【完結】あの人が欲しい

赤牙

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エンジュの過去 ⑥

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それから、計画を実行するにあたり準備を進めていく。
ダンテさんと過ごす事になる屋敷は、デリナム卿が準備してくれた。王都から少し離れた場所にポツンと立つ古い屋敷はデリナム卿から金を借り返済できなくなった貴族が所有していたものだ。
人目がつきにくい場所なのもいいが、その屋敷には監禁する為の部屋までが備わっていた。

何故そんな部屋があるのかデリナム卿に聞けば、「聞いても気持ちのいい話ではない……。まぁ、お前さんのように歪んだ心を持っていた人物がいたというだけだ」と、言われた。

まぁ……気持ちも分からなくはないが、僕は自分も一緒に監禁されるのだから一緒にはされたくないな……。

そう思いながら着々と準備は進み、デリナム卿には攫われた僕達を買い取った貴族役を、アダンには僕達を躾ける調教人役を任せた。
デリナム卿は前向きな発言が見られたが、アダンは内容を聞くと顔を青くしすぐに拒否してくる。

「エンジュ様! わたくしがエンジュ様の主人となり、エンジュ様を奴隷として扱うのですか……?」
「あぁ、そうだよ。アダンだってバレないように顔はしっかりと隠しておくんだ。それに、匂いも分からないように匂いの強い香水を使うんだぞ」
「ちょ、ちょっとお待ちください! 私には無理です! 流れによるとエンジュ様に電流を流さないといけないんですよね!? それはいくら命令されても出来かねます!」

半ベソ顔のアダンは無理だ無理だと喚く。
小さくため息をつきながら、僕はアダンの手をそっと取る。

「なぁ、アダン。これはアダンにしか出来ない事なんだ。僕が一番の信頼を置くアダンだからこそ任せられるんだよ? だから……お願いだ。僕の願いを一緒に叶えてくれないか?」

アダンに強請り込めば何か言いたげだが断ることも出来ずに「分かりました……」と、了承してくれる。


こうして……ダンテさんを監禁する一ヶ月前……。
ダンテさんの誘拐はアダンに任せ、僕は薄暗い監禁部屋に入り、大きく深呼吸すれば少しカビ臭い香りで胸がいっぱいになる。

ここでダンテさんと一緒に過ごすのか……。

僕はダンテさんと過ごす日々を妄想しながら長い長い一ヶ月を過ごし……ついにダンテさんがこの屋敷へやってくる当日を迎えた。
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