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1章
冬の惨事
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コキンッという音がして、痛みが脳天を突き抜けて走るという感覚を初めて体験した。
痛いと声が出せないみたいで、声を出すことすら激痛に感じる。
「うぁ、ゲッちゃ、デンちゃ、ん……っ」
大型魔獣の頭を切り落としたと思ったのに、尻尾を切り落としただけだったみたいで、思いっきり突進されて、私達は悲鳴を上げる間もなく吹き飛ばされた。
軽いコキンッという音は、確実に軽くない状態な気がする。
「うぅ……」
ズシンと、振動がして魔獣が近くに居るのが分かる。
怖い、でも、デンちゃん達を探さなきゃいけない。二人を連れて逃げないと。
馬鹿なことしちゃった……こんな事なら、接近戦なんかするんじゃなかった。実験なんてするんじゃなかった。
ヴァンハロー領で冬越えをしておくんだった。
後悔が頭の中を駆け巡り、自分自身が調子にのっていたツケが、今返ってきた気がした。
魔法の武器を手に入れて、無敵だった気分もある。
異世界に来て、初めは生きるか死ぬかで、散々だったけど、大好きなモフモフ獣人の人達と交流が出来て、恋人_婚約者が王族なのも、凄く私を調子にさせていたのかもしれない。
ちょっぴり、夢見た女の子らしい扱いに、凄く浮かれてた。
「うぐ、ひっく、ちょーし、こいてた……ひぐっ」
所詮、私は賢者でも無ければ、なんでもない。でも、少し自分は特別かな? なんて心の何処かで思ったりしてた。
でも、現実は、コレだ。
ふっ飛ばされて、殺されそうなただの子供だ。
「ひっく、うえぇっ、お母さん、怖いよぉ……ひっ、んっ」
泣きながら、逃げようと必死にもがいて、雪に埋もれて、それでも足掻いて、ドシンッと間近に感じた大きな影に息が止まり、目を上げれば、氷のトカゲが私を見ていた。
「……っ、ぁ」
___怖い。
死にたくない。ここで死んだら、ヴァンハローの人達にも、イクシオンにも会えなくなる。
嫌だ、死にたくない。
冷たい息が顔に掛かって、もう終わりだ。そう思った時、氷のトカゲに体当たりした大きな白いモフモフの毛が見えた。
氷のトカゲはコンビニが四つあるぐらいの大きさをしてるのに、同じ様な大きさの白いモフモフ。
「ワオオオーン!」
「デンちゃんッ! デンちゃんッ!」
大きいけど、デンちゃんだった。
デンちゃんに口で雪から引きずり上げて貰って、ベロンと舐められると大きなデンちゃんの舌の強さに転がる。
ドドドと氷のトカゲがまた突進してきて、デンちゃんが真っ向勝負の様に駆け出して体当たりをしていた。
「デンちゃんッ! 危ないから、もういいからっ!」
私の声に振り向かず、デンちゃんは氷のトカゲと戦っていて、手を伸ばしたら、上からトスッと杖が落ちてきた。
「ゲーキョ」
「ゲッちゃん、無事だった~っ」
「ゲキョキョ」
手を広げると、頭にゲッちゃんが下りてきて、コツコツと頭を突かれる。
ゲッちゃんが拾ってきてくれた杖を手に、氷のトカゲに杖を構える。
激しい雪の上での攻防に、杖を構えたまま、デンちゃんに当たらない様にするにはどうすればいいのか、ずっと隙を伺っては、息を呑んでチャンスを待っていた。
「ギャインッ!」
デンちゃんが氷のトカゲに飛ばされて、体がみるみるうちに縮んでいく。
「リ・オム! リ・オム! リ・オム!」
ボンボンボンと、大爆発の様な火の玉が飛んで、氷のトカゲが「キャシャアアア!!」と声を上げて二本足で立った時、包丁の熊吉を力いっぱい振ると、ガッコンと氷のトカゲが割れて、砕け散った。
そして、それと同時に真っ白な光が、辺り一面に広がって真っ白で何も見えなくなった。
去年と同じ、氷の熊を倒した時も、この白い光が溢れ出していた。
勝ったんだ……これで、助かった___。
ドサッと何かが落ちて、光りが終息すると地面には、トカゲが自分の尻尾を咥えている表紙の黄金色の本があった。本の中心には丸い空洞があって、何か丸い物を埋め込んで使う物かもしれない。
「……本?」
「ワフッ!」
いつもの大きさのデンちゃんが、雪の中から顔を出して、尻尾をパタパタ揺らして私の所まで駆け寄ってきた。
「デンちゃん! デンちゃんッ! ごめんね、ごめん……デンちゃん」
「クウーン」
デンちゃんにしがみ付いて、「馬鹿な事してごめんね」と泣いて謝ると、ベロベロと顔を舐められて、ゲッちゃんには頭をコツコツ突かれた。
色々調べたいけど、デンちゃんが怪我しているかもしれないから、黄金色の本だけ拾って立ち上がると、ズッキンと足が痛くてベシャッとその場でコケた。
「うっ、ぐぅぅ、痛い、あぐっ、痛いよ……ッ」
「キュウゥン」
興奮が冷め始めたら、足の異常な痛さに変な汗がドッと出る。
デンちゃんが私を咥えて歩こうとして、痛さで声にならない悲鳴を上げた。
「___っ!!」
ここで目を回したら、デンちゃんもゲッちゃんも小屋に入れなくなる……そう、思っていたけど、自分の足をみたら、白い物が見えてて「あ、骨」と思った瞬間、雪の上にのめり込む様に倒れて、意識が遠のいていった。
痛いと声が出せないみたいで、声を出すことすら激痛に感じる。
「うぁ、ゲッちゃ、デンちゃ、ん……っ」
大型魔獣の頭を切り落としたと思ったのに、尻尾を切り落としただけだったみたいで、思いっきり突進されて、私達は悲鳴を上げる間もなく吹き飛ばされた。
軽いコキンッという音は、確実に軽くない状態な気がする。
「うぅ……」
ズシンと、振動がして魔獣が近くに居るのが分かる。
怖い、でも、デンちゃん達を探さなきゃいけない。二人を連れて逃げないと。
馬鹿なことしちゃった……こんな事なら、接近戦なんかするんじゃなかった。実験なんてするんじゃなかった。
ヴァンハロー領で冬越えをしておくんだった。
後悔が頭の中を駆け巡り、自分自身が調子にのっていたツケが、今返ってきた気がした。
魔法の武器を手に入れて、無敵だった気分もある。
異世界に来て、初めは生きるか死ぬかで、散々だったけど、大好きなモフモフ獣人の人達と交流が出来て、恋人_婚約者が王族なのも、凄く私を調子にさせていたのかもしれない。
ちょっぴり、夢見た女の子らしい扱いに、凄く浮かれてた。
「うぐ、ひっく、ちょーし、こいてた……ひぐっ」
所詮、私は賢者でも無ければ、なんでもない。でも、少し自分は特別かな? なんて心の何処かで思ったりしてた。
でも、現実は、コレだ。
ふっ飛ばされて、殺されそうなただの子供だ。
「ひっく、うえぇっ、お母さん、怖いよぉ……ひっ、んっ」
泣きながら、逃げようと必死にもがいて、雪に埋もれて、それでも足掻いて、ドシンッと間近に感じた大きな影に息が止まり、目を上げれば、氷のトカゲが私を見ていた。
「……っ、ぁ」
___怖い。
死にたくない。ここで死んだら、ヴァンハローの人達にも、イクシオンにも会えなくなる。
嫌だ、死にたくない。
冷たい息が顔に掛かって、もう終わりだ。そう思った時、氷のトカゲに体当たりした大きな白いモフモフの毛が見えた。
氷のトカゲはコンビニが四つあるぐらいの大きさをしてるのに、同じ様な大きさの白いモフモフ。
「ワオオオーン!」
「デンちゃんッ! デンちゃんッ!」
大きいけど、デンちゃんだった。
デンちゃんに口で雪から引きずり上げて貰って、ベロンと舐められると大きなデンちゃんの舌の強さに転がる。
ドドドと氷のトカゲがまた突進してきて、デンちゃんが真っ向勝負の様に駆け出して体当たりをしていた。
「デンちゃんッ! 危ないから、もういいからっ!」
私の声に振り向かず、デンちゃんは氷のトカゲと戦っていて、手を伸ばしたら、上からトスッと杖が落ちてきた。
「ゲーキョ」
「ゲッちゃん、無事だった~っ」
「ゲキョキョ」
手を広げると、頭にゲッちゃんが下りてきて、コツコツと頭を突かれる。
ゲッちゃんが拾ってきてくれた杖を手に、氷のトカゲに杖を構える。
激しい雪の上での攻防に、杖を構えたまま、デンちゃんに当たらない様にするにはどうすればいいのか、ずっと隙を伺っては、息を呑んでチャンスを待っていた。
「ギャインッ!」
デンちゃんが氷のトカゲに飛ばされて、体がみるみるうちに縮んでいく。
「リ・オム! リ・オム! リ・オム!」
ボンボンボンと、大爆発の様な火の玉が飛んで、氷のトカゲが「キャシャアアア!!」と声を上げて二本足で立った時、包丁の熊吉を力いっぱい振ると、ガッコンと氷のトカゲが割れて、砕け散った。
そして、それと同時に真っ白な光が、辺り一面に広がって真っ白で何も見えなくなった。
去年と同じ、氷の熊を倒した時も、この白い光が溢れ出していた。
勝ったんだ……これで、助かった___。
ドサッと何かが落ちて、光りが終息すると地面には、トカゲが自分の尻尾を咥えている表紙の黄金色の本があった。本の中心には丸い空洞があって、何か丸い物を埋め込んで使う物かもしれない。
「……本?」
「ワフッ!」
いつもの大きさのデンちゃんが、雪の中から顔を出して、尻尾をパタパタ揺らして私の所まで駆け寄ってきた。
「デンちゃん! デンちゃんッ! ごめんね、ごめん……デンちゃん」
「クウーン」
デンちゃんにしがみ付いて、「馬鹿な事してごめんね」と泣いて謝ると、ベロベロと顔を舐められて、ゲッちゃんには頭をコツコツ突かれた。
色々調べたいけど、デンちゃんが怪我しているかもしれないから、黄金色の本だけ拾って立ち上がると、ズッキンと足が痛くてベシャッとその場でコケた。
「うっ、ぐぅぅ、痛い、あぐっ、痛いよ……ッ」
「キュウゥン」
興奮が冷め始めたら、足の異常な痛さに変な汗がドッと出る。
デンちゃんが私を咥えて歩こうとして、痛さで声にならない悲鳴を上げた。
「___っ!!」
ここで目を回したら、デンちゃんもゲッちゃんも小屋に入れなくなる……そう、思っていたけど、自分の足をみたら、白い物が見えてて「あ、骨」と思った瞬間、雪の上にのめり込む様に倒れて、意識が遠のいていった。
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