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1章
お家騒動
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西部劇の部隊の様なヴァンハロー領を出発しようとお屋敷を出た時に、デンちゃんのリヤカーにお屋敷の人達から差し入れと言われ、バスケットにサンドイッチとか色々積み込まれていき、関所の前で、イクシオンの部下の人達から「姐さん、また来て下さいね」と、元気に手を振られた。
姐さんって、年下の私に言うの止めようよ?
イクシオンは森まで送ると言うので、黒いトカゲが二足歩行しているような獣騎というのに乗って一緒に来ていて、ガリュウさんも獣騎に乗ってイクシオンの安全の為に一緒に行くらしい。
過保護かな?
イクシオンいわく、「オレが逃げ出さない様にする為の監視だ」とか言っていた。
「では、皆さん、お世話になりました。ありがとうございました!」
「少し留守にする。その間、頼んだぞ」
「お前達、しっかり街の警護をしておけよ」
「「「ハッ! 心得ています!!」」」
部下の人達に手を振って、関所を出る時、後ろから土煙を上げながら何かが街の奥から迫って来ていた。
「チッ、王国騎士だ。ここは引き受けた。早く行け!」
「悪い、ガリュウ頼んだ! 行くぞリト!」
「デンちゃん、帰るよー」
「ワオン!」
関所を出て、イクシオンが「悪いが少し急ぐぞ!」と言うので、デンちゃんに頑張って走ってもらう。
ヴァンハロー領から出て、赤い平地の半分ほど行ったところで、イクシオンが少し速度を落として、横に並んで走行する。
「イクス、王国騎士って、無視して良かったの?」
「どうせ兄が嫌味を言いに寄越したんだろう。ガリュウに任せておけばいい」
「お兄さん? 仲が悪いの?」
目を伏し目がちにして眉間にしわを寄せると、イクシオンが溜め息交じりに自分の家庭事情を教えてくれた。
「オレの母が十八歳の時に、政略結婚で父が入り婿に入ったんだが、父には妾がいて兄が生まれ、父は母に見向きもせず、それは二十年続いた。母は父以外の男の子供を身籠り、オレが生まれた。家自体は母の物だが、出産の際に母が亡くなり、家は父の物になった。父亡き後は兄が家を継いでいてな、兄には子供も居て、その子供に家を継がせる為に、オレが邪魔らしい」
家の事情というのは随分と複雑な様だ。
まぁ、イクシオンのお母さんの家に入り婿しといて、お妾さんと浮気して子供作っておいて、イクシオンのお母さんが浮気したくなるのも頷けるかも? まぁ、褒められた事じゃないけど。
「まぁ、兄は事あるごとにオレに突っかかって来ては、周りにオレが正当な家の持ち主なのに何を言っているのかと、攻め立てられて余計に腹を立ててしまうみたいだ。オレは家なんか要らないから、リトとゆっくり暮らすのが夢だな」
そう言って少し遠い目をしたイクシオンは何処か寂しそうで、一人っ子で両親の愛情を注がれまくって育った私には少し想像もつかないお家騒動の様だ。
「まぁ、さっきの王国騎士も大方、兄から生きていたなら、挨拶に来いとでも言いに来たのだろうさ。会いたくないくせに、自分に報告が来ないという事態は我慢できないらしいからな」
二人っきりの兄弟なんだから会えばいいのに……なんて軽く言える程、二人には血の関係も無く、他人でしか無いだろうし、難しい関係だよね。
イクシオンのお屋敷は立派だったけど、あれ以上のお屋敷があって、お兄さんが取られたくないんだとしたら、どれだけお金持ちのお坊ちゃんなのやら?
「兄はオレの婚約を知ったら、リトにまで危害を及ぼすかもしれない。リトは一人では街に来たりしないようにな? オレが迎えに行く時だけ、一緒に行こう」
「そこまで危ない、お兄さんなの?」
「ヴインダム王国では、誰も逆らえない程度にはな」
ウインダム王国で誰も逆らえないなんて、王様クラスの大物ってことかな?
うん? ウインダム……イクシオンがフルネームで最後にウインダムって言ってたような……
いや、この国では最後に自分の国名を入れるのがフルネームかもしれない。
でも、ガリュウさんの言葉を思い出すと、国盗りとか、イクシオンが動く時は、国がひっくり返る騒動になるとか言ってたような……?
「イクスって実は偉い人だったりする?」
「オレはオレだ。隠しても仕方がない事だが、ヴインダム国の王女がオレの母だった」
アイドルじゃなかった!? いや、まぁ、アイドルも自分でもどうかと思ってはいたけどね?
どうりで街の人達が総出でイクシオンが生きてたことを喜んでいたわけだ。
本物の王子様だー……? で、良いのかな?
「イクスは、お城とかに住んだりしてないの?」
「十歳の時に、兄に子供が生まれてからは、兄はオレが子供を殺害するんじゃないかとか、王家に仕えていた者が暗殺を企むんじゃないかと不安定になってな、だからヴァンハロー領の領主として城から出て、公爵の地位に居る事で、兄から離れている。まぁ、軍部に身を置いている為にコキ使われてはいるがな」
「イクスも大変だね」
「リトがこの世界に現れた時から、救われてるよ」
このイケメンめ……眩しそうな笑顔をしちゃって……
まぁ、多少、心が疲れた時は優しくしてあげよう。私ぐらいは、イクシオンを王族とかそういう目で見ないで、今まで通り、甘えたがりなお兄さんとして付き合おう。
イクシオンが甘えたい時に誰か居なかったから、私にベッタリ甘えているのかもしれないしね。
姐さんって、年下の私に言うの止めようよ?
イクシオンは森まで送ると言うので、黒いトカゲが二足歩行しているような獣騎というのに乗って一緒に来ていて、ガリュウさんも獣騎に乗ってイクシオンの安全の為に一緒に行くらしい。
過保護かな?
イクシオンいわく、「オレが逃げ出さない様にする為の監視だ」とか言っていた。
「では、皆さん、お世話になりました。ありがとうございました!」
「少し留守にする。その間、頼んだぞ」
「お前達、しっかり街の警護をしておけよ」
「「「ハッ! 心得ています!!」」」
部下の人達に手を振って、関所を出る時、後ろから土煙を上げながら何かが街の奥から迫って来ていた。
「チッ、王国騎士だ。ここは引き受けた。早く行け!」
「悪い、ガリュウ頼んだ! 行くぞリト!」
「デンちゃん、帰るよー」
「ワオン!」
関所を出て、イクシオンが「悪いが少し急ぐぞ!」と言うので、デンちゃんに頑張って走ってもらう。
ヴァンハロー領から出て、赤い平地の半分ほど行ったところで、イクシオンが少し速度を落として、横に並んで走行する。
「イクス、王国騎士って、無視して良かったの?」
「どうせ兄が嫌味を言いに寄越したんだろう。ガリュウに任せておけばいい」
「お兄さん? 仲が悪いの?」
目を伏し目がちにして眉間にしわを寄せると、イクシオンが溜め息交じりに自分の家庭事情を教えてくれた。
「オレの母が十八歳の時に、政略結婚で父が入り婿に入ったんだが、父には妾がいて兄が生まれ、父は母に見向きもせず、それは二十年続いた。母は父以外の男の子供を身籠り、オレが生まれた。家自体は母の物だが、出産の際に母が亡くなり、家は父の物になった。父亡き後は兄が家を継いでいてな、兄には子供も居て、その子供に家を継がせる為に、オレが邪魔らしい」
家の事情というのは随分と複雑な様だ。
まぁ、イクシオンのお母さんの家に入り婿しといて、お妾さんと浮気して子供作っておいて、イクシオンのお母さんが浮気したくなるのも頷けるかも? まぁ、褒められた事じゃないけど。
「まぁ、兄は事あるごとにオレに突っかかって来ては、周りにオレが正当な家の持ち主なのに何を言っているのかと、攻め立てられて余計に腹を立ててしまうみたいだ。オレは家なんか要らないから、リトとゆっくり暮らすのが夢だな」
そう言って少し遠い目をしたイクシオンは何処か寂しそうで、一人っ子で両親の愛情を注がれまくって育った私には少し想像もつかないお家騒動の様だ。
「まぁ、さっきの王国騎士も大方、兄から生きていたなら、挨拶に来いとでも言いに来たのだろうさ。会いたくないくせに、自分に報告が来ないという事態は我慢できないらしいからな」
二人っきりの兄弟なんだから会えばいいのに……なんて軽く言える程、二人には血の関係も無く、他人でしか無いだろうし、難しい関係だよね。
イクシオンのお屋敷は立派だったけど、あれ以上のお屋敷があって、お兄さんが取られたくないんだとしたら、どれだけお金持ちのお坊ちゃんなのやら?
「兄はオレの婚約を知ったら、リトにまで危害を及ぼすかもしれない。リトは一人では街に来たりしないようにな? オレが迎えに行く時だけ、一緒に行こう」
「そこまで危ない、お兄さんなの?」
「ヴインダム王国では、誰も逆らえない程度にはな」
ウインダム王国で誰も逆らえないなんて、王様クラスの大物ってことかな?
うん? ウインダム……イクシオンがフルネームで最後にウインダムって言ってたような……
いや、この国では最後に自分の国名を入れるのがフルネームかもしれない。
でも、ガリュウさんの言葉を思い出すと、国盗りとか、イクシオンが動く時は、国がひっくり返る騒動になるとか言ってたような……?
「イクスって実は偉い人だったりする?」
「オレはオレだ。隠しても仕方がない事だが、ヴインダム国の王女がオレの母だった」
アイドルじゃなかった!? いや、まぁ、アイドルも自分でもどうかと思ってはいたけどね?
どうりで街の人達が総出でイクシオンが生きてたことを喜んでいたわけだ。
本物の王子様だー……? で、良いのかな?
「イクスは、お城とかに住んだりしてないの?」
「十歳の時に、兄に子供が生まれてからは、兄はオレが子供を殺害するんじゃないかとか、王家に仕えていた者が暗殺を企むんじゃないかと不安定になってな、だからヴァンハロー領の領主として城から出て、公爵の地位に居る事で、兄から離れている。まぁ、軍部に身を置いている為にコキ使われてはいるがな」
「イクスも大変だね」
「リトがこの世界に現れた時から、救われてるよ」
このイケメンめ……眩しそうな笑顔をしちゃって……
まぁ、多少、心が疲れた時は優しくしてあげよう。私ぐらいは、イクシオンを王族とかそういう目で見ないで、今まで通り、甘えたがりなお兄さんとして付き合おう。
イクシオンが甘えたい時に誰か居なかったから、私にベッタリ甘えているのかもしれないしね。
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