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1章 

遭難注意事項

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 日本には無さそうな木々の中を歩き回って、足は痛いしお腹は空くし、誰も居ないしで、私はムスッとしていた。
お腹が空くとイライラするとはよく言ったもので、何で私がここに居るのか? とか、色々思ってしまう。

 責任者出てこーい!

 いや、多分、草刈りに夢中になって山の中を刈り進んで、キャンプ場から離れた私が悪いのだろうけど、でも、そこまで夢中というか……草刈りぐらいで、人っ子一人見当たらない場所に来ちゃうなんておかしくなーい?

 こんな事を何度も自問自答して……でも答えが見つかるはずもなく、私はひたすらムスッと頬を膨らませて口を尖らせていた。

「もうヤダ……帰りたい……」

 ぐぅぅ~と、鳴り響くお腹の虫。
お腹が空いた。でも、私のリュックサックの中にあるのは、キャンプに泊まる為の着替えの下着とTシャツが二組にタオルが二枚。
後は家の鍵と、学校のキャンプのしおりにメモ帳とボールペン。
食べ物なんて持って来てない。
食い意地の張った私は、バスの中で友人のサバちゃんやクラスの子と一緒に、お菓子を食べてしまっていた。

 キャンプ場で作るカレーは、私が持ってくるように言われたのはジャガイモ5個。
もう班の子に渡してしまったからジャガイモは無い。あったとしても、生じゃ食べれない。

 ゲーキョゲーキョ……

 さっきから私の上で変な声で鳴いている鳥がいる。くちばしはオレンジと赤に、体は真っ青なスカイブルーに白い線の入った奇妙なオウムに似た鳥で、何故か知らないけど、私の後を付いて回る様に飛んでくる。

「もぉー! うるさい! ゲキョゲキョ何なのよっ!?」

 絶賛腹減りムスくれ中の私は鳥に向かって騒ぎ立てる。
ゲキョキョキョキョと、まるで私を笑うように鳥が鳴き、小馬鹿にされている気分だ。

 ただ、この鳥を見て思ったのは、こんな鳥は日本に居るかな? ということ。
どう見ても日本産ではなく外国産の鳥だと思う。
どこかで飼われていた鳥が逃げ出して、こんな所に住み着いてしまった感じかもしれない。
飼われていた鳥だから、人間が恋しくて私の所についてきてしまっているんだろうか? そう思えば、この鳥も可哀想というか健気に見えなくもない。
鳴き声だけは小馬鹿にしている感が否めないけど。

「お腹、すいた……」

 ぐうぅぅぅ~。
お腹の虫が私に何か食べさせろと大合唱中で、ガクリと首を落とす。

 キャンプのしおりに地図でも無いものかと読んでみたら、山で遭難した場合の注意事項があった。
おお、天の助け!

1、遭難した場合はむやみに動かないこと。

2、元来た道を戻ること、周りをよく見ましょう。

3、沢などを見付けても、決して下らないこと(川下に出れるかもと思っても滝等に行きつき転落の可能性があります)

4、頂上を目指しましょう。(山小屋などがある場合や、空から探しやすい為です)


 駄目だ……既に1と2は破っている。

動き回った後だし、引き返すにしても何処歩いたかなんて分かんないよ!?
沢……川とか下っていけば下りられるかもとか思ってたよ。
山登りしないと駄目なの? お腹空いてるのに、体力限界だし酷くない?
でも、もし今日中に助けが来なかったら、こんなジャングルで一晩過ごすなんて冗談じゃない!

 のろのろと歩きながら私は、上に行くべく歩き始める。
ゲキョキョと可愛くない声を出す鳥をお供に……

 そのうち猿と犬も出てくるかもしれない。
まぁ、きび団子なんて無いけどさ。
あったら私が全部ひとり占めして食べちゃってるに違いない。
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