【完結】ヒーロー兄弟に助けられた悪役くん

本編

赤城ヒカルSide ③

それから一週間後…


今日あたり優くんが僕を拐いにくるはず。
そう思いながらルンルン気分でいつもの帰り道を歩いていく。

噴水公園横の人通りの少ない道を歩いている時に背後から人の気配を感じる。

ふふ。優くんかな…？
そう思い振り返ると見知らぬ男が腕を振り上げ僕の頭を鈍器で殴りつけた。


✳︎


…痛っ。

殴られた頭の傷が痛み目を覚ますと僕の体は宙に浮いていた。
自分の置かれている状況が分からずキョロキョロと周りを見渡し下を見ると兄さんが見えた。
そして僕の体は優くんではない敵に拘束され人質に取られているようだ…

『変身したらこいつは殺す！ぐははは！お前は今日俺に倒されるのだ！』
「チッ…」

兄さんは敵の言葉を間に受けて変身せずに戦っている。
さすがの兄さんも生身の体で巨大メカと戦うのは無理があるようだ…
めったに怪我しないのに腕から血を流している。

最近は優くんしか襲ってこなかったから油断した…。敵が攻撃する度に揺さぶられ拘束された体が軋む…
僕がいる限り兄さんはまともに攻撃できない。
早くこの拘束から抜け出さないと…。
そう思うがガッチリと巨大メカに掴まれ身動きが取れない…
そうこうしている間にも兄さんは次々と繰り出される敵からの攻撃を避けたり受け流している。

今はなんとか耐えているけど、このままじゃさすがの兄さんも…

そう思っていると敵は攻撃を避けられイラついたのか、僕を握りしめている方の腕で兄さんへ向かって攻撃をしかける。
僕がいるので避ける事をせずに攻撃を受け止め兄さんは後方に吹き飛ばされてしまう…

僕もその攻撃の衝撃を受け全身に痛みが走る

何度も何度も兄さんへ向けて攻撃を繰り出し、その度に激しい衝撃が襲い僕の意識もだんだんと遠のいていく…

あぁ…もうダメかもしれないや…

そう思った時…
小型のメカがこちらに向かって突っ込んできた。
操縦席には…僕の大切な人の姿が…

「優…くん…？」

小型メカが突っ込んだ衝撃で僕を掴んでいた巨大メカの手が緩み僕は落下する。
兄さんが落ちる僕を掴み上げ助けてくれる。


「兄さん……。ごめんなさい…」
「俺の事は気にするな。ヒカルこそ大丈夫か？」
「僕は大丈夫…。あの突っ込んできた小さなメカに優くんが…」
「なんだと！？」

僕達が巨大メカの方へ目を向けた瞬間、優くんを乗せた小型メカは投げ飛ばされガシャンッッ！！と大きな音を立てる。

「優っ！！」
「優くん！！」

急いで優くんの元へと駆け寄り、投げつけられた衝撃で変形してしまったドアを兄さんがこじ開け中にいる優くんの救出に向かう。

僕は…優くんが無事である事をただ祈るしかできなかった…。


しばらくすると兄さんが優くんを抱きかかえて出てくる…
優くんは傷つき血塗れだったが辛うじて意識はあった…

「そんな…酷い…」

体中を打ちつけ目を背けたくなるような傷…
早く治療してあげないと…

「兄さんここは僕が……」
「ヒカル…しかし……」
「あの敵は兄さんしか倒せない！早く！」
「……そうだな」

兄さんは敵なんかより優くんの事が気になっていたが、さっさとあの敵を倒してこいと言い送り出す。

兄さんから優くんを受け取ると、優くんは兄さんに向かって言葉をかける。

「負けたら承知しないぞ…赤城…」
「あぁ…分かっている…」

兄さんは優くんに名前で呼んでもらえて凄く嬉しかったのかニヤケた面で変身して剣を構え巨大メカへと立ち向かう。

「兄さんは強いからあんな奴には負けないよ」
「そんな事…俺様が一番…分かって…いる…」
「そうだね……」

あぁ…もう優くん可愛いぃぃ！！
僕はそんな事を思いながら治癒の力を全力で優くんに流し込んでいく。

傷はみるみる塞がり血も止まる。
優くんはそのまま気を失い僕の腕の中でスースーと寝息を立てる。

とりあえず優くんが無事でよかった…

そう思い兄さんの方へと目を向けると、優くんの為に改良した特製ローションソードで巨大メカを溶かしながら、じわじわといたぶっている最中だった。

……悪趣味すぎる。

兄さんの高笑いと共に倒される敵を見ながら僕はそう思った。