やさぐれモードの私はもふもふ旦那様を溺愛中

ろいず

文字の大きさ
上 下
21 / 167
1章 

子犬と薬草

しおりを挟む
 小屋に連れ帰った子犬についた血と自分の手を洗い流して、まだ血を流している子犬は、あの猿に噛まれたのだと思う。
丸い穴が背中に四つ開いていて、そこから血が出ていた。
傷薬なんて無いし、獣医さんも居ないから、私に出来たのは布で作った包帯を巻いてあげることぐらいで、ミルクも無いから水をお皿に用意してあげる事だけだ。

 歯もちゃんとあるから子犬と言っても、もう柔らかい物は食べれる時期の子だと思う。
木箱にタオルを敷いて、子犬をそこへ寝かせて様子を見る。
ずっとハッハッハッと短く息を繰り返していて、危ない状態かもしれない。

「ゲッちゃん、傷薬とか無いかな?」
「ゲーキョ?」
「分かんない? この子を治してあげたいんだけど、ゲッちゃん薬草とかある場所知らない?」
「ゲーキョキョ」

 バサッとゲッちゃんが飛んで、私の前を飛び始め、私は慌ててリュックサックとナイフを手にドアを開けてゲッちゃんと外に出る。
傷薬は完成品でゲッちゃんには解らないけど、薬草という自然に生えている物ならゲッちゃんは判るのだろう。
私の前をゲッちゃんが飛び、たまに後ろを向いてくれるから、さっきみたいな怖い事は無いと思う。

 ゲッちゃんと二人でやってきたのは魚釣りで来る川の近くで、ゲッちゃんが黄色い花の咲いている草花を口に咥えて引っ張る。

「ゲッちゃん、薬草はコレ?」
「ゲキョ!」
「わかった。摘んじゃおう」

 生えている黄色い草花をナイフで両手に持てるだけ刈り取って、ゲッちゃんが「帰ろう」と小屋に向かって飛び始めたのを追い駆けて、小屋に帰った。
小屋に帰ってから、キノコの載っていた本で草の種類を調べて、「モギア草」という物だという事がわかった。
よくすり潰して粘り気が出るまでこねて、傷口に塗って、その上に清潔な布と包帯を巻くと良いと、記載されていた。

 外で石を拾ってきて、水で洗ってから草を叩き潰して何度も繰り返していると、ぬばーっと粘り気が出てきて、お皿に入れてから布をハサミで切って、子犬の包帯を一度取り外して傷口に草をベタベタと塗って、布を当ててから包帯でまた巻き直した。
 塗ってる間、子犬は「キャイン」と小さく鳴いたけど、後は大人しくて、またハッハッと息を繰り返していた。

「元気になるといいんだけど……」
「ゲーキョ」

 子犬が心配なのもあって、今日は大人しく文字の勉強の日にした。
 本で文字を探しながら、子犬の様子を見て、たまに黄色い猿の事を思い出しては手に残った猿のザクザクした手触りの悪い毛並みが手に蘇って、少し泣きそうになっていた。

 動物好きなのに、必死だったとはいえ動物を殺してしまった事は私の中でダメージが大きかった。

 でも、ゲッちゃんと白い子犬を助けてあげられたのは良かったと思う。
子犬はどうなるか分からないけど、もし助かったら名前を付けてあげよう。

「ゲキョキョ」

 ゲッちゃんが甘えるように手に擦り寄って来て、私を慰めてくれているのかな? と、勝手にそう思ってゲッちゃんの頭を手で良い子良い子と撫でる。

「あ、そういえば、パルシーム鳥の塩も用意しないとだ」

 最近忙しくて、塩はハーブソルトに頼りっきりだったけど、冬前に塩もちゃんと確保しておこう。
ガラス瓶からパルシーム鳥用に採っておいた木の実を出して、お風呂場の外にガラス瓶と一緒に置いておいた。
今回はケチらずにガラス瓶と同じくらいの量の木の実を用意した。
明日にはお塩がたっぷり手に入ると良いな。

 勉強をしつつ、本でたまに私のサバイバル生活に役立ちそうなページには折り目を付けておく。私が探し求めているエバーナの実の近くには、ビルズという芋が生えていることが多いという。

 『ビルズは焼いても煮ても美味しい。ワインと肉とビルズがあれば最高だ』と、本には書かれていて、明日はゲッちゃんにお芋を探してと言えば探してくれるかもしれない。
いつも、エバーナの実を探す時は、エバーナの実とか甘い実って、曖昧なことしか言わなかったけど、芋と言えば、ゲッちゃんにも分かるかもしれない。

「フゥーン」
「あっ、子犬起きたかな?」

 木箱の中を覗くと、子犬は寝ていた。
ただの寝言だったみたい。ハッハッと息苦しそうな息では無くなったから、薬草の効果はあったんだろうか?
早く元気になってくれたら嬉しいなぁ。
そしたら思う存分、モフモフの毛を触りまくって、この飢えたモフ毛ロスから解放されたい。
ゲッちゃんの胸の毛というか羽? もフワフワで良いんだけど、やっぱりモフモフのワンコの毛が一番愛おしい!!

 最近は紳士さんが『まだ見ぬ君』さんに贈ったケープのファー部分を触るのが日課になってるぐらい飢えてる。
あのファーの銀のサラサラ感の素晴らしいこと……ッ!!
もし紳士さんに会えたら、あのファーは何の動物の毛なのか教えてもらいたいくらいだ。
きっと素晴らしいモフモフの毛をした動物に違いない。
しおりを挟む
感想 99

あなたにおすすめの小説

俺の番が見つからない

Heath
恋愛
先の皇帝時代に帝国領土は10倍にも膨れ上がった。その次代の皇帝となるべく皇太子には「第一皇太子」という余計な肩書きがついている。その理由は番がいないものは皇帝になれないからであった。 第一皇太子に番は現れるのか?見つけられるのか? 一方、長年継母である侯爵夫人と令嬢に虐げられている庶子ソフィは先皇帝の後宮に送られることになった。悲しむソフィの荷物の中に、こっそり黒い毛玉がついてきていた。 毛玉はソフィを幸せに導きたい!(仔猫に意志はほとんどありませんっ) 皇太子も王太子も冒険者もちょっとチャラい前皇帝も無口な魔王もご出演なさいます。 CPは固定ながらも複数・なんでもあり(異種・BL)も出てしまいます。ご注意ください。 ざまぁ&ハッピーエンドを目指して、このお話は終われるのか? 2021/01/15 次のエピソード執筆中です(^_^;) 20話を超えそうですが、1月中にはうpしたいです。 お付き合い頂けると幸いです💓 エブリスタ同時公開中٩(๑´0`๑)۶

リス獣人のお医者さまは番の子どもの父になりたい!

能登原あめ
恋愛
* R15はほんのり、ラブコメです。 「先生、私赤ちゃんができたみたいなんです!」  診察室に入ってきた小柄な人間の女の子リーズはとてもいい匂いがした。  せっかく番が見つかったのにリス獣人のジャノは残念でたまらない。 「診察室にお相手を呼んでも大丈夫ですよ」 「相手? いません! つまり、神様が私に赤ちゃんを授けてくださったんです」 * 全4話+おまけ小話未定。  * 本編にRシーンはほぼありませんが、小話追加する際はレーディングが変わる可能性があります。 * 表紙はCanvaさまで作成した画像を使用しております。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

大好きだけど、結婚はできません!〜強面彼氏に強引に溺愛されて、困っています〜

楠結衣
恋愛
冷たい川に落ちてしまったリス獣人のミーナは、薄れゆく意識の中、水中を飛ぶような速さで泳いできた一人の青年に助け出される。 ミーナを助けてくれた鍛冶屋のリュークは、鋭く睨むワイルドな人で。思わず身をすくませたけど、見た目と違って優しいリュークに次第に心惹かれていく。 さらに結婚を前提の告白をされてしまうのだけど、リュークの夢は故郷で鍛冶屋をひらくことだと告げられて。 (リュークのことは好きだけど、彼が住むのは北にある氷の国。寒すぎると冬眠してしまう私には無理!) と断ったのに、なぜか諦めないリュークと期限付きでお試しの恋人に?! 「泊まっていい?」 「今日、泊まってけ」 「俺の故郷で結婚してほしい!」 あまく溺愛してくるリュークに、ミーナの好きの気持ちは加速していく。 やっぱり、氷の国に一緒に行きたい!寒さに慣れると決意したミーナはある行動に出る……。 ミーナの一途な想いの行方は?二人の恋の結末は?! 健気でかわいいリス獣人と、見た目が怖いのに甘々なペンギン獣人の恋物語。 一途で溺愛なハッピーエンドストーリーです。 *小説家になろう様でも掲載しています

獣人公爵のエスコート

ざっく
恋愛
デビューの日、城に着いたが、会場に入れてもらえず、別室に通されたフィディア。エスコート役が来ると言うが、心当たりがない。 将軍閣下は、番を見つけて興奮していた。すぐに他の男からの視線が無い場所へ、移動してもらうべく、副官に命令した。 軽いすれ違いです。 書籍化していただくことになりました!それに伴い、11月10日に削除いたします。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

責任を取らなくていいので溺愛しないでください

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
漆黒騎士団の女騎士であるシャンテルは任務の途中で一人の男にまんまと美味しくいただかれてしまった。どうやらその男は以前から彼女を狙っていたらしい。 だが任務のため、そんなことにはお構いなしのシャンテル。むしろ邪魔。その男から逃げながら任務をこなす日々。だが、その男の正体に気づいたとき――。 ※2023.6.14:アルファポリスノーチェブックスより書籍化されました。 ※ノーチェ作品の何かをレンタルしますと特別番外編(鍵付き)がお読みいただけます。

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

処理中です...