20 / 22
二人の結末 ①
しおりを挟む
俺達が監禁されてから早いもので5年が経つ。
今の俺達がどうなっているかと言うと……俺は今まで着たことのない上等な服を着せられ、だだっ広い豪勢な部屋の中で一人ポツンと座っている。
しばらくすると、隣の部屋の扉が開きエンジュが出てくる。
「やっと交渉が終わりました。帰りましょうダンテさん」
俺の姿を見るなりエンジュは駆け寄ってきて、俺の腕を抱き締めるように絡ませてくる。
「あぁ……。お疲れ様、エンジュ」
エンジュに労いの言葉をかければ、嬉しそうに目を細めて眩しい笑顔を俺に向けてくれる。
5年の月日を経たエンジュは可愛らしいのは相変わらずだが、成長しそれに加えて色気も纏い始めている。
女性だけならず男性をも虜にしてしまう美貌に、エンジュが夜会などに行けばすぐに人だかりができてしまう程だ……。
「ダンテさん……。僕、明日は休みなんです……。今日は抱いてくれますか?」
「それは命令か?」
「ふふ。命令じゃなくてお願いですよ。だって……こんな傷物の体を見せられるのはダンテさんだけですからね……」
小さく笑みを溢しながらエンジュは首筋に残った俺の噛み跡を見せてくる。
それを見せられては俺は何も言えやしない……。
「分かったよ……」
「ふふ。やったぁ~」
無邪気な笑顔で俺に抱きついてくるエンジュ……。
監禁され狂った老人の前でエンジュを抱いた日から俺の人生は更におかしくなった。
あの老人の家で一年近く過ごし、俺達は何度も何度も体を重ねた。
薬で無理矢理発情させられた時もあったが、回数を重ねれば薬を使わずとも俺はエンジュの体を抱く事ができた……。
最後の方に至っては、老人がいなくても二人で体を重ねてしまった時もあった程だ……。
そんな狂った生活が終わりを迎えたのは老人が死んだ時だった。
だが、それは始まりでもあった……。
老人の死とともに助けがやってきたのだ。
訳もわからず俺達は保護されて……行き着いた先はどデカいお屋敷……。
そして、そこでエンジュの正体が明かされる。
エンジュの正体は……俺が失態をおかした事件の被害者で公爵家の跡取り息子だった。
情報が多すぎて訳が分からずにいると、エンジュの従者であるアダンがことの経緯を説明してくれた。
エンジュは実の父親により、あの老人に売られたようだ。理由は父親が事業に失敗し多額の借金を返すためだと言っていた……。
父親は誘拐されたように見せかけてエンジュを売り飛ばしたまではよかったが、結局悪事は暴かれエンジュと俺は助け出されたようだ……。
エンジュは自分が拐われた本当の理由は知らない。
まぁ……実の父親に借金の為に売られ奴隷堕ちさせられたなど知ってしまえばショックどころの話ではないよな……。
「ダンテ様。くれぐれもエンジュ様には真実を知られないようにお願いします」
「あぁ……。分かった……」
「それとですね……。ダンテ様にはしばらくの間、エンジュ様の傍にいていただきます」
「……どうしてだ?」
「エンジュ様を診察した医師によりますと、今回の事件によりエンジュ様の精神面はとても不安定となっております。それをダンテ様に支えていただきたいのです」
アダンの提案に俺は少し考える……。
俺がエンジュの傍にいる事が本当に支えになるのだろうか……?
あの老人に命令されたからといって無理矢理犯した相手だぞ……。近くにいる方がエンジュにとって負担になるんじゃないのか……?
「俺がエンジュの傍にいれば逆効果だと思うのだが……」
「そんな事はありません。一年間、貴方という支えがあったからこそ、エンジュ様は精神が壊れずに監禁生活の日々を過ごせたと言っても過言ではありません。助け出した今、エンジュ様を傷つける者はいません。しかし、医師によれば元の生活に戻っても、ふとした瞬間に監禁されていた時の記憶がフラッシュバックしてしまうそうです。その時にダンテ様という支えがなければエンジュ様は狂ってしまわれるかもしれないとの事です……。お願いします、ダンテ様……貴方にエンジュ様を守っていただきたいのです……」
俺に頭を下げてくるアダンを見つめグッと拳を握りしめる。
一度ならず二度も不幸な目にあったエンジュ……。
そして、エンジュの数奇な運命に二度も関わってしまった俺からすれば他人事には感じられない……。
一度目で『守る』と誓った約束も果たせていない今……俺が出す答えは一つだけだった……。
今の俺達がどうなっているかと言うと……俺は今まで着たことのない上等な服を着せられ、だだっ広い豪勢な部屋の中で一人ポツンと座っている。
しばらくすると、隣の部屋の扉が開きエンジュが出てくる。
「やっと交渉が終わりました。帰りましょうダンテさん」
俺の姿を見るなりエンジュは駆け寄ってきて、俺の腕を抱き締めるように絡ませてくる。
「あぁ……。お疲れ様、エンジュ」
エンジュに労いの言葉をかければ、嬉しそうに目を細めて眩しい笑顔を俺に向けてくれる。
5年の月日を経たエンジュは可愛らしいのは相変わらずだが、成長しそれに加えて色気も纏い始めている。
女性だけならず男性をも虜にしてしまう美貌に、エンジュが夜会などに行けばすぐに人だかりができてしまう程だ……。
「ダンテさん……。僕、明日は休みなんです……。今日は抱いてくれますか?」
「それは命令か?」
「ふふ。命令じゃなくてお願いですよ。だって……こんな傷物の体を見せられるのはダンテさんだけですからね……」
小さく笑みを溢しながらエンジュは首筋に残った俺の噛み跡を見せてくる。
それを見せられては俺は何も言えやしない……。
「分かったよ……」
「ふふ。やったぁ~」
無邪気な笑顔で俺に抱きついてくるエンジュ……。
監禁され狂った老人の前でエンジュを抱いた日から俺の人生は更におかしくなった。
あの老人の家で一年近く過ごし、俺達は何度も何度も体を重ねた。
薬で無理矢理発情させられた時もあったが、回数を重ねれば薬を使わずとも俺はエンジュの体を抱く事ができた……。
最後の方に至っては、老人がいなくても二人で体を重ねてしまった時もあった程だ……。
そんな狂った生活が終わりを迎えたのは老人が死んだ時だった。
だが、それは始まりでもあった……。
老人の死とともに助けがやってきたのだ。
訳もわからず俺達は保護されて……行き着いた先はどデカいお屋敷……。
そして、そこでエンジュの正体が明かされる。
エンジュの正体は……俺が失態をおかした事件の被害者で公爵家の跡取り息子だった。
情報が多すぎて訳が分からずにいると、エンジュの従者であるアダンがことの経緯を説明してくれた。
エンジュは実の父親により、あの老人に売られたようだ。理由は父親が事業に失敗し多額の借金を返すためだと言っていた……。
父親は誘拐されたように見せかけてエンジュを売り飛ばしたまではよかったが、結局悪事は暴かれエンジュと俺は助け出されたようだ……。
エンジュは自分が拐われた本当の理由は知らない。
まぁ……実の父親に借金の為に売られ奴隷堕ちさせられたなど知ってしまえばショックどころの話ではないよな……。
「ダンテ様。くれぐれもエンジュ様には真実を知られないようにお願いします」
「あぁ……。分かった……」
「それとですね……。ダンテ様にはしばらくの間、エンジュ様の傍にいていただきます」
「……どうしてだ?」
「エンジュ様を診察した医師によりますと、今回の事件によりエンジュ様の精神面はとても不安定となっております。それをダンテ様に支えていただきたいのです」
アダンの提案に俺は少し考える……。
俺がエンジュの傍にいる事が本当に支えになるのだろうか……?
あの老人に命令されたからといって無理矢理犯した相手だぞ……。近くにいる方がエンジュにとって負担になるんじゃないのか……?
「俺がエンジュの傍にいれば逆効果だと思うのだが……」
「そんな事はありません。一年間、貴方という支えがあったからこそ、エンジュ様は精神が壊れずに監禁生活の日々を過ごせたと言っても過言ではありません。助け出した今、エンジュ様を傷つける者はいません。しかし、医師によれば元の生活に戻っても、ふとした瞬間に監禁されていた時の記憶がフラッシュバックしてしまうそうです。その時にダンテ様という支えがなければエンジュ様は狂ってしまわれるかもしれないとの事です……。お願いします、ダンテ様……貴方にエンジュ様を守っていただきたいのです……」
俺に頭を下げてくるアダンを見つめグッと拳を握りしめる。
一度ならず二度も不幸な目にあったエンジュ……。
そして、エンジュの数奇な運命に二度も関わってしまった俺からすれば他人事には感じられない……。
一度目で『守る』と誓った約束も果たせていない今……俺が出す答えは一つだけだった……。
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
Original drug
佐治尚実
BL
ある薬を愛しい恋人の翔祐に服用させた医薬品会社に勤める一条は、この日を数年間も待ち望んでいた。
翔祐(しょうすけ) 一条との家に軟禁されている 平凡 一条の恋人 敬語
一条(いちじょう) 医薬品会社の執行役員
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
指先一ミリの罠
楽川楽
BL
美形×平凡。
仲良し四人組の間に突如割って入ってきた、女の子のように可愛い後輩、安田♂。
いつだって自分を優先してくれていたはずの時成は、いつからか可愛い安田にべったりになってしまった。どうすることもできずヤキモキしていた一平は、ついに時成と安田がひと気の無い場所へ消えていくのを見てしまい…!?
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
片桐くんはただの幼馴染
ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。
藤白侑希
バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。
右成夕陽
バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。
片桐秀司
バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。
佐伯浩平
こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。
周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)
ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに
ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子
天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。
可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている
天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。
水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。
イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする
好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた
自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い
そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語
花香る人
佐治尚実
BL
平凡な高校生のユイトは、なぜか美形ハイスペックの同学年のカイと親友であった。
いつも自分のことを気に掛けてくれるカイは、とても美しく優しい。
自分のような取り柄もない人間はカイに不釣り合いだ、とユイトは内心悩んでいた。
ある高校二年の冬、二人は図書館で過ごしていた。毎日カイが聞いてくる問いに、ユイトはその日初めて嘘を吐いた。
もしも親友が主人公に思いを寄せてたら
ユイト 平凡、大人しい
カイ 美形、変態、裏表激しい
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる