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1章
手紙
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料理の失敗のあとは、火傷した手の平がじくじく痛み、涙目で手を水に浸けていた。
重いし、持ち手は鉄だし、大変不便この上ないフライパン。
手が治ったら持ち手に布を巻くかミトンでも作ろう思う。
この間、生理用品を大量に作った時に針仕事で指先が痛くて「もぉーやらない!」と、思ったけど、必要な物を手に入れるには、やらないなんて言っていられない。
持ち手を何とかして、絶対にステーキを食べてやる~っ!!
今回の私の教訓は、フライパンで物を焼く時は、先に油を入れておくこと。
塩コショウは少量でいいこと。
この二つだろうか? あと料理本に肉の下味は先にする事と書いてあったから、一番初めにお肉に塩コショウをすこーしだけパラパラしてから、調理開始することを学んだ。
「うう……手が痛いよー……」
今日は筋肉痛だし、手の平もこんな風だから、薪を作るのは明日に後回しだ。
せめて荷物の中に救急箱みたいなのがあれば良かったのに……
私の荷物じゃないけど、貰ってしまったからには私の物……で、良いかなぁ? これに関してはまだ泥棒をしてしまった事を悩んでいる。
『まだ見ぬ君』さん宛ての手紙も一通しか開けてない。
見ちゃおうかなー……と、少し思ってしまったりしている。
だってね、内容が凄く気になる。
もしかすると、ここの状況みたいなのが分かるかな? とか、思っているのと、なんとなく『まだ見ぬ君』って、会っても無い人に、こんな風に贈り物をしたりする人物に興味がある。
あと、封蝋とケープの刺繍のシンボルマークを見て狼好きな人なのかな? と、動物が好きな人に悪い人は居ないはず! だと、思う!
今日はどうせ身動き取れないし、本を読むくらいしかやること無いし……
手紙、読んじゃおうかな……?
チラッと片目で手紙の束を見て、蛇口を閉めて手をタオルで拭くとソロソロと手紙に手を伸ばす。
一番上の手紙を手に取って、誰も居ないけど、キョロキョロと顔を左右に振った後で椅子に座って手紙を開く。
出だしはやはり『まだ見ぬ君へ』から始まっていた。
『まだ見ぬ君へ。
君を強く感じたのは、初夏の頃。
私は誰かに、こんなに強く惹かれた想いを生まれて初めて知ったよ。
友人に相談したら、君に逢えない時間は手紙を君に書く事を薦められたんだ。
どんな事を書けば良いのか、個人的な手紙なんて書いた事が無いから、気の利いた事が書けない自分が少し恨めしいよ。
こんな時、自分の想いを詩に出来る才能があればと思う。
君はどんな女性なのだろうと、想像ばかりが膨らんでいく。
いつか、君に逢えたら、素直な言葉が出てくるか不安になるけれど、君を好きだという想いは確かだよ。
君に早く逢いたいな』
何処かですれ違って出逢ったという人で探し続けているみたいな、そんな事なのかな?
もし出逢っても居ないのに、ここまで熱烈に想われるとしたら、凄いよねぇ。
手紙を両手で持ってテーブルに突っ伏して、恥ずかしさに足をジタバタさせてしまう。
十三歳の初恋もまだな私には、こうしたラブレターの大人版は刺激が強すぎる~っ!!
ヤバい~っ! 私の中に、この手紙の主が格好いい紳士として想像が出てしまう。
絶対、紳士で優しい系だと思うの!
「うきゃ~! この恋を応援したい~っ!!」
バタバタと足をバタつかせて、テーブルで悶える私をゲッちゃんが「何だコイツ?」という目で見ながら、私の頭に足をペシッと乗せてくる。
娯楽の無い生活なんだから、少しぐらい年頃の女子らしく恋話で悶えたいんだよ~っ!
「でも、初夏の頃って、丁度私もここに来たくらいだよね……実は、『まだ見ぬ君』って、私だったりして」
いやぁ~それは無いか。
うん。私は、わけ分からないけどココに来てしまったのは間違いか何かで、勇者でも何でもないしなぁ……
もし、勇者とかなら、今頃お迎えが来てお城とかに居るはずだし、マンガとかなら滅茶苦茶チヤホヤされて有頂天の天狗になってる頃だよ。
こんな所で、毎日食事の心配をして、生きていくことに必死になってる事なんて、有り得ない。
それに、私にはまだ恋とかわかんないしなー……
何より似合わないんだよね。ガサツなお調子者の私に恋愛って。
小学校の頃、クリスマス前に下駄箱にラブレターが入ってて、ドキドキしながら手紙に書いてある指定場所に行ったら、男子に「本当に来たのかよ! 男女に似合わねぇのに調子に乗んなよ」って言われて、私は「いや~、一応呼び出しが何なのかとか、気になるじゃん?」と、何でもない風に装って笑ってそう言った。
でも、心の中は恥ずかしさと泣きたい気持ちで一杯だった。
それ以来、私はお調子者のキャラで自分を守って、誰かに恋とかしたことも無いし、揶揄われるのも怖いから、女の子っぽい物も極力避けていた。
でも、恋に憧れない訳じゃないし、恋愛マンガとかサバちゃんに借りて読んだりしてた。
あっ、サバちゃんに借りたマンガ返してない……
お母さんがサバちゃんに返しておいてくれたら良いんだけど……
こういう手紙を貰えるような女の子に、私もなりたかったな。
いつか私も大人になれば恋人とか出来るかな?
重いし、持ち手は鉄だし、大変不便この上ないフライパン。
手が治ったら持ち手に布を巻くかミトンでも作ろう思う。
この間、生理用品を大量に作った時に針仕事で指先が痛くて「もぉーやらない!」と、思ったけど、必要な物を手に入れるには、やらないなんて言っていられない。
持ち手を何とかして、絶対にステーキを食べてやる~っ!!
今回の私の教訓は、フライパンで物を焼く時は、先に油を入れておくこと。
塩コショウは少量でいいこと。
この二つだろうか? あと料理本に肉の下味は先にする事と書いてあったから、一番初めにお肉に塩コショウをすこーしだけパラパラしてから、調理開始することを学んだ。
「うう……手が痛いよー……」
今日は筋肉痛だし、手の平もこんな風だから、薪を作るのは明日に後回しだ。
せめて荷物の中に救急箱みたいなのがあれば良かったのに……
私の荷物じゃないけど、貰ってしまったからには私の物……で、良いかなぁ? これに関してはまだ泥棒をしてしまった事を悩んでいる。
『まだ見ぬ君』さん宛ての手紙も一通しか開けてない。
見ちゃおうかなー……と、少し思ってしまったりしている。
だってね、内容が凄く気になる。
もしかすると、ここの状況みたいなのが分かるかな? とか、思っているのと、なんとなく『まだ見ぬ君』って、会っても無い人に、こんな風に贈り物をしたりする人物に興味がある。
あと、封蝋とケープの刺繍のシンボルマークを見て狼好きな人なのかな? と、動物が好きな人に悪い人は居ないはず! だと、思う!
今日はどうせ身動き取れないし、本を読むくらいしかやること無いし……
手紙、読んじゃおうかな……?
チラッと片目で手紙の束を見て、蛇口を閉めて手をタオルで拭くとソロソロと手紙に手を伸ばす。
一番上の手紙を手に取って、誰も居ないけど、キョロキョロと顔を左右に振った後で椅子に座って手紙を開く。
出だしはやはり『まだ見ぬ君へ』から始まっていた。
『まだ見ぬ君へ。
君を強く感じたのは、初夏の頃。
私は誰かに、こんなに強く惹かれた想いを生まれて初めて知ったよ。
友人に相談したら、君に逢えない時間は手紙を君に書く事を薦められたんだ。
どんな事を書けば良いのか、個人的な手紙なんて書いた事が無いから、気の利いた事が書けない自分が少し恨めしいよ。
こんな時、自分の想いを詩に出来る才能があればと思う。
君はどんな女性なのだろうと、想像ばかりが膨らんでいく。
いつか、君に逢えたら、素直な言葉が出てくるか不安になるけれど、君を好きだという想いは確かだよ。
君に早く逢いたいな』
何処かですれ違って出逢ったという人で探し続けているみたいな、そんな事なのかな?
もし出逢っても居ないのに、ここまで熱烈に想われるとしたら、凄いよねぇ。
手紙を両手で持ってテーブルに突っ伏して、恥ずかしさに足をジタバタさせてしまう。
十三歳の初恋もまだな私には、こうしたラブレターの大人版は刺激が強すぎる~っ!!
ヤバい~っ! 私の中に、この手紙の主が格好いい紳士として想像が出てしまう。
絶対、紳士で優しい系だと思うの!
「うきゃ~! この恋を応援したい~っ!!」
バタバタと足をバタつかせて、テーブルで悶える私をゲッちゃんが「何だコイツ?」という目で見ながら、私の頭に足をペシッと乗せてくる。
娯楽の無い生活なんだから、少しぐらい年頃の女子らしく恋話で悶えたいんだよ~っ!
「でも、初夏の頃って、丁度私もここに来たくらいだよね……実は、『まだ見ぬ君』って、私だったりして」
いやぁ~それは無いか。
うん。私は、わけ分からないけどココに来てしまったのは間違いか何かで、勇者でも何でもないしなぁ……
もし、勇者とかなら、今頃お迎えが来てお城とかに居るはずだし、マンガとかなら滅茶苦茶チヤホヤされて有頂天の天狗になってる頃だよ。
こんな所で、毎日食事の心配をして、生きていくことに必死になってる事なんて、有り得ない。
それに、私にはまだ恋とかわかんないしなー……
何より似合わないんだよね。ガサツなお調子者の私に恋愛って。
小学校の頃、クリスマス前に下駄箱にラブレターが入ってて、ドキドキしながら手紙に書いてある指定場所に行ったら、男子に「本当に来たのかよ! 男女に似合わねぇのに調子に乗んなよ」って言われて、私は「いや~、一応呼び出しが何なのかとか、気になるじゃん?」と、何でもない風に装って笑ってそう言った。
でも、心の中は恥ずかしさと泣きたい気持ちで一杯だった。
それ以来、私はお調子者のキャラで自分を守って、誰かに恋とかしたことも無いし、揶揄われるのも怖いから、女の子っぽい物も極力避けていた。
でも、恋に憧れない訳じゃないし、恋愛マンガとかサバちゃんに借りて読んだりしてた。
あっ、サバちゃんに借りたマンガ返してない……
お母さんがサバちゃんに返しておいてくれたら良いんだけど……
こういう手紙を貰えるような女の子に、私もなりたかったな。
いつか私も大人になれば恋人とか出来るかな?
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