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2章
夏対策の化粧水
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春の陽気があまりにも異様で、夏に採れる植物や果物もすこし時期がズレて早まっているのだとかで、私は森に行く許可を貰って、「行くなら、先にお仕事を片付けて貰います」というアンゾロさんの言葉にピィピィ泣きながら、何とか午前中にお仕事を片付け、メイドさんに少し大きめの細長い瓶を大量に購入してきてとお願いしてから、森へとやってきた。
「目的の物に関しては、不味かったから今まで見向きもしなかったけど、美容の為には必要なのよね」
十三歳の時に齧りついて「不味ッ!」とペッペッとしたけど、あれは生で齧ったから駄目だったんだよね。ちゃんと火を通せば食べられたと、元の世界で調べて「これ、食べられるんだー!?」と驚いたぐらいだけどね。
でも、今回は食べる為に取るわけでは無い。
まぁ、夏バテ予防にも良いというから、獣人さんは食べた方が良いかもしれないけど……
私は森の中で緑色の大きくて長い、ぶら下がっている植物の茎を、草刈り鎌で切り落して、網籠にどんどん入れていく、本当はここでガラス瓶が欲しいけど、仕方がない。
なるべく、茎を長めに切って、零れないようにするぐらいしか手立てはない。
水分を多く含んでいるから段々と重くなってきた……まぁ、五十本近く採ったしいいかな?
私は「リ・テラビーナ」と唱えて黄金の書を手にお屋敷の書斎へと帰りついた。
「ん? ああ、リトおかえり」
「あっ、イクスただいまー。お仕事中に騒がしくしてごめんね」
「報告書だけだから、別に大丈夫だ。それにしても大量だな?」
「えへへー。女性のお肌の為に、今回も頑張っちゃうよ」
「このヘチマが?」
そう。私の大量に採ってきた植物はヘチマなのである。
ヘチマは夏の暑さに焼けてしまうお肌を回復させる自然の化粧水! しかも美白効果もある! お肌もプルプル保湿効果あり、そしてまだ私には早いけど、アンチエイジングというお肌の老化の原因になる活性酸素を取り除く事が出来る女性の味方!
お肌の弱い人にも使えるし、煮て食べると、夏バテ防止、腰痛、リウマチ、咳止め等の効果もあるらしい。
あと、繊維が豊富なので整腸作用にもいいのだとか……まぁ、今回は食べないけどね。
「うん。ヘチマは女性の味方なんだよ? ふふーっ」
「また面白いことをしようとしているみたいだな? 自分から忙しくしていくのだから、困った子だ」
「はうっ、それは言っちゃ駄目……でも、皆が喜んでくれたらいいなっ!」
イクシオンにおでこにキスをされて、笑顔でお返しと頬にキスを返して仕事の邪魔にならないうちに書斎から出ていく。
メイドさん達が大広間に頼んでおいた瓶を並べてくれて、瓶に茎の部分を逆さにしてざっくり切って入れていく。
「リト様、これは?」
「化粧水を抽出中です」
「これが化粧水……になるんですか?」
「これを三、四日くらい放置すると、たっぷり摂れるんですよ」
「こんな物で作られるのですね?」
「ちゃんとろ過して、ハーブを少し入れて匂いも付けます。魔法のガラス瓶で保管すれば劣化もしないので、いつでも使えますからね。夏にお肌が赤くなってしまったり、日焼けしちゃったりするのを回復させてくれるんですよ? あと、美白効果と肌の老化防止もしちゃうので、夏になる前に作って、お肌の対策をしましょう!」
「リト様! お手伝いいたしますッ!」
「わたくし、化粧水を入れる魔法の小瓶を発注しておきますわ!」
「売り出すのですか?」
メイドさん達の眼がキラッと光り、私の手を握って「リト様、他には!?」と聞いてくるので、これは皆さんやる気満々の様だ……
まぁ、この世界はあんまりお化粧品って無くて、オリーブオイルに香料を入れて顔に伸ばして、白粉を付けて、口紅は赤い染料を動物油で溶いた様なのを貴族の人達は使っているぐらいで、庶民はノーメイクな人達が多いかな?
後は、木の実とかを目の周りに付けたり、口に塗ったりするくらい?
ここら辺も改革していこうと、私は調べてきているから、バッチリ任せよ! と、思っている。まぁ、今回は化粧水だけだけどね。
「はい。まぁ、売り出すとしても、来年かなぁ? 今年は試供品を作って、夏のお肌対策に『来年もどうですか?』という宣伝の為の物だと思って下さい」
「そうですわね。使用してみないと、どんな物かは分かりませんものね」
「わたくし、母の伝手で宣伝を致しますわ。宣伝はお任せ下さいまし」
「あっ、どうせなら今年の試供品の魔法の瓶は少し可愛らしい瓶にして、来年売り出す時に、瓶を持ち込んでくれれば、瓶代金を差し引いたお金で売るという様な事をすれば、一般の方も購入しやすいお値段に出来るかもって、思うのですが……」
「それは良い考えですわ!」
メイドさん達が盛り上がり、ネッククーラーを作るメイド班とヘチマの化粧水を作るメイド班に分かれて、公爵家は人を募集して、今年も夏前のヴァンハロー領の女性達に手作業をしてもらった。
これで、夏場に仕事が減ってしまう時期を懐を温かく過ごしてもらえそうだ。
出来上がったヘチマ水は十センチくらいのヘチマの花を模ったガラスの小瓶に入れられ、香りはラベンダーの香りとフローラルの香りとバニラの香りの三種類で作ってみた。
出来上がった化粧水をホクホクとイクシオンに報告に行ったところ、アンゾロさんに見つかり、登録書を書かされた上に、結婚祝いのお返しに化粧水を使えば、宣伝になりますね? と、追加で少し大きめの高級そうなガラス瓶を発注して作らされた。
後日、「イクシオン殿下の結婚祝いのお返しの化粧水がお肌に良くて、さぞかし高級なお品なのでしょうね」と、密かな王弟派の貴族の方々の間で噂になり、公爵家に「どこのお品なのですか?」と訪ねる書簡が届いて、アンゾロさんがニッコリ笑顔で、「森に行くことを許可して差し上げますから、採っていらっしゃいませ」と、森に行かされた。
人使いの荒い執事だ……ッ!
メソメソと泣く私にイクシオンは「仕方がない子だな。自分で忙しくしていると言ったのに」と困った顔で笑って、私を抱きしめながら「リトにはバニラの匂いが似合う」とフンフン匂いを嗅いでいた。
どうせまだまだお子様な匂いがお似合いですよ。そのうちローズ系とか作って大人の匂いの似合う女になってやるのだ!
「目的の物に関しては、不味かったから今まで見向きもしなかったけど、美容の為には必要なのよね」
十三歳の時に齧りついて「不味ッ!」とペッペッとしたけど、あれは生で齧ったから駄目だったんだよね。ちゃんと火を通せば食べられたと、元の世界で調べて「これ、食べられるんだー!?」と驚いたぐらいだけどね。
でも、今回は食べる為に取るわけでは無い。
まぁ、夏バテ予防にも良いというから、獣人さんは食べた方が良いかもしれないけど……
私は森の中で緑色の大きくて長い、ぶら下がっている植物の茎を、草刈り鎌で切り落して、網籠にどんどん入れていく、本当はここでガラス瓶が欲しいけど、仕方がない。
なるべく、茎を長めに切って、零れないようにするぐらいしか手立てはない。
水分を多く含んでいるから段々と重くなってきた……まぁ、五十本近く採ったしいいかな?
私は「リ・テラビーナ」と唱えて黄金の書を手にお屋敷の書斎へと帰りついた。
「ん? ああ、リトおかえり」
「あっ、イクスただいまー。お仕事中に騒がしくしてごめんね」
「報告書だけだから、別に大丈夫だ。それにしても大量だな?」
「えへへー。女性のお肌の為に、今回も頑張っちゃうよ」
「このヘチマが?」
そう。私の大量に採ってきた植物はヘチマなのである。
ヘチマは夏の暑さに焼けてしまうお肌を回復させる自然の化粧水! しかも美白効果もある! お肌もプルプル保湿効果あり、そしてまだ私には早いけど、アンチエイジングというお肌の老化の原因になる活性酸素を取り除く事が出来る女性の味方!
お肌の弱い人にも使えるし、煮て食べると、夏バテ防止、腰痛、リウマチ、咳止め等の効果もあるらしい。
あと、繊維が豊富なので整腸作用にもいいのだとか……まぁ、今回は食べないけどね。
「うん。ヘチマは女性の味方なんだよ? ふふーっ」
「また面白いことをしようとしているみたいだな? 自分から忙しくしていくのだから、困った子だ」
「はうっ、それは言っちゃ駄目……でも、皆が喜んでくれたらいいなっ!」
イクシオンにおでこにキスをされて、笑顔でお返しと頬にキスを返して仕事の邪魔にならないうちに書斎から出ていく。
メイドさん達が大広間に頼んでおいた瓶を並べてくれて、瓶に茎の部分を逆さにしてざっくり切って入れていく。
「リト様、これは?」
「化粧水を抽出中です」
「これが化粧水……になるんですか?」
「これを三、四日くらい放置すると、たっぷり摂れるんですよ」
「こんな物で作られるのですね?」
「ちゃんとろ過して、ハーブを少し入れて匂いも付けます。魔法のガラス瓶で保管すれば劣化もしないので、いつでも使えますからね。夏にお肌が赤くなってしまったり、日焼けしちゃったりするのを回復させてくれるんですよ? あと、美白効果と肌の老化防止もしちゃうので、夏になる前に作って、お肌の対策をしましょう!」
「リト様! お手伝いいたしますッ!」
「わたくし、化粧水を入れる魔法の小瓶を発注しておきますわ!」
「売り出すのですか?」
メイドさん達の眼がキラッと光り、私の手を握って「リト様、他には!?」と聞いてくるので、これは皆さんやる気満々の様だ……
まぁ、この世界はあんまりお化粧品って無くて、オリーブオイルに香料を入れて顔に伸ばして、白粉を付けて、口紅は赤い染料を動物油で溶いた様なのを貴族の人達は使っているぐらいで、庶民はノーメイクな人達が多いかな?
後は、木の実とかを目の周りに付けたり、口に塗ったりするくらい?
ここら辺も改革していこうと、私は調べてきているから、バッチリ任せよ! と、思っている。まぁ、今回は化粧水だけだけどね。
「はい。まぁ、売り出すとしても、来年かなぁ? 今年は試供品を作って、夏のお肌対策に『来年もどうですか?』という宣伝の為の物だと思って下さい」
「そうですわね。使用してみないと、どんな物かは分かりませんものね」
「わたくし、母の伝手で宣伝を致しますわ。宣伝はお任せ下さいまし」
「あっ、どうせなら今年の試供品の魔法の瓶は少し可愛らしい瓶にして、来年売り出す時に、瓶を持ち込んでくれれば、瓶代金を差し引いたお金で売るという様な事をすれば、一般の方も購入しやすいお値段に出来るかもって、思うのですが……」
「それは良い考えですわ!」
メイドさん達が盛り上がり、ネッククーラーを作るメイド班とヘチマの化粧水を作るメイド班に分かれて、公爵家は人を募集して、今年も夏前のヴァンハロー領の女性達に手作業をしてもらった。
これで、夏場に仕事が減ってしまう時期を懐を温かく過ごしてもらえそうだ。
出来上がったヘチマ水は十センチくらいのヘチマの花を模ったガラスの小瓶に入れられ、香りはラベンダーの香りとフローラルの香りとバニラの香りの三種類で作ってみた。
出来上がった化粧水をホクホクとイクシオンに報告に行ったところ、アンゾロさんに見つかり、登録書を書かされた上に、結婚祝いのお返しに化粧水を使えば、宣伝になりますね? と、追加で少し大きめの高級そうなガラス瓶を発注して作らされた。
後日、「イクシオン殿下の結婚祝いのお返しの化粧水がお肌に良くて、さぞかし高級なお品なのでしょうね」と、密かな王弟派の貴族の方々の間で噂になり、公爵家に「どこのお品なのですか?」と訪ねる書簡が届いて、アンゾロさんがニッコリ笑顔で、「森に行くことを許可して差し上げますから、採っていらっしゃいませ」と、森に行かされた。
人使いの荒い執事だ……ッ!
メソメソと泣く私にイクシオンは「仕方がない子だな。自分で忙しくしていると言ったのに」と困った顔で笑って、私を抱きしめながら「リトにはバニラの匂いが似合う」とフンフン匂いを嗅いでいた。
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