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白騎士イーゼル ③
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「総員、攻撃態勢をとりつつ退避の準備を……」
団員達にそう告げたと共にマンティコアは楽しそうに牙を剥き私達に襲い掛かる。
マンティコアのスピードの速さに対応できずに前衛の団員達は吹き飛ばされてしまう。
「防壁を作りマンティコアの動きを一時的にでもいい止めろ! その間に負傷者の救援を頼む! 攻撃魔法が使える者は足を狙い動きを止めるんだ!」
後衛の者達にそう指示をして私は前衛で倒れた団員達を救出に向かう。マンティコアは、後衛の攻撃魔法をくらっても平気な顔をして再度攻撃を仕掛けてくる。
「大丈夫か?」
「ぐっっ……すみません……」
団員はマンティコアの鋭い爪で腕を深く抉られ出血が止まらない……。治癒魔法をかけ止血を行い団員に肩を貸しマンティコアと距離をとる。
すでに多くの団員が傷を負い、まともに戦える人員も減りつつあった。マンティコアは、戦いを遊びのように楽しんでいるのか私達の様子を伺っている。
力の差が大きすぎる……。このままでは全滅してしまう……。
団員達を守る事もできない頼りない自分に苛立ち、拳を握りしめると私は腰に下げていたカバンから転移石を取り出す。
「皆、一箇所に集まれ! 転移石を使う!」
私の声に団員達は頷き、マンティコアの様子を伺いながら一箇所に集まる。
集団用の転移石は発動するまでに時間がかかり、それまでの時間稼ぎが必要だ。
誰かマンティコアの気を引く役目を果たさなければならない……。
団員達が転移石の発動範囲内に収まったのを確認した後、私は剣を抜きマンティコアの方へと向かう。
「ここは私が時間を稼ぐ。皆は先に戻っていてくれ」
「そんな! イーゼルさん一人で相手をするなんて無茶です」
「安心しろ。必ず戻ってくる……」
団員にそう告げ、団員達を守るように障壁を張り再度マンティコアと向き合う。
大丈夫だ……。
コイツよりも強い奴を私は知っている……。
転移石を発動させると森の中は石の光で溢れかえる。マンティコアは団員達目掛けて牙を剥くが、それを火炎球で阻止する。
「お前の相手は私だ! さぁ、かかってこい!」
邪魔された事に苛立ったマンティコアは、すぐに私に目標を変え飛び掛かってくる。重いマンティコアの一撃をなんとか受け止めるが、その瞬間に右腕に激痛が走る。腕を見ればマンティコアの尾についた棘が突き刺さっていた。
マンティコアは苦痛に歪む私の顔を見て嬉しそうに口角を上げる。
「クソッッ……」
右腕の激痛は刺さった棘の痛みだけでなく、その棘に含まれる毒がじわじわと広がっていく。皮膚を切り裂かれるような痛みに耐えながら、マンティコアの攻撃を受け流しどうにか距離を取る。
チラリと団員達の方を見れば、転移石を中心に地面には眩い魔法陣が展開され……パッと皆の姿がそこから消え去る。
無事に帰還できたか……。
団員達の無事を確認した後は、自分自身の状況を再確認するが事態は最悪だ。
徐々に右腕の感覚が麻痺し、剣を握っていられるのもあとどれくらいだろうか……。
そう考える間もなく、玩具が消えた事に腹を立てたマンティコアは気に入らないと私に襲いかかる。マンティコアの攻撃は重く、防ぐ度に骨が軋む。剣を握る右腕も限界が近づく。
一人で倒す事など不可能だが……逃げ出す隙を作らなくては……。
限界を向かえ苦痛の表情を見せる私を見て、嬉しそうに歪む醜い顔が近づく……。しかし、よく見ればその片目には誰かが刻んだ深い傷がみられ、傷跡のせいで片目は閉じたままだった。
最後の力を振り絞り、風魔法で衝撃波をマンティコアに打ち込み一瞬の隙をついて私は剣をマンティコアの傷めがけて突き立てる。
鼓膜が破れてしまいそうなくらいの悲鳴を上げマンティコアは暴れまわる。マンティコアに振り払われ、地面へと体を強く叩きつけられる。
痛みでもがいている暇などなく、朦朧とする意識の中、私は必死に這いずりながら深い森の奥へと逃げていった……。
団員達にそう告げたと共にマンティコアは楽しそうに牙を剥き私達に襲い掛かる。
マンティコアのスピードの速さに対応できずに前衛の団員達は吹き飛ばされてしまう。
「防壁を作りマンティコアの動きを一時的にでもいい止めろ! その間に負傷者の救援を頼む! 攻撃魔法が使える者は足を狙い動きを止めるんだ!」
後衛の者達にそう指示をして私は前衛で倒れた団員達を救出に向かう。マンティコアは、後衛の攻撃魔法をくらっても平気な顔をして再度攻撃を仕掛けてくる。
「大丈夫か?」
「ぐっっ……すみません……」
団員はマンティコアの鋭い爪で腕を深く抉られ出血が止まらない……。治癒魔法をかけ止血を行い団員に肩を貸しマンティコアと距離をとる。
すでに多くの団員が傷を負い、まともに戦える人員も減りつつあった。マンティコアは、戦いを遊びのように楽しんでいるのか私達の様子を伺っている。
力の差が大きすぎる……。このままでは全滅してしまう……。
団員達を守る事もできない頼りない自分に苛立ち、拳を握りしめると私は腰に下げていたカバンから転移石を取り出す。
「皆、一箇所に集まれ! 転移石を使う!」
私の声に団員達は頷き、マンティコアの様子を伺いながら一箇所に集まる。
集団用の転移石は発動するまでに時間がかかり、それまでの時間稼ぎが必要だ。
誰かマンティコアの気を引く役目を果たさなければならない……。
団員達が転移石の発動範囲内に収まったのを確認した後、私は剣を抜きマンティコアの方へと向かう。
「ここは私が時間を稼ぐ。皆は先に戻っていてくれ」
「そんな! イーゼルさん一人で相手をするなんて無茶です」
「安心しろ。必ず戻ってくる……」
団員にそう告げ、団員達を守るように障壁を張り再度マンティコアと向き合う。
大丈夫だ……。
コイツよりも強い奴を私は知っている……。
転移石を発動させると森の中は石の光で溢れかえる。マンティコアは団員達目掛けて牙を剥くが、それを火炎球で阻止する。
「お前の相手は私だ! さぁ、かかってこい!」
邪魔された事に苛立ったマンティコアは、すぐに私に目標を変え飛び掛かってくる。重いマンティコアの一撃をなんとか受け止めるが、その瞬間に右腕に激痛が走る。腕を見ればマンティコアの尾についた棘が突き刺さっていた。
マンティコアは苦痛に歪む私の顔を見て嬉しそうに口角を上げる。
「クソッッ……」
右腕の激痛は刺さった棘の痛みだけでなく、その棘に含まれる毒がじわじわと広がっていく。皮膚を切り裂かれるような痛みに耐えながら、マンティコアの攻撃を受け流しどうにか距離を取る。
チラリと団員達の方を見れば、転移石を中心に地面には眩い魔法陣が展開され……パッと皆の姿がそこから消え去る。
無事に帰還できたか……。
団員達の無事を確認した後は、自分自身の状況を再確認するが事態は最悪だ。
徐々に右腕の感覚が麻痺し、剣を握っていられるのもあとどれくらいだろうか……。
そう考える間もなく、玩具が消えた事に腹を立てたマンティコアは気に入らないと私に襲いかかる。マンティコアの攻撃は重く、防ぐ度に骨が軋む。剣を握る右腕も限界が近づく。
一人で倒す事など不可能だが……逃げ出す隙を作らなくては……。
限界を向かえ苦痛の表情を見せる私を見て、嬉しそうに歪む醜い顔が近づく……。しかし、よく見ればその片目には誰かが刻んだ深い傷がみられ、傷跡のせいで片目は閉じたままだった。
最後の力を振り絞り、風魔法で衝撃波をマンティコアに打ち込み一瞬の隙をついて私は剣をマンティコアの傷めがけて突き立てる。
鼓膜が破れてしまいそうなくらいの悲鳴を上げマンティコアは暴れまわる。マンティコアに振り払われ、地面へと体を強く叩きつけられる。
痛みでもがいている暇などなく、朦朧とする意識の中、私は必死に這いずりながら深い森の奥へと逃げていった……。
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