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エンジュの過去 ①
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僕とダンテさんの出会いは10年前に遡る。
父さんに連れられて獣人の領地へとやってきた僕は帰り道の護衛についたダンテさんと出会う。
灰色の綺麗な毛並みに琥珀色の瞳はキラキラと輝いて見えた。僕の身長よりも何倍も大きくて屈強な体格に名前を伝える事も忘れて見惚れてしまう。
「……凄くカッコいい」
僕がポツリと呟いた言葉にダンテさんは小さく笑みを溢す。
一目惚れだった。
帰りの馬車でダンテさんの隣に座り見つめていたら、あっという間に時間が過ぎていく。
凛とした横顔に胸はドキドキしっぱなしで、話しかけても嫌な顔もせずに対応してくれる優しいダンテさんに僕の心は鷲掴みされていた。
もっとダンテさんを見ていたい。
もっとダンテさんの事を知りたい。
もっとダンテさんと一緒にいたい。
そんな事ばかり考えていると、獣人の領地を抜ける手前で父さんが連れてきた騎士がダンテさんに僕の護衛を変わると声をかけてくる。
ずっと僕の相手をしているのも疲れるだろうからと、余計な事を言いながら僕とダンテさんの大切な時間を邪魔する騎士団の男に少し腹が立った。
「エンジュ坊ちゃん。獣人なんかと仲良くなっちゃダメですよ。あいつらは野蛮な生き物なんですから」
僕の隣にくるなりそんな事を言い放つ男……。
父さんと似たような言葉をかけてくる所をみると、獣人との交流をよく思っていないのだろう。
父さんは獣人を人間よりも知能の低い格下の野蛮な存在だといつも言っていた。そんな父さんが珍しく獣人主催の晩餐会に参加すると言った時には驚いた。
僕も連れて行くと言い出した時は、父さんの意図する事がよく分からなかった……。
獣人の領地を抜ける前に休憩をしようと騎士団の男が提案し、馬車が停車する。まだ道のりは長いので、今の間に用を足しておいて下さいと男から言われる。
普通なら護衛もついてくるのだが、男はついてくる素振りも見せずにいた。
嫌味なやつだしあまり関わりたくもなかったので、まぁいいかと思い馬車から離れ木陰で用を足していると、ガサリと後ろの茂みが揺れる音が聞こえ……目の前が真っ暗になる。
顔から何かを被せられ、手で口を押さえられ声もでない。
ジタバタと必死に抵抗し暴れるが、小さな僕の体は完全に抑え込まれそのまま何処かへ連れ去られた……。
目的地に着いたのか、抱えていた僕を乱雑に床へ下ろすと顔に被されていた物が外される。そこに立っていたのは二人の獣人……。
「だ、誰……? 僕をどうするの……?」
「あ~安心していいぞ。お前は暫く縛られておけばいいだけだからな」
「えっ……?」
「おい。余計な事を言うな。さっさと縛り上げて撤収するぞ」
「へ~い」
獣人達はそう言って僕を縛り猿轡まで噛ませると部屋を出て行く。
意味が分からず、縛られ置き去りにされた状況に徐々に恐怖心が強くなっていく。縄を解こうと必死に手足を動かすが肌に縄が食い込み逆効果だった。
心の中では必死にダンテさんの名前を呼び助けを求める。
ダンテさん……ダンテさん……助けてダンテさん……!
父さんに連れられて獣人の領地へとやってきた僕は帰り道の護衛についたダンテさんと出会う。
灰色の綺麗な毛並みに琥珀色の瞳はキラキラと輝いて見えた。僕の身長よりも何倍も大きくて屈強な体格に名前を伝える事も忘れて見惚れてしまう。
「……凄くカッコいい」
僕がポツリと呟いた言葉にダンテさんは小さく笑みを溢す。
一目惚れだった。
帰りの馬車でダンテさんの隣に座り見つめていたら、あっという間に時間が過ぎていく。
凛とした横顔に胸はドキドキしっぱなしで、話しかけても嫌な顔もせずに対応してくれる優しいダンテさんに僕の心は鷲掴みされていた。
もっとダンテさんを見ていたい。
もっとダンテさんの事を知りたい。
もっとダンテさんと一緒にいたい。
そんな事ばかり考えていると、獣人の領地を抜ける手前で父さんが連れてきた騎士がダンテさんに僕の護衛を変わると声をかけてくる。
ずっと僕の相手をしているのも疲れるだろうからと、余計な事を言いながら僕とダンテさんの大切な時間を邪魔する騎士団の男に少し腹が立った。
「エンジュ坊ちゃん。獣人なんかと仲良くなっちゃダメですよ。あいつらは野蛮な生き物なんですから」
僕の隣にくるなりそんな事を言い放つ男……。
父さんと似たような言葉をかけてくる所をみると、獣人との交流をよく思っていないのだろう。
父さんは獣人を人間よりも知能の低い格下の野蛮な存在だといつも言っていた。そんな父さんが珍しく獣人主催の晩餐会に参加すると言った時には驚いた。
僕も連れて行くと言い出した時は、父さんの意図する事がよく分からなかった……。
獣人の領地を抜ける前に休憩をしようと騎士団の男が提案し、馬車が停車する。まだ道のりは長いので、今の間に用を足しておいて下さいと男から言われる。
普通なら護衛もついてくるのだが、男はついてくる素振りも見せずにいた。
嫌味なやつだしあまり関わりたくもなかったので、まぁいいかと思い馬車から離れ木陰で用を足していると、ガサリと後ろの茂みが揺れる音が聞こえ……目の前が真っ暗になる。
顔から何かを被せられ、手で口を押さえられ声もでない。
ジタバタと必死に抵抗し暴れるが、小さな僕の体は完全に抑え込まれそのまま何処かへ連れ去られた……。
目的地に着いたのか、抱えていた僕を乱雑に床へ下ろすと顔に被されていた物が外される。そこに立っていたのは二人の獣人……。
「だ、誰……? 僕をどうするの……?」
「あ~安心していいぞ。お前は暫く縛られておけばいいだけだからな」
「えっ……?」
「おい。余計な事を言うな。さっさと縛り上げて撤収するぞ」
「へ~い」
獣人達はそう言って僕を縛り猿轡まで噛ませると部屋を出て行く。
意味が分からず、縛られ置き去りにされた状況に徐々に恐怖心が強くなっていく。縄を解こうと必死に手足を動かすが肌に縄が食い込み逆効果だった。
心の中では必死にダンテさんの名前を呼び助けを求める。
ダンテさん……ダンテさん……助けてダンテさん……!
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