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1章
夏の獣人
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夏の日差しが強くなる頃、リトが森の中の川でゲッちゃんとデンと水遊びをしつつ暑さをやり過ごしている頃、獣人の国ヴインダムでは、毎日、医療施設に暑さに倒れる獣人達が運び込まれていた。
「今日も、リヤカーで運ばれる人が多いですねー」
「毎年の事ながら、外も炎天下なら家の中にも逃げ場は無いからなぁ……」
日中はなるべく家の中で大人しく過ごし、夕方、陽が落ち始めてからようやく外に出るという感じではあるが、しかし、日中働かなくてはいけない者もいるわけで、結局は担ぎ込まれるという悪循環。
「まぁ、俺らには姐さんがくれた氷と首巻きがあるからマシだけどなー」
「まぁ、暑いことには変わりないけどなー」
前回リトがイクシオンに持たせた氷を水筒に入れて腰から下げ、首にはスカーフの様な長細い物を巻いているが、実はリトがネッククーラーもどきを作って、暑い時にどうぞ。と、紺色の布の中に吸収性が悪いと言われていた布をここでも使い、中に氷を入れたり、冷たく冷やしたミニタオルを入れられるように内ポケットを作ったのだった。
吸収性の悪い布は氷を外に出さずに服を濡らさない上に、氷も溶けにくい性質もあった様で、イクシオンの屋敷に注文が殺到し……まずは見張りの部下達から用意されることになった。
メイド達や、領の主婦たちも集まって作り、今現在も製作中で注文は引切り無しだという。
リトが書類を書いていないので、全権代理人としてイクシオンの名前で登録を行って作られているせいか、国の至る所でイクシオンは獣人の事を思って、発案されたと、人気が上がっているらしい。
国王がそのことに腹を立て、生産中止を言いつけたが、大臣たちには軽くあしらわれ、首元には紺色のネッククーラーを巻いて涼しい顔で「イクシオン殿下は、働く者の為に良い物を作られているのです。民もまたこれで働けて、経済が回るのですから、馬鹿なことを言ってないで政務をこなしなさい」と、ピシャリと言い放たれ、国王が今夜も荒れ狂い吠えているのが、最近の王宮での毎日になりつつある。
「あー、干からびる―」
「姐さんが何かまた良い物作ってくれないかなー」
イクシオンの部下達は、炎天下の中で見張りをしつつ、仕事終わりに冷たい酒でもキューッと飲みたいと、想いを馳せるのだった。
__一方。
手に巻いたミサンガを見つめては目を細めるイクシオンに対し、ガリュウが眉間にしわを寄せて溜め息を吐く。
二人が警護しているのは外海と呼ばれる、王都より少し先にある港で、獣人の弱った時期を狙って他国が攻めてくる事があった場合に備えて、見張っているのである。
普通ならば、見張りは下っ端の役目……と、言いたいところだが、外海からの客人を持て成す任務も含まれている為に、イクシオンとガリュウの王族コンビが港の見張りの任務なのである。
「イクシオン、気色悪い」
「うるさい。黙れガリュウ」
「いやいや、普通に男がブレスレットでニヤニヤするのは気色悪い」
「ほう? メイミーがリトに習って作ったミサンガを持ってきたが、お前は要らないのか。そうかそうか」
「なに!? 寄越せ! くれ!」
バカなやり取りを二人がして、港を見張りつつ、自分の腕に巻かれたミサンガにニヤけるという珍事が、港の人々に見られているが、二人はそんな事はお構いなしに、自分の好きな子からの贈り物を眺め続けるのだった。
◇◇◇◇◇◇◇
イクシオンの屋敷では、メイド長のアーデルカが指示を出して、屋敷の部屋の中にあるテーブルを大広間へ集め、椅子を並べさせる。
テーブルの上には椅子の数分の紙が置かれ、ネッククーラーの縫い方の順番が書いた紙が図解で描かれている。
このやり方ならば、人に一々聞かなくても、分かるだろうというリトの手紙の図を丸写ししたもので、大量に発注が届いている屋敷では、領地の女性達が集まって作り、日々発注をこなしていた。
そして、ついでとばかりに、パンツと生理用品を試供品として手伝いに来た女性に渡して、改良点などを聞いたりしていた。
リトいわく『試供品を配って、意見を募集して改良してこそ良い物が作れる』という言葉と、『試供品で試して気に入れば、発注もくるし、困ってる人の助けになるかも?』の言葉に、こちらもこちらで、手伝いに来た女性達に広まっていっていた。
「リト様のおかげで、夏場は売り上げが落ちて家計の苦しくなる主婦たちにも、金銭が渡せますし、パンツに関してもドロワーズは夏場は蒸れますから、パンツの方が良いので浸透していって欲しいですねー」
「本当に、うちの殿下の番様なだけあるわー」
「やっぱり、殿下は王族として、とても良いご縁を引き寄せられたのでしょうね」
メイド達がうんうんと頷き、「リト様は、この暑さの中お一人で大丈夫かしら?」と、リトを心配しつつ想いを馳せる。
勿論、リトは絶賛、川で仲良し二匹とギャーギャー騒いで水の掛け合いをして遊んでいるので、獣人達の国で自分が何気なく贈った物が、大量生産されている事などは知らず、のんびり夏を楽しんでいた。
「今日も、リヤカーで運ばれる人が多いですねー」
「毎年の事ながら、外も炎天下なら家の中にも逃げ場は無いからなぁ……」
日中はなるべく家の中で大人しく過ごし、夕方、陽が落ち始めてからようやく外に出るという感じではあるが、しかし、日中働かなくてはいけない者もいるわけで、結局は担ぎ込まれるという悪循環。
「まぁ、俺らには姐さんがくれた氷と首巻きがあるからマシだけどなー」
「まぁ、暑いことには変わりないけどなー」
前回リトがイクシオンに持たせた氷を水筒に入れて腰から下げ、首にはスカーフの様な長細い物を巻いているが、実はリトがネッククーラーもどきを作って、暑い時にどうぞ。と、紺色の布の中に吸収性が悪いと言われていた布をここでも使い、中に氷を入れたり、冷たく冷やしたミニタオルを入れられるように内ポケットを作ったのだった。
吸収性の悪い布は氷を外に出さずに服を濡らさない上に、氷も溶けにくい性質もあった様で、イクシオンの屋敷に注文が殺到し……まずは見張りの部下達から用意されることになった。
メイド達や、領の主婦たちも集まって作り、今現在も製作中で注文は引切り無しだという。
リトが書類を書いていないので、全権代理人としてイクシオンの名前で登録を行って作られているせいか、国の至る所でイクシオンは獣人の事を思って、発案されたと、人気が上がっているらしい。
国王がそのことに腹を立て、生産中止を言いつけたが、大臣たちには軽くあしらわれ、首元には紺色のネッククーラーを巻いて涼しい顔で「イクシオン殿下は、働く者の為に良い物を作られているのです。民もまたこれで働けて、経済が回るのですから、馬鹿なことを言ってないで政務をこなしなさい」と、ピシャリと言い放たれ、国王が今夜も荒れ狂い吠えているのが、最近の王宮での毎日になりつつある。
「あー、干からびる―」
「姐さんが何かまた良い物作ってくれないかなー」
イクシオンの部下達は、炎天下の中で見張りをしつつ、仕事終わりに冷たい酒でもキューッと飲みたいと、想いを馳せるのだった。
__一方。
手に巻いたミサンガを見つめては目を細めるイクシオンに対し、ガリュウが眉間にしわを寄せて溜め息を吐く。
二人が警護しているのは外海と呼ばれる、王都より少し先にある港で、獣人の弱った時期を狙って他国が攻めてくる事があった場合に備えて、見張っているのである。
普通ならば、見張りは下っ端の役目……と、言いたいところだが、外海からの客人を持て成す任務も含まれている為に、イクシオンとガリュウの王族コンビが港の見張りの任務なのである。
「イクシオン、気色悪い」
「うるさい。黙れガリュウ」
「いやいや、普通に男がブレスレットでニヤニヤするのは気色悪い」
「ほう? メイミーがリトに習って作ったミサンガを持ってきたが、お前は要らないのか。そうかそうか」
「なに!? 寄越せ! くれ!」
バカなやり取りを二人がして、港を見張りつつ、自分の腕に巻かれたミサンガにニヤけるという珍事が、港の人々に見られているが、二人はそんな事はお構いなしに、自分の好きな子からの贈り物を眺め続けるのだった。
◇◇◇◇◇◇◇
イクシオンの屋敷では、メイド長のアーデルカが指示を出して、屋敷の部屋の中にあるテーブルを大広間へ集め、椅子を並べさせる。
テーブルの上には椅子の数分の紙が置かれ、ネッククーラーの縫い方の順番が書いた紙が図解で描かれている。
このやり方ならば、人に一々聞かなくても、分かるだろうというリトの手紙の図を丸写ししたもので、大量に発注が届いている屋敷では、領地の女性達が集まって作り、日々発注をこなしていた。
そして、ついでとばかりに、パンツと生理用品を試供品として手伝いに来た女性に渡して、改良点などを聞いたりしていた。
リトいわく『試供品を配って、意見を募集して改良してこそ良い物が作れる』という言葉と、『試供品で試して気に入れば、発注もくるし、困ってる人の助けになるかも?』の言葉に、こちらもこちらで、手伝いに来た女性達に広まっていっていた。
「リト様のおかげで、夏場は売り上げが落ちて家計の苦しくなる主婦たちにも、金銭が渡せますし、パンツに関してもドロワーズは夏場は蒸れますから、パンツの方が良いので浸透していって欲しいですねー」
「本当に、うちの殿下の番様なだけあるわー」
「やっぱり、殿下は王族として、とても良いご縁を引き寄せられたのでしょうね」
メイド達がうんうんと頷き、「リト様は、この暑さの中お一人で大丈夫かしら?」と、リトを心配しつつ想いを馳せる。
勿論、リトは絶賛、川で仲良し二匹とギャーギャー騒いで水の掛け合いをして遊んでいるので、獣人達の国で自分が何気なく贈った物が、大量生産されている事などは知らず、のんびり夏を楽しんでいた。
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