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2章
新年を一緒に
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「今年も皆、宜しく頼む。新年の祝いに乾杯」
イクシオンが清酒のグラスを手に挨拶をして、集まったお屋敷の人達がそれぞれ持っているグラスに口を付ける。
私は未成年なので舌でペロッと舐めるだけ。一応、十八歳以上は成人という事で飲酒は解禁されているんだけど、お酒を美味しいと思える舌がまだ私には備わってない。
ワインとか酸っぱい苦いッ! って、舌を出すぐらいには、お子様舌をしているんだよね。
悲しいけど、仕方がない。大人の味は大人になってからだね。
まだ十九歳だし、ゆっくり大人の味を解っていけば良いかな?
「リト、飲み切れないなら飲もうか?」
「うん。私はまだジュースで良いかな?」
イクシオンに清酒のグラスを渡して、ブドウのジュースを私は手に取る。
お子様にはこちらがお似合いなのだ。
ワインと一緒にジュースも作ってくれている農園があって、そこからの貰い物だったりする。
甘くてスッキリ、ジュースは美味しい。
「それにしても、イクスはどうして長期遠征中に帰ってきたの? 部下の人達や、まだお仕事が残っているんでしょう?」
「それが、他国の使者から『王族は直ぐに戦闘から離脱して、国へ戻る様に』と言われてしまってな……どうやらエイゾウ様と義父上が、王族の血を絶やせば、他の国の王族にも被害が出るという様な事を言ったらしい」
お祖父ちゃんとお父さん、何を言ったのー!?
イクシオンが私のおでこにキスをして「とりあえずは、王命に近い帰還命令だったから、これで当分はリトと一緒にいられる」と嬉しそうに目を細める。
新年早々、とても眼福な微笑みをありがとうございますッ!
うちの旦那様がイケメン狼で困っちゃう~ッ!!
「シオン、今回は討伐に負けたが、次は負けんぞ!」
「ええ。エイゾウ様が腰を痛めていなかったら、私などの若輩者は足元にも及びませんから」
いきなり絡んできたお祖父ちゃんに、大人の対応のイクシオンである。お祖父ちゃんは少し恥ずかしい。これで『賢者』とか言うのだから、詐欺だよねぇ。
お祖父ちゃんが私のブドウジュースを、パッと奪って飲むと、顔を歪める。
「カーッ、なんだ李都、ジュースか……ワインかと思ったのに」
「お祖父ちゃん、お行儀悪いよ? もう、私は未成年だからジュースで良いの」
イクシオンがテーブルの上にあったシャンパンの瓶を開けて、お祖父ちゃんのグラスに注ぐ。
流石過ぎる……大人だ。お祖父ちゃんは上機嫌でシャンパンを一気に飲んで、また注いでもらっていた。
ううっ、うちのお祖父ちゃんがすみませんッ!!
「そういえば、イクスの方の大型魔獣からは何か出た?」
「残念ながら、今回は何もでなかったよ」
「そうなんだ」
やっぱり、賢者の森で倒した方が武器とかは出やすいみたいだなぁ。
うん。今年は私も頑張って倒そう。
イクシオンの横にピタッと張り付いて、ニマニマしているとイクシオンが小皿に料理を盛って「はい。あーん」と、鴨肉のパラストラミを口に放り込まれる。
ん~っ、コショウが口に広がる~っ、これはお酒のおつまみ用で、ウィリアムさんにお母さんが教えたレシピです。
でも、お母さんの作る物と違って、料理のプロだわー。
お肉の弾力とか絶妙で美味しい。
「イクスも、はい、あーん」
「んっ、美味い」
こんな新年が迎えられるとは思っていなかったけど、正装のイクシオンは見れるし、幸せ~っ!
今年は良いことがありそうだ。
「イクスはいつぐらいまでこうして一緒にいられそうなの?」
「一応、今は外海から帰国途中となっているから、三週間はここに居られるな。それに、雪でまだ王都までの道は確保出来ないだろうから、約一ヶ月はここに居ることになると思う」
「王都には行かないといけないの?」
「一応、他国から王命として戻れと言われたからな。兄から、王都へ来るように呼びつけが来るだろうな」
こんなに寒いし、雪に閉ざされているから王都からの使者も来れないとは思うけど、王様はそういうの関係なく呼び出しとかしてくるんだろうなぁ。
使者の人が雪で埋もれて、立ち往生しなきゃいいんだけど。
「一ヶ月近くは一緒にいられるね」
「ああ。今日からリトと一緒にいられるのが、凄く嬉しい」
キャーッ、蕩ける様な笑顔で嬉しいことをッ!!
私もイクシオンと一緒に過ごせるのが嬉しいから、ここは抱きついておこう。
ふっふっふっ、イクシオンをいっぱい充電しておかねば。
「明日は、一緒に何をしようか?」
「ふふふっ、イクスと一緒なら、何をしても楽しいよ」
「嬉しいことを。とりあえず、今日は新年会を楽しもう」
「うん。あっ、ケーキ食べたい!」
「どのケーキが良い?」
「五種類あるから、半分こずつにしよ?」
「ああ、これからいくか」
お皿にケーキを取り分けてもらって、「あーん」で食べさせて貰いつつ、私も「あーん」でお返しをして、新年早々ラブラブ夫婦ではないですか!
それにね、一人っ子だったから、こうして誰かと分けて食べるの夢だったんだよね。
自慢できるラブラブっぷりに、お父さんとお母さんを見れば、お母さんが少し飲み過ぎたのか口元を押さえていて、お父さんが心配そうに背中を摩っていて、アーデルカさんがお母さんを客室に運んでいった。
お父さんは急いで医者を呼びに行くというし、お正月早々人様に迷惑はかけないように……とは思うんだけどね。
イクシオンが清酒のグラスを手に挨拶をして、集まったお屋敷の人達がそれぞれ持っているグラスに口を付ける。
私は未成年なので舌でペロッと舐めるだけ。一応、十八歳以上は成人という事で飲酒は解禁されているんだけど、お酒を美味しいと思える舌がまだ私には備わってない。
ワインとか酸っぱい苦いッ! って、舌を出すぐらいには、お子様舌をしているんだよね。
悲しいけど、仕方がない。大人の味は大人になってからだね。
まだ十九歳だし、ゆっくり大人の味を解っていけば良いかな?
「リト、飲み切れないなら飲もうか?」
「うん。私はまだジュースで良いかな?」
イクシオンに清酒のグラスを渡して、ブドウのジュースを私は手に取る。
お子様にはこちらがお似合いなのだ。
ワインと一緒にジュースも作ってくれている農園があって、そこからの貰い物だったりする。
甘くてスッキリ、ジュースは美味しい。
「それにしても、イクスはどうして長期遠征中に帰ってきたの? 部下の人達や、まだお仕事が残っているんでしょう?」
「それが、他国の使者から『王族は直ぐに戦闘から離脱して、国へ戻る様に』と言われてしまってな……どうやらエイゾウ様と義父上が、王族の血を絶やせば、他の国の王族にも被害が出るという様な事を言ったらしい」
お祖父ちゃんとお父さん、何を言ったのー!?
イクシオンが私のおでこにキスをして「とりあえずは、王命に近い帰還命令だったから、これで当分はリトと一緒にいられる」と嬉しそうに目を細める。
新年早々、とても眼福な微笑みをありがとうございますッ!
うちの旦那様がイケメン狼で困っちゃう~ッ!!
「シオン、今回は討伐に負けたが、次は負けんぞ!」
「ええ。エイゾウ様が腰を痛めていなかったら、私などの若輩者は足元にも及びませんから」
いきなり絡んできたお祖父ちゃんに、大人の対応のイクシオンである。お祖父ちゃんは少し恥ずかしい。これで『賢者』とか言うのだから、詐欺だよねぇ。
お祖父ちゃんが私のブドウジュースを、パッと奪って飲むと、顔を歪める。
「カーッ、なんだ李都、ジュースか……ワインかと思ったのに」
「お祖父ちゃん、お行儀悪いよ? もう、私は未成年だからジュースで良いの」
イクシオンがテーブルの上にあったシャンパンの瓶を開けて、お祖父ちゃんのグラスに注ぐ。
流石過ぎる……大人だ。お祖父ちゃんは上機嫌でシャンパンを一気に飲んで、また注いでもらっていた。
ううっ、うちのお祖父ちゃんがすみませんッ!!
「そういえば、イクスの方の大型魔獣からは何か出た?」
「残念ながら、今回は何もでなかったよ」
「そうなんだ」
やっぱり、賢者の森で倒した方が武器とかは出やすいみたいだなぁ。
うん。今年は私も頑張って倒そう。
イクシオンの横にピタッと張り付いて、ニマニマしているとイクシオンが小皿に料理を盛って「はい。あーん」と、鴨肉のパラストラミを口に放り込まれる。
ん~っ、コショウが口に広がる~っ、これはお酒のおつまみ用で、ウィリアムさんにお母さんが教えたレシピです。
でも、お母さんの作る物と違って、料理のプロだわー。
お肉の弾力とか絶妙で美味しい。
「イクスも、はい、あーん」
「んっ、美味い」
こんな新年が迎えられるとは思っていなかったけど、正装のイクシオンは見れるし、幸せ~っ!
今年は良いことがありそうだ。
「イクスはいつぐらいまでこうして一緒にいられそうなの?」
「一応、今は外海から帰国途中となっているから、三週間はここに居られるな。それに、雪でまだ王都までの道は確保出来ないだろうから、約一ヶ月はここに居ることになると思う」
「王都には行かないといけないの?」
「一応、他国から王命として戻れと言われたからな。兄から、王都へ来るように呼びつけが来るだろうな」
こんなに寒いし、雪に閉ざされているから王都からの使者も来れないとは思うけど、王様はそういうの関係なく呼び出しとかしてくるんだろうなぁ。
使者の人が雪で埋もれて、立ち往生しなきゃいいんだけど。
「一ヶ月近くは一緒にいられるね」
「ああ。今日からリトと一緒にいられるのが、凄く嬉しい」
キャーッ、蕩ける様な笑顔で嬉しいことをッ!!
私もイクシオンと一緒に過ごせるのが嬉しいから、ここは抱きついておこう。
ふっふっふっ、イクシオンをいっぱい充電しておかねば。
「明日は、一緒に何をしようか?」
「ふふふっ、イクスと一緒なら、何をしても楽しいよ」
「嬉しいことを。とりあえず、今日は新年会を楽しもう」
「うん。あっ、ケーキ食べたい!」
「どのケーキが良い?」
「五種類あるから、半分こずつにしよ?」
「ああ、これからいくか」
お皿にケーキを取り分けてもらって、「あーん」で食べさせて貰いつつ、私も「あーん」でお返しをして、新年早々ラブラブ夫婦ではないですか!
それにね、一人っ子だったから、こうして誰かと分けて食べるの夢だったんだよね。
自慢できるラブラブっぷりに、お父さんとお母さんを見れば、お母さんが少し飲み過ぎたのか口元を押さえていて、お父さんが心配そうに背中を摩っていて、アーデルカさんがお母さんを客室に運んでいった。
お父さんは急いで医者を呼びに行くというし、お正月早々人様に迷惑はかけないように……とは思うんだけどね。
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