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2章
式場準備
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王族の結婚式は普通は『聖堂教会』という、ゲッちゃんが保管されていた教会で行われるらしいのだけど、そこを使うには王様のサインとかが必要で、イクシオンとしては私が王様に狙われるのは避けたいと、そこを使わずに、ヴァンハロー領にある自分の軍の施設を使うことになった。
おかげで、軍の長期遠征をおこなう時の道具が次々と運び出されて、広々としたドーム型の倉庫の中には光が差し込み始める。
「おぉー、ここがこんなに何も無いなんて久しぶりだな」
「窓ガラスあったことすら、忘れてたぜ。いつも薄暗いとか思ってたけどなー」
イクシオンの部下達がそんな話をしながら、お屋敷のメイドさん達が倉庫の中を掃除しているのを見つめ、「可愛いよなー」と言い合っているが、ガリュウさんが来て「散れ!」と一括すると、部下の人達は慌てて逃げていく。
「にしても、式が早まった分、大忙しだな」
「夏前の討伐の時期が早まるとは思っていなかったからな」
実は、夏前に春に生まれた魔獣を討伐する時期があるのだけれど、魔獣の卵が春だというのにかなりの量が産み落とされ、羽化し始めているのだという。
夏になれば食料を求めて活性化する為に、早めに討伐となり、その前に結婚式を挙げる事になった。
私としては討伐が終わってからでも良いと思ったのだけど、イクシオンが「軍人はいつ死ぬか分からない。だから心残りは残したくない」と、言い私もこの世界ではそういう事もありうるだろうと、承諾した。
でも、結婚して直ぐに未亡人とかシャレにならないことにはなって欲しくないので、出来れば元気に帰って来て欲しい。
「リト、これが軍の服とシャツだ。これでいいかい?」
「うん。ありがとう」
イクシオンから軍服とシャツを受け取り、まだ段取りと仕事のあるイクシオンに「お屋敷に帰ってますね」と声を掛ける。
「リト、忘れ物」
「え? なにかある?」
顎を指で押されて上を向かされ、唇にキスで塞がれる。
森の小屋でちょっといい感じ? になってから、毎日のように唇へのキスは挨拶のようにされていて、アーデルカさんも式まではあと少しという事で、大目に見てくれているらしい。
まぁ長引くと引き離されてしまうけどね。
「んっ、はぁ……」
「一人で帰れる?」
「だい、じょーぶ……はふっ」
小さく喉を鳴らして、頬が赤くなるのを感じながら、私はイクシオンから預かった軍服を手に、フラフラとお屋敷に向かって帰る。
式ではイクシオンは軍服を着るから、その前に回収してヴインダム国の紋章を刺繍で入れておくつもりなのだ。
私のドレスにも銀糸で紋章を刺繍してあるから、お揃いっぽいかなー? って、少しだけ特別感を出したいだけの作業なんだけどね。
◇◇◇◇◇
「イクシオン……お前、場所を考えろよ?」
「別に身内だけなんだからいいだろ?」
「いや、そういう問題じゃない! 第一、リトが可哀想だろうが!」
「可哀想? 可愛いの間違いだろ?」
ハァーッとガリュウが溜め息を吐いて、フラフラと歩きながら帰るリトの後姿を見つめる。
隣りのイクシオンは目を細めて、リトを見送っている。
「あの様子だと、番の特性を話してないだろ?」
「ああ。メイド達にも言うなと言ってあるからな」
「可哀想に。あんなにフラフラしてるじゃねぇか……少しは慣らしていってんのかよ?」
「アーデルカに式が終わるまでは手を出すなと言われているから、キスまでだ」
「なら、式の後は何日か出てこれないだろうな」
「休暇は申請しているだろ?」
「そういう事か……」
機嫌の良いイクシオンを非難する目で見て、ガリュウは白い布を運び込むメイドのメイミーに熱い視線を送る。
王の従弟という事で、メイミーの親からは結婚を反対され、メイミーからもイクシオンの屋敷に仕える者として、王の身内にはなれないと断られている。
出逢った時から惹かれ合っているのに、それが許されないガリュウは、ほんの少しだけ、自分より身分的にも立場的にも難しいイクシオンが、こうして結婚する事に恨めしくもあり羨ましくもある。
「結婚印は当日に付けるのか」
「ああ、リトの方はな」
イクシオンが白い手袋をしているのを見て、ガリュウは小さく首を振る。
伝統を重んじる王家の一員が、それで良いのかという疑問もあるが、イクシオンは今まで王家の血筋の火種を嫌い、独り身でも構わないと言っていたのに、それは『番』の少女リトが現れて変わってしまった。
王族争いの事など頭から抜けてしまったかのように、リトだけを求めて、こうして結婚まですると言ってのけたのだから、どうか、どうしようもない従弟の国王に邪魔されずに、このままの状態で時が過ぎていけば良いとガリュウは思っている。
「まぁ、お前が幸せになってくれりゃ、それでいいよ」
「リトさえ居れば、オレはいつでも幸せだ」
平気でそんな台詞を吐くイクシオンにガリュウは、静かに目を伏せる。
おかげで、軍の長期遠征をおこなう時の道具が次々と運び出されて、広々としたドーム型の倉庫の中には光が差し込み始める。
「おぉー、ここがこんなに何も無いなんて久しぶりだな」
「窓ガラスあったことすら、忘れてたぜ。いつも薄暗いとか思ってたけどなー」
イクシオンの部下達がそんな話をしながら、お屋敷のメイドさん達が倉庫の中を掃除しているのを見つめ、「可愛いよなー」と言い合っているが、ガリュウさんが来て「散れ!」と一括すると、部下の人達は慌てて逃げていく。
「にしても、式が早まった分、大忙しだな」
「夏前の討伐の時期が早まるとは思っていなかったからな」
実は、夏前に春に生まれた魔獣を討伐する時期があるのだけれど、魔獣の卵が春だというのにかなりの量が産み落とされ、羽化し始めているのだという。
夏になれば食料を求めて活性化する為に、早めに討伐となり、その前に結婚式を挙げる事になった。
私としては討伐が終わってからでも良いと思ったのだけど、イクシオンが「軍人はいつ死ぬか分からない。だから心残りは残したくない」と、言い私もこの世界ではそういう事もありうるだろうと、承諾した。
でも、結婚して直ぐに未亡人とかシャレにならないことにはなって欲しくないので、出来れば元気に帰って来て欲しい。
「リト、これが軍の服とシャツだ。これでいいかい?」
「うん。ありがとう」
イクシオンから軍服とシャツを受け取り、まだ段取りと仕事のあるイクシオンに「お屋敷に帰ってますね」と声を掛ける。
「リト、忘れ物」
「え? なにかある?」
顎を指で押されて上を向かされ、唇にキスで塞がれる。
森の小屋でちょっといい感じ? になってから、毎日のように唇へのキスは挨拶のようにされていて、アーデルカさんも式まではあと少しという事で、大目に見てくれているらしい。
まぁ長引くと引き離されてしまうけどね。
「んっ、はぁ……」
「一人で帰れる?」
「だい、じょーぶ……はふっ」
小さく喉を鳴らして、頬が赤くなるのを感じながら、私はイクシオンから預かった軍服を手に、フラフラとお屋敷に向かって帰る。
式ではイクシオンは軍服を着るから、その前に回収してヴインダム国の紋章を刺繍で入れておくつもりなのだ。
私のドレスにも銀糸で紋章を刺繍してあるから、お揃いっぽいかなー? って、少しだけ特別感を出したいだけの作業なんだけどね。
◇◇◇◇◇
「イクシオン……お前、場所を考えろよ?」
「別に身内だけなんだからいいだろ?」
「いや、そういう問題じゃない! 第一、リトが可哀想だろうが!」
「可哀想? 可愛いの間違いだろ?」
ハァーッとガリュウが溜め息を吐いて、フラフラと歩きながら帰るリトの後姿を見つめる。
隣りのイクシオンは目を細めて、リトを見送っている。
「あの様子だと、番の特性を話してないだろ?」
「ああ。メイド達にも言うなと言ってあるからな」
「可哀想に。あんなにフラフラしてるじゃねぇか……少しは慣らしていってんのかよ?」
「アーデルカに式が終わるまでは手を出すなと言われているから、キスまでだ」
「なら、式の後は何日か出てこれないだろうな」
「休暇は申請しているだろ?」
「そういう事か……」
機嫌の良いイクシオンを非難する目で見て、ガリュウは白い布を運び込むメイドのメイミーに熱い視線を送る。
王の従弟という事で、メイミーの親からは結婚を反対され、メイミーからもイクシオンの屋敷に仕える者として、王の身内にはなれないと断られている。
出逢った時から惹かれ合っているのに、それが許されないガリュウは、ほんの少しだけ、自分より身分的にも立場的にも難しいイクシオンが、こうして結婚する事に恨めしくもあり羨ましくもある。
「結婚印は当日に付けるのか」
「ああ、リトの方はな」
イクシオンが白い手袋をしているのを見て、ガリュウは小さく首を振る。
伝統を重んじる王家の一員が、それで良いのかという疑問もあるが、イクシオンは今まで王家の血筋の火種を嫌い、独り身でも構わないと言っていたのに、それは『番』の少女リトが現れて変わってしまった。
王族争いの事など頭から抜けてしまったかのように、リトだけを求めて、こうして結婚まですると言ってのけたのだから、どうか、どうしようもない従弟の国王に邪魔されずに、このままの状態で時が過ぎていけば良いとガリュウは思っている。
「まぁ、お前が幸せになってくれりゃ、それでいいよ」
「リトさえ居れば、オレはいつでも幸せだ」
平気でそんな台詞を吐くイクシオンにガリュウは、静かに目を伏せる。
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