いわい。当分はこの屋敷で厄介になるぞ」
「いいですよ。治るまでゆっくりしていってください」
「イクス、お祖父ちゃんがごめんね。お世話はなるべく私がするから」
「李都、ぎっくり腰に世話なんて要らん。安静第一だからの」
大人しくしていない人が何か言ってるし、安静って言葉が一番似合わない人かもしれない。
でもまぁ、アンゾロさんがお祖父ちゃんの良い話相手にもなってくれているみたいで、老人同士気が合うのか、お酒を楽しみながら暖炉の前で話をしていた。
「リト、一緒に風呂でも入るか?」
「あ、うん。お部屋のお風呂と、大浴場どっちに行く?」
「部屋の方で」
「オッケー。あ、エッチは朝したから、駄目ですからね?」
イクシオンがニッコリ笑顔で、少しばかり怪しいのはなぜかなー? 朝したからね? 朝もやって夜も……なんてことになったら、身が持たない。
一緒に部屋に戻って、お風呂に入ったら……普通に体を洗いっこをして、多少の 悪戯はあったけど、無事にお風呂から出て、着替えをイクスに渡された。
透けてる下着に笑顔が凍り付いたのは、仕方がないと思う。
「キャーッ! イクス~ッ! 赤ちゃんが出来たよーっ!!」
「ああ、良かったな」
「すっごく嬉しいッ! 赤ちゃんいつぐらいで生まれるかな?」
「一、二ヶ月後くらいじゃないか?」
結構早い……これは新しい小屋を作る暇はあるだろうか?
安心して出産出来る為のスペースを確保しなきゃいけない。
これは、急務である!!
え? 私とイクシオンの子供? いえいえ、違いますよー。
いくら何でも私だって、人の子が一、二ヶ月で生まれるなんて事は思っていないですからね?
ふっふっふっ、我が家の姫ちゃんとボン助に赤ちゃんが出来たのである!
朝の新年会でお母さんが具合が悪くなって、夕方にお医者さんに来てもらったら、案の定、お母さんは飲み過ぎ!
「流石、公爵家よねぇ~。美味しいお酒がいっぱいで飲み過ぎちゃったぁ」と、お母さんの言葉に私はお祖父ちゃんに引き続き、うちの家族がすみません! 状態になっていたのですよ。
それで、お医者さんが帰りに、姫ちゃんとボン助とデンちゃんの健康診断もついでにしてくれてね、そこで姫ちゃんのお腹に赤ちゃんがいることが判明したわけです。
今年は本当にお目出度い事から始まった感じです。
しかし、姫ちゃんはついこの間まで子犬だと思っていたのに、成長が早いよねぇ……
「イクス、私ちょっと賢者の森に行って、木の板を取ってくる!」
「リト、嬉しいのは分かるが、今日は止めておこうか? それに、ヒメ達用の部屋は用意してあるのだから、今更作る必要はないと思うが……」
「それは駄目。母犬は出産時に周りに犬がいると、赤ちゃんを噛み殺したりする場合もあるから、ちゃんと隔離してあげないといけないの」
「そういうものなのか?」
「うん。なるべく私達も出産時は騒いだり、ウロチョロするのは駄目だから、静観して危ない時だけ手を出す感じかな?」
まぁ、いざとなれば、デンちゃんとボン助を部屋から追い出すか、お父さん達の家に姫ちゃんを預けるかなんだけどね。元々、お父さんの犬だしね。
そう、お父さんの犬だから、今現在、お父さんは姫ちゃんを心配してオロオロ中である。
無表情のお父さんの眉が下に下がって珍しい表情をしている。
「日都留さん、姫ちゃんじゃなくて、私を心配しないの?」
「いや、君は飲み過ぎだからな。でも姫は妊娠だぞ?」
「それなら私も、二十年前に妊婦だったわ」
おいおい。お母さん、犬相手に妬きもちはやめよう?
そして、お父さんはボン助を睨まない。すっかり、娘の敵を見る目だわ。お父さん……
「ボン助、お父さんが怖いから、姫ちゃんからは離れようねー」
「クゥーン……」
シュンッと項垂れるボン助の可哀想なことよ……でも、ボン助はパパになるんだからしっかりするんだよ?
よしよしと、ボン助の頭を撫でて、「お姉ちゃんは、ボン助の味方だからねー」と、言い聞かせておく。
デンちゃんは我関せずで、ウィリアムさんの居る厨房で料理のおこぼれを貰うのに必死だったりする。
厨房には入っちゃ駄目だよ……とは言ってあるんだけど、私が毎日ブラッシングしたりするから、毛が飛び散らないので、割りと大目に見て貰えている。
これも私の努力の賜物では無いだろうか?
「李都、姫は連れて帰る」
「そうなの? ボン助寂しくなるねー」
「クゥーン」
「ボン助、お前はここで暮らすんだぞ」
「お父さん、ボン助を苛めないで。子犬が産まれそうになったら言ってね? 私も多少はお手伝い出来るから」
「ああ。絵李果、先に姫を連れて帰っている」
「えーっ、もう、日都留さんったら、私も一緒に帰りますー」
お母さんがむぅっと口を尖らせて、アーデルカさんにお礼を言い、コートを着込むと「じゃあ、シオン君、李都、またねー」と、千鳥足で元気に帰っていった。
まったく、明日辺りに二日酔いになって無きゃいいけど。
ボン助は玄関を見つめて、益々しょんぼりしていたけど、お祖父ちゃんが絡んできて、お祖父ちゃんの膝の上で遊んでもらって少し元気になったかな?
「お祖父ちゃん、ぎっくり腰は大丈夫?」
「まだ痛いわい。当分はこの屋敷で厄介になるぞ」
「いいですよ。治るまでゆっくりしていってください」
「イクス、お祖父ちゃんがごめんね。お世話はなるべく私がするから」
「李都、ぎっくり腰に世話なんて要らん。安静第一だからの」
大人しくしていない人が何か言ってるし、安静って言葉が一番似合わない人かもしれない。
でもまぁ、アンゾロさんがお祖父ちゃんの良い話相手にもなってくれているみたいで、老人同士気が合うのか、お酒を楽しみながら暖炉の前で話をしていた。
「リト、一緒に風呂でも入るか?」
「あ、うん。お部屋のお風呂と、大浴場どっちに行く?」
「部屋の方で」
「オッケー。あ、エッチは朝したから、駄目ですからね?」
イクシオンがニッコリ笑顔で、少しばかり怪しいのはなぜかなー? 朝したからね? 朝もやって夜も……なんてことになったら、身が持たない。
一緒に部屋に戻って、お風呂に入ったら……普通に体を洗いっこをして、多少の 悪戯はあったけど、無事にお風呂から出て、着替えをイクスに渡された。
透けてる下着に笑顔が凍り付いたのは、仕方がないと思う。
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