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1章 

山小屋

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 泣くだけ泣いた私は、歩いている先で小屋を見付けた。
もしかして、これがキャンプのしおりに書いてあった山小屋だろうか?

 木で作られた家の周りにはティッシュの箱くらいの大きさの石が積み重なって塀の様に囲ってある。
外には焼却炉なのかレンガで作ってあるドーム型の物があって、煙突の様な物も付いている。

門は鉄で出来ているみたいで、かなり錆び付いているのか「ふんぬっ!」と掛け声を上げて力一杯引いて、ようやく開く事が出来た。

 コンコンッとノックをしても誰かが返事をする事はなく、ドアを開けようとして、ドアノブの類が無い事に気付く。
まさかの引き戸なのか!? と、思ったけど、手で押すとキィッと小さく音を立てて小屋のドアは開いた。
山の中とはいえ不用心な……

 小屋の中はほぼ木造りで、台所は大きな石を真っ直ぐに切り取って作った感じのまな板と一体型をしていて、コンロは昔話のアニメで出てきそうなかまどだった。

上に鍋があって、下に木を入れて火を入れるタイプの古めかしいやつだ。
現代っ子の私にはこれを使いこなすのは無理だろうなぁ。

 あとは木のテーブルに木の椅子が四つ。
暖炉があって、その手前には揺り椅子が一つあった。
奥にはベッドと本棚にクローゼットがある部屋、それとお風呂場にトイレがあった。
トイレは洋式で、お風呂場は石を重ね合わせて作ったような露天風呂みたいな浴槽に金の鹿の蛇口があった。
ライオンの蛇口とかは分かるけど、鹿……なんで鹿なのやら?

 他の部屋は地図みたいな物が山積みしてあり、ファンタジーでも好きだったのか空想上の生き物の絵が描かれている地図が壁に飾ってあったりした。
絵からして、ドラゴンとかグリフォンとかの類だと思う。
あとは模造品の剣とか弓とか杖なんかがあったから、相当のファンタジー大好き人間が管理している山小屋かもしれない。

「確かに、この小屋にしろ、周りのジャングルにしろファンタジーが満喫できそうだよね」

 ハッ! そうだ。電話! 山小屋なら電話があるはずだ!

ふっと我に返って、私は小屋探索をしている場合では無いと気付く。
電話を探して小屋の中を家探しした物の、それらしきものは無く、あったのは貯蔵庫の様な場所に、大量に置かれたガラス瓶に詰められたジャムとか、何かの果物を漬け込んだ物に小麦粉の袋とかだ。
製造年月日が無いけど、大丈夫なんだろうか?
ホコリも積もっていないし、見た目は凄く新しそうでもあるけど……

 この小屋に入って直ぐに「あっ、ここ最近まで誰か居たのかな?」という様な清潔さがあった。
外の門は錆び付きまくってたけど、小屋の中だけは綺麗だったのだ。

「水出るかなー?」

 自分のリックサックからコップを出して、台所の鹿の蛇口をひねると、綺麗な水が流れた。
コップに水を入れて舌で少し舐めてみる。
錆び付いた味もしないし、半分程飲んでみた。 

「大丈夫……かな?」

 暫くしても、お腹も痛くならないので私は水を二杯飲み干して「プハーッ! 生き返ったー!」と言った途端、お腹がぐうぅぅ~っと鳴った。

 ジャムの瓶やよくわからない果物の瓶をテーブルに並べて、お皿の上にスプーンで少しずつ入れていく。
もし小屋の人が戻って来ても怒られない程度に、ちょっとずつ貰っていく私のセコいことこの上ないけど、助かったら、うちの両親が弁償するので、申し訳ないけど頂いてしまおう。

「いただきまーす!」 

 ジャムはアプリコットみたいな味がした。
他の果物はコンポートだった様で、ツルンとした舌触りとサッパリした甘さで桃をリンゴみたいな硬さにした感じだろうか?
これはパイとかパンとか欲しいところだ。
アイス! これはアイスに乗せたら絶対美味しいやつだ!

「そういえば、冷蔵庫にバニラアイス入れてたんだよね……このままだとお父さんのお風呂上りに食べられちゃうかも?」

 私、今日はこの小屋で一晩過ごしそうだ。
でも、山小屋に居れば山岳救助隊とかが見つけ出してくれるだろう。
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