やさぐれモードの私はもふもふ旦那様を溺愛中

ろいず

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1章 

パンツ革命

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 婚約者から結婚(仮)状態になったけど、基本は婚約者のままでいくらしい。
まぁ、その方が私としてもとても助かるけど、しかし、イクシオンは手の甲の『鴨』の刺青を眺めてはニコニコとしているので、なんだか……外人さんが日本の文字を刺青して喜んでいる感じだ。

「そうだ。イクス、これがさっき言ってた地図なんだけど」
「ん? ああ、オレの動きが分かったという地図か」

 壁に掛けてある地図を指さして、イクシオンに後ろ抱きつかれたまま移動である。
なんか放してくれないから、大人しくなすがままの私……大きなワンコにしがみ付かれていると思おう。

「どう?」
「これは……凄いな。巨大魔獣の動きも、各国の王家の人間の動きも判るみたいだな」
「ほら、イクスがここに居るから、イクスの盾と狼のマークがここにあるよ」
「本当だな。しかし、これはまた、外に出したらヤバい地図だな」
「そうなの?」
「王族の血で反応しているのだろうが、このグスカタ王家の国旗がここにあるのはおかしい。グスカタ王家の人間は本来、外側の国からは出ない。内側の国にあるという事は、オレの様に王でもないのに血が反応しているとしたら、グスタカ王家の正当な人間が、居るという事だ。こんな事が、グスタカ王家に知られれば、内側のグスタカ王家の人間は殺されるだろうな……」
「うわっ、物騒だね」

 まぁ、イクシオンのお兄さんがこれ見たら、きっと良い気はしないだろうし、ヴァンハロー領の人達が見たら、きっとイクシオンを王様に担ぎ上げたりしちゃうんだろうな。
確かに王家の直系の血筋はイクシオンだろうけど……ヴァンハロー領の人達とゆっくり暮らしたいと言うイクシオンをこのままそっとしておいてほしい。

「この地図は、私がイクスがどこに行ってるかを見るだけの物にするね?」
「そうだな。少し、面白くはあるが、危険な物には変わりない。ここで暮らしていた賢者は、相当だな」
「そうだねー。あっ、イクスの部屋に巻物とか色々本棚に置いてるからね?」
「寝る前に読ませてもらう」

 しかし、なんというか、お腹に手を回されたまま後ろを張りつかれて歩くのは、非常に歩きづらい……
困ったお兄さんなのは、結婚(仮)でも変わらない。
イクシオンを連れて、寝室に案内する。

「イクスの部屋も少し片づけたんだよ」
「これまた、読書部屋みたいな感じだね」

 賢者がやたらと本や巻物を置いていたから、冒険譚と実用書とちょっと意味の分からない物の三種類分けをして本棚の整頓とか色々しておいたのだ。
お布団も一度お日様で天日干ししたから、きっといい匂いがすると思う。

「そのうちクッションとかも作る予定だよ! まぁ、冬越えの間に暇を見つけてになりそうだから、当分先の話だけど、そうしたら、本が寝転がって読めるよ」
「それは楽しみ」
「冬の間はやることが無いから、今のうちにやる事を決めてるんだよ」

 なんせ、日々やる事がある春や夏や秋と違って冬場は、雪かきと部屋でなるべく身動きしない様に、木を彫るぐらいしかやる事が見付からなかったしね……
今年はデンちゃん用に玄関の先から庭先まで渡り廊下みたいなのを作る予定だから、冬になるまでに大工仕事も決まっている。
頭に手が置かれるとよしよしと撫でられるけど、よしよしは私が獣化したイクシオンにしたいところなんだけどね。これではどちらが獣人かわからない。

「そういえば、メイド達からリトに渡してくれとなにか預かってきたな。オレには中身は秘密だとか言っていたが」
「何だろ……って、ああっ!」

 パンツか! 出来上がったのかな? 
流石にパンツはイクシオンには秘密だわ~。
イクシオンに連れられてリビングに戻り、荷物の中から、布に可愛くラッピングされた包みを渡される。
メイドさん達、お気遣いありがとう……少し中身を覗いて、一番上に私のパンツがある事を確認して、サッと包み直す。

「イクス、これを部屋に持って行くから、離して?」
「うん? オレには見られたら困る物?」
「うーん……女性用の下着って言えば、わかる?」
「それは失礼」

 パッと手を離してくれて、自分の部屋に包みを持ってテーブルの上に置いてから、包みを広げる。
手紙も一枚添えられていて、メイドさん達のご意見ご感想の様だ。

『似た様な感じに作ってみました。私達も実際に穿いてみて、使用感等で改良しましたよ。月の物の時は、リト様の作られた生理用品と、この下着が仕事中でも以前の物より気にならないのが良かったです。ただ、少し心もとない感じがして、上から元の下着を付ける子も居ましたが、腰が冷えにくいので重ねて穿くのもありかと思います』

 なるほど、まぁ、この世界の下着に慣れている人達なら、いきなり面積の小さくなった下着は少し心もとないかな?
作ってくれた下着は、私の下着より、お洒落なレースやリボン付きで、私が失敗した紐パンツタイプと、ゴム紐の代わりに紐を通してる物もあった。
何枚かあって、腰の部分に紐を通す小さな輪っかがあって、この輪っかに生理用品の紐を通して使う様に改良してくれたりしたらしい。
確かに、今のだと、腰紐外してーって感じで大変だもんね。
 でも、パンツがこのタイプが出来たなら、クロッチ部分の裏側にボタン式で止められる布の生理用品を作れば、紐を通さなくても使えるようになるから、これも今度メイドさんに話してみよう。
実際に作ってみた方が良いかな? うん。実際作ってみて自分でも使い心地がどうかとか試さないと駄目だよね。
パンツに夢中になってイクシオンの事を少し忘れていたのは内緒である。
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