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1章
実験開始
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紳士さんが使っている封蝋の盾と狼のシンボルは、自分の住んでいる土地を表す物なのだろう。
ケープの刺繍も多分、ヴァンハロー領で作られた物だという事かな?
ヴァンハロー領の人は、盾と狼のシンボルマークなのかも?
地図をよく見れば、他の大陸にも蛇が二つ絡まったシンボルマークとかがあるから、土地ごとによってシンボルマークがあるとすれば……国旗に近い物なのかもしれない。
またリビングに戻って、手紙に手を伸ばすと、最後の一通になっていた。
最後の一通は、長期遠征に行く前に『まだ見ぬ君』さんが冬を温かく超えられるように、色々と準備をした事が書かれていた。
『私にはそちらの内部の様子は知る事が出来ないので、無用の物かもしれないけれど、愛しい君が少しでも寒くないように、生活に必要な物を入れておいたよ。肉は私が狩りで獲ってきた物で、入れてある器は魔法が掛けられているから、いつでもそのままの状態で保存出来る物だよ。まぁ、ガラスの器は大抵、保存魔法が掛かっている物だから、説明も不要かな? 君の事を想うと心配し過ぎてしまうのが、最近の私の悩みだろうか? 君の元に届く前に魔獣にリヤカーを襲われそうで、少し悩む所だけど、どうか、私の手紙と共に君の元へ届きます様に』
うわぁぁ~!!
すいませんっ!! 私が盗みましたっ!!
紳士さん、『まだ見ぬ君』さん、ごめんなさい!!
私、もしや恋の応援どころか、二人の邪魔をしたのでは!?
再びテーブルに突っ伏して「うわぁぁ~」と、頭を抱える。
でもね、私がこのリヤカーを持って行かなかったら、熊に壊されてたので、許してください!!
手紙もちゃんと元に戻して紳士さんの気持ちのこもったラブレターは私が『まだ見ぬ君』さんへ届けるので、安心して下さい!!
「ゲーキョ?」
「ゲッちゃん……、私は春先に、馬に蹴られて死んじゃうかもしれないよ」
「ゲキョ―?」
「恋人達の邪魔をする悪い子は、馬に蹴られて死んじゃうんだよ……でも、ここまで想われてるなんて凄いよね。『まだ見ぬ君』さんには、紳士さんの気持ちが届かないのが歯痒いよねぇ」
紳士さんは長期遠征先で、また手紙を書くのかな?
何とか私が『まだ見ぬ君』さんを見つけ出して、手紙を渡して紳士さんが春先に来る時に会わせてあげたいな。
素敵な出会いをさせてあげたい。
でも、大人の恋を子供が応援って……余計なお世話だよね。まさに馬に蹴られる事案かも?
はぁー……と、溜め息交じりに息を吐き、手紙をたたんで封筒の中に戻す。
「あっ!!」
今更だけど……手紙に私の手の平の血が少し滲んで付いていた。
やってしまったー!! 人様の大事な手紙に……一生の不覚……
手の平の火傷が薄皮が剥がれて血というか透明の液みたいのが滲み出てた。
「この家、包帯とか無いんだよね……」
紳士さんが入れてくれていた布を細くハサミで切って包帯を作ろうかな?
これ以上『まだ見ぬ君』さんの物資を横取りするのは、人としてどうなんだ!? と、言われそうだけど、何度も言い訳がましく言うけど、熊に横取りされそうになっていた時点で、この世にこの荷物は無かった物とする!!
うん。熊に荒らされるより、私が大事に使わせて貰って、いつか恩返しできる様な事があれば、させてもらうという事にしておこう。
それが世の為人の為、私の為……一応、返せる物は返すつもりだしね。
布を一枚取り出して広げると、それなりに広い……もしかして、この世界って服とかも自分で手縫いとかで、この布も服を作る用なのかも? 結構、肌触りの良い布地をしてるから無きにしも非ずかな?
両手に巻き付けられる長さにハサミで切り取って、くるくると自分の手の平に巻きつける。
実はハサミとか持つのもジクジク痛かったから、これで一安心だ。
「あっ、そういえば……土地の名前で地図とかに夢中になってたけど、魔法とか書いてなかったっけ?」
ガラスの瓶には保存魔法が掛けてある……と、確かに書いてある。
つまり、私が食い散らかして空にしたココに初めから置いてあったガラス瓶とかも保存魔法が掛けられていたのかも?
「うーん。体がギシギシだけど、実験してみたいよね」
果物を空になった瓶に入れて保存魔法と言うのがあるのなら、冬の間も瓶に入れさえすれば、私の下手な料理で素材を駄目にしたり、『まだ見ぬ君』さんへの食べ物をこれ以上減らさなくていいかもしれない。
「ゲッちゃん、果物がこの近くになってるところある?」
「ゲキョゲキョ」
まだロボット並みの動きだけど、ナイフとリュックサックを持ってゲッちゃんと小屋の外に出た。まだ陽が高いから動くなら今のうちだ。
夏が終わり、秋になるのだろう。陽が落ちるのが少し早くなってきた気がするからね。
紳士さんの手紙で秋から長期遠征というなら、多分、もう秋なのだろう。
ゲッちゃんの先導で、小屋から近い場所の果物をナイフで枝から切り取って、ギコギコと足をロボットのように動かしながら小屋に直ぐ戻った。
採った果物はオレンジ色の卵型をした果物で、薄い皮を剥ぐと甘い香りがして、少しだけ齧ると、桃とマンゴーを合わせた様な味がした。
少し硬いけど、食べれなくはない。
瓶に果物を切って入れて、実験開始である。
一応、ガラス瓶に入れた物と、お皿に外に出した物を用意して食べれる腐敗具合を見れる用も用意した。
私も少しは考える子なのである。
ケープの刺繍も多分、ヴァンハロー領で作られた物だという事かな?
ヴァンハロー領の人は、盾と狼のシンボルマークなのかも?
地図をよく見れば、他の大陸にも蛇が二つ絡まったシンボルマークとかがあるから、土地ごとによってシンボルマークがあるとすれば……国旗に近い物なのかもしれない。
またリビングに戻って、手紙に手を伸ばすと、最後の一通になっていた。
最後の一通は、長期遠征に行く前に『まだ見ぬ君』さんが冬を温かく超えられるように、色々と準備をした事が書かれていた。
『私にはそちらの内部の様子は知る事が出来ないので、無用の物かもしれないけれど、愛しい君が少しでも寒くないように、生活に必要な物を入れておいたよ。肉は私が狩りで獲ってきた物で、入れてある器は魔法が掛けられているから、いつでもそのままの状態で保存出来る物だよ。まぁ、ガラスの器は大抵、保存魔法が掛かっている物だから、説明も不要かな? 君の事を想うと心配し過ぎてしまうのが、最近の私の悩みだろうか? 君の元に届く前に魔獣にリヤカーを襲われそうで、少し悩む所だけど、どうか、私の手紙と共に君の元へ届きます様に』
うわぁぁ~!!
すいませんっ!! 私が盗みましたっ!!
紳士さん、『まだ見ぬ君』さん、ごめんなさい!!
私、もしや恋の応援どころか、二人の邪魔をしたのでは!?
再びテーブルに突っ伏して「うわぁぁ~」と、頭を抱える。
でもね、私がこのリヤカーを持って行かなかったら、熊に壊されてたので、許してください!!
手紙もちゃんと元に戻して紳士さんの気持ちのこもったラブレターは私が『まだ見ぬ君』さんへ届けるので、安心して下さい!!
「ゲーキョ?」
「ゲッちゃん……、私は春先に、馬に蹴られて死んじゃうかもしれないよ」
「ゲキョ―?」
「恋人達の邪魔をする悪い子は、馬に蹴られて死んじゃうんだよ……でも、ここまで想われてるなんて凄いよね。『まだ見ぬ君』さんには、紳士さんの気持ちが届かないのが歯痒いよねぇ」
紳士さんは長期遠征先で、また手紙を書くのかな?
何とか私が『まだ見ぬ君』さんを見つけ出して、手紙を渡して紳士さんが春先に来る時に会わせてあげたいな。
素敵な出会いをさせてあげたい。
でも、大人の恋を子供が応援って……余計なお世話だよね。まさに馬に蹴られる事案かも?
はぁー……と、溜め息交じりに息を吐き、手紙をたたんで封筒の中に戻す。
「あっ!!」
今更だけど……手紙に私の手の平の血が少し滲んで付いていた。
やってしまったー!! 人様の大事な手紙に……一生の不覚……
手の平の火傷が薄皮が剥がれて血というか透明の液みたいのが滲み出てた。
「この家、包帯とか無いんだよね……」
紳士さんが入れてくれていた布を細くハサミで切って包帯を作ろうかな?
これ以上『まだ見ぬ君』さんの物資を横取りするのは、人としてどうなんだ!? と、言われそうだけど、何度も言い訳がましく言うけど、熊に横取りされそうになっていた時点で、この世にこの荷物は無かった物とする!!
うん。熊に荒らされるより、私が大事に使わせて貰って、いつか恩返しできる様な事があれば、させてもらうという事にしておこう。
それが世の為人の為、私の為……一応、返せる物は返すつもりだしね。
布を一枚取り出して広げると、それなりに広い……もしかして、この世界って服とかも自分で手縫いとかで、この布も服を作る用なのかも? 結構、肌触りの良い布地をしてるから無きにしも非ずかな?
両手に巻き付けられる長さにハサミで切り取って、くるくると自分の手の平に巻きつける。
実はハサミとか持つのもジクジク痛かったから、これで一安心だ。
「あっ、そういえば……土地の名前で地図とかに夢中になってたけど、魔法とか書いてなかったっけ?」
ガラスの瓶には保存魔法が掛けてある……と、確かに書いてある。
つまり、私が食い散らかして空にしたココに初めから置いてあったガラス瓶とかも保存魔法が掛けられていたのかも?
「うーん。体がギシギシだけど、実験してみたいよね」
果物を空になった瓶に入れて保存魔法と言うのがあるのなら、冬の間も瓶に入れさえすれば、私の下手な料理で素材を駄目にしたり、『まだ見ぬ君』さんへの食べ物をこれ以上減らさなくていいかもしれない。
「ゲッちゃん、果物がこの近くになってるところある?」
「ゲキョゲキョ」
まだロボット並みの動きだけど、ナイフとリュックサックを持ってゲッちゃんと小屋の外に出た。まだ陽が高いから動くなら今のうちだ。
夏が終わり、秋になるのだろう。陽が落ちるのが少し早くなってきた気がするからね。
紳士さんの手紙で秋から長期遠征というなら、多分、もう秋なのだろう。
ゲッちゃんの先導で、小屋から近い場所の果物をナイフで枝から切り取って、ギコギコと足をロボットのように動かしながら小屋に直ぐ戻った。
採った果物はオレンジ色の卵型をした果物で、薄い皮を剥ぐと甘い香りがして、少しだけ齧ると、桃とマンゴーを合わせた様な味がした。
少し硬いけど、食べれなくはない。
瓶に果物を切って入れて、実験開始である。
一応、ガラス瓶に入れた物と、お皿に外に出した物を用意して食べれる腐敗具合を見れる用も用意した。
私も少しは考える子なのである。
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