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1章 

お誕生日 14歳

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 十月五日、私、十四歳!!
おめでとう私!! ありがとう私!! と、心の中でパチパチと手を叩き、今日は少しだけ女の子らしい食事を用意した。

 誕生日くらいは、贅沢をしよう!!

 小麦粉と水で焼いたパンケーキを薄ーく伸ばして焼いて、クレープみたいにして、中にジャムを入れた物を作ってみた。
あと、紅茶!!
紅茶缶を紳士さんが入れてくれていたんだけど、茶葉のままどうやって飲むか……これが悩みだったんだよね。

 そこで、小さな四角い袋を布で作ってみた。
要は巾着のコップに入るサイズの物を縫って作り、中に茶葉を入れてお湯を注いで出来上がり!
一応、紐も通したからコップから引き上げて濃さも調節出来るし、そのまま外に干してまた使うという貧乏くさい事も出来るよ!
三回まではギリギリ色が出る!!
三回以上はほんのり、紅茶臭が微妙にあるかなー? っていうお湯だったよ。

 茶葉を捨てればまた使える、ティーパック。
紅茶に紳士さんがくれた蜂蜜を入れて、誕生日だから自重せずに甘い紅茶にした。

 クレープに紅茶!
誕生日にそれだけかー……って、なるかもしれないけど、今の私にはコレは凄い贅沢な事なので、口元がへらっとしてしまう。

「えへへ~。甘い物いっぱい~」

 贅沢を言うなら、ここにホイップクリームも添えて欲しいところかな?
牛、欲しいなぁ……でも、牛って妊娠中しかお乳が出ないから、最低でも二頭のメスとオスが必要なんだよねぇ……牛までは流石に面倒は見切れないかな。
草だけ食べさせればいいのかもしれないけど、秋になってから、草が段々無くなってきていて、この小屋近くで飼うとか無理だなぁ。
うーん、残念。 まっ、牛をここら辺では見たこと無いから、土台無理な話だけど。

 クレープを食べながら、ジャム甘ーい、美味ーい。と、一人で舌鼓を打っている。
デンちゃんは足元で鶏肉ジャーキーをガジガジ噛んでいるし、ゲッちゃんはコクリコクリと頭を上下に動かしてテーブルの上に置いた網籠の中で寝ている。

 網籠は、蔓で作った物ばかりだけど、不器用な私でも慣れてくると段々と作れるようになるんだから凄いよね。
 初めは本を片手に練習して、蔓が切れたりして、私も途中でキレて「うきゃーー!!」とか叫んでたけど、蔓の見分け方や、しなやかで曲がる蔓を集めるのが上手くなった。
なんでも自分でやらないといけないから、当然といえば当然で、積み重ねて上手くなっていく。

 あー、でも弓だけは、まだ全然ダメ。
指が痛くなって皮がずる剥けて、薬草使っちゃうので、冬越えの為にも無駄な怪我をして減らしたくないから、いざとなれば魔法の武器が火を噴くぜ! とか思っている。
武器から出るのは火では無いだろうけどね。
備蓄品は減らしたくないから弓の練習はまだまだ先かな? 冬が終わってから考える。

 この生活には慣れてきたけど、初めての冬を迎えるから、どんな冬になるのか想像がつかない。
備蓄は大事。三人分の食事を用意するから私のする事は、三人分の命を握っていると思っていい。
やれることは全部やって、後悔の無いようにしないとね。

 十月からが、本番だと思ってる。
十一月に入ったら食料探しはかなり厳しいだろうし、なるべく熱とかを出さない為にも、外に出るのは短時間だけとかにしないと、ここでは頼れるのは自分だけだから、自己管理も必要だ。

 毎日、明日は何をしようと決めながら動く生活。
ここに来る前は、学校に行って家に帰っての繰り返しで、明日はテストがあるなーとか少し心配したり、宿題が多いなぁとブツブツ文句を言う生活だった。
多少の不満はあったけど、今はそんな生活をもっと堪能しておけばよかったと思う。

「お母さんとお父さん、元気にしてるかな?」

 小さく呟いて、目を伏せる。
今年の私の誕生日には何が用意されていたんだろう?
毎年、ケーキとプレゼントがあって、去年はボン助とお揃いのパーカーだった。
お母さんの知り合いで、愛犬とお揃いの服を作ってくれる人が居て胸の所にはボン助の顔の刺繍がしてあって、ボン助には私の名前が刺繍してあるお揃いの黄色いパーカー。
ボン助とお散歩に行く時に羽織って出掛けてて、お気に入りだった。
今年も着るつもりだったんだけどな……

 もう私の捜索活動は打ち切られたころだろうか?
山で迷子になったりすると、ヘリコプターを飛ばすのに凄くお金がかかるって聞いたことがあるから、ヘリコプターとかは早めに打ち切られちゃって、ほぼ警察や山岳救助隊の足で探す事になるらしい。
 テレビとかで「迷子になるなら山に入らなきゃいいのに」とか言ってた自分が、今ココで暮らしているのだから、何とも言えない。

 私も初めの頃は精々、一週間もあれば確実に助けが来るって思っていたんだけど、こんな魔法のある世界じゃ私は見つけられないだろうし、帰れる日はいつになるのやら?
 これが漫画なら召喚した人や神様なんかが居て説明をしてくれるんだろうけど、そんな人も神様も現れない。
もしそんな人が目の前に来て「この世界に召喚はしたけど、帰ることはできない」って言ったら、魔法の武器でぶっ倒す所存である。

 まぁ、誰も私に説明なんかしてくれないから、全部想像しているだけだし、多分、ここに迷い込んでしまったのも偶然なんだろう。
だから、この世界の人も私が迷い込んだ事は知らないだろうし、助けも来ない。
いつか、ここを出て他の場所に行って、元の世界に戻る魔法を探す事を考えなきゃいけないのかもしれない。
でも、今はまだ生きる為に精一杯で、そんな事を出来る余裕もない。

 今日から、十四歳。
私のここでの生活はまだ先が見えない。
今は甘いクレープと紅茶で自分をお祝いしつつ、冬越えだけを考えて生きていくしかない。
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