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1章 

助けが来ない

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 朝起きたらドアがノックされて助けが来る__そんな夢を何度か見て、飛び起きては外に出る。
外は変らずで助けは無く、誰もドアの前になど立って居なかった。
この小屋に留まって、一週間が過ぎていた。

 何度か山頂を目指そうと、リュックサックに食べ物の瓶を詰めたり、水を入れて小屋を出たのに、どこにも山頂のような物は見つからなかった。

 地図が一杯あった部屋に入って、そこで初めて私は本当にここは日本なのか? と、疑問に思うようになった。
文字が英語の様で英語では無い。
なのに、私の眼には日本語表記で映るのだ。
こんなのおかしい。だって、私の頭がおかしくなったか、この地図自体に仕掛けがあるとしか思えない。

 あと、模造品の玩具だと思っていた剣は普通に物が斬れた。
凄く重たい上に、スコンと落として、危うく私の足の指がバイバイする所だった。

 お風呂に入るには、小屋の外にあるお風呂の真下の小さなポスト位の大きさの、扉の中に薪を入れて火を入れないとお湯にならないみたいだ。
まだ入ったことは無いけど、このまま助けが来なかったらいつかは入るかもしれない。
むしろ、今すぐにでも入りたい!
でも、薪割りなんてしたことが無いから、そこら辺で木を拾ってきて入れ込んだものの、直ぐに火は消えるし、生温ーくて水に近いお風呂にしかならなかった。

 あと、食料が段々と減ってきている。
私が食べているからだけど、少しずつ食べているのに、ジャムやコンポートは底を付きそうだ。
他は何だか、オリーブオイルとハーブが入ったチーズみたいなのとか、魚とかが入っていて、流石にこれを口にするのは勇気が無い。
チーズは発酵食品だから匂いを嗅いでも、腐ってるのかどうかもわからない。
魚に至っては、ガラスの外側から見るだけでも生っぽい! はい、無理!!

 温かいご飯が食べたいのに、釜戸に火を入れても食べれる物が無い。
瓶の中身は果物とかチーズばかりで、温めてもどうしようもないし、お母さんの手伝いで私が作るものと言えば、サラダをかき混ぜたり、スープを温め直したりするぐらいで、本格的な物なんて何一つ作れない。

「お母さんのご飯が食べたい……」

 私の中を占めている物は、食べ物のことばかりで、助かったらアレ食べたい、コレ食べたい。そんな事ばかりだった。
夢に見るのもそんな物ばかり。

 もう助けがきても良い日数なのに、代わり映えの無い小屋の周りだった。
居るのはいつもの可愛くない鳴き声の鳥だけ。

 日中は小屋の外でヘリコプターでも飛んでいないかと、小屋の中にあった揺り椅子を外に出して、その上に座りながら空を眺める。
そんな日々が続いていた。
ヘリコプターは飛んで無いし、飛行機すらも飛んでいない。

 どうしても不安で、なにか無いかと小屋から出る時は、小屋の机の上にメモ用紙に『鴨根 李都 美空中学二年一組 少し外に出ています。直ぐに戻ります』と書置きをしておく。

そして、小屋にあった杖とナイフを持って出ていく。道に迷わないように杖を地面に引きずって、帰りはその地面の跡を道しるべに帰っていく。

 小屋から離れたら、また遭難してジャングルを迷って歩くのは怖い。
せめて寝床だけは失いたくない私の必死さだった。




 小屋にナイフで小さく付けた一日ごとに付けるキズが一ヶ月になった。
もうこの小屋に助けは来ない。
そして、私はなんとなく、ここは日本じゃないと思い始めていた。
自分を誤魔化しても仕方がないぐらいに、ジャングルで遭遇する小動物はカラフルな色をし過ぎているし、生えている草木も日本で見たこと無い物ばかりだ。
黄緑色のリスとか、薄紫色のウサギの頭に悪魔の様な二本の丸い角が生えていたり、植物もガラスの様な透明な物とかがあって、触るとリィンと綺麗な音がしたりする。

 私、もしかして、考えたくないけど、ファンタジーな世界に来たのではないだろうか?
中学二年生で、中二病というやつを発症しちゃったかな? と、少し渇いた笑いを漏らした私だったりした。
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