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リアムの過去 ⑥
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連れてこられたのは屋敷にある地下部屋……。
部屋の中にはタリスと同年代の17~18歳の青年達が数名いた。
「英雄様を連れてきたぞ」
タリスが意気揚々と部屋へと入っていき、俺は乱雑に床へ投げ捨てられる。
痺れていうことをきかない体だが意識はハッキリしているので青年達を睨みつければ皆顔を青くする。
「お、おい……。これ、本当に黒騎士じゃん……」
「マジで連れてきたのかよ……」
青年達はヒソヒソと話始める。タリスは青年達の言葉を聞き、苛立ったのか声をあげる。
「なんだよ。今更怖気付いたのか? お前達だって、貴族でもない下等な奴が英雄だなんて許せないって言ってたじゃないか!」
「あれは話の流れで……ただの冗談だと思ったんだよ。だから……」
何やら仲間割れが始まり、今のうちに魔法を使ってこの状況を俺の有利な方にと思い無詠唱で魔法を使おうとするが上手く魔法が使えない。
腕を見ればいつのまにか魔力封じ腕輪つけられていた。
クソッ……
体の痺れは今だに変わらず、俺は床に這いつくばっていることしかできずにいた。
「なぁタリス。英雄殺しなんて辞めようぜ。バレたら俺達ヤバい事になるって……」
「うるさいっ! もうここまでやって後になんて引ける訳ないだろ……。それに……これは兄さんが望んでる事なんだ。だから僕が代わりにやってあげるんだ……。英雄にはイーゼル兄さんこそが相応しいんだ」
イーゼルが望んでいる……?
タリスの言葉に俺の表情が変化したのが分かったのか、タリスは顔を歪め俺に語り始める。
「イーゼル兄さんはいつも僕に言っていました。力だけの下品な孤児が騎士団に入ってから騎士団の品格が落ちたって。下品で野蛮で考えなしで……この前のレッドドラゴンの討伐だって、兄さんが助けなければ貴方は死んでたって。なのに死に損ないが英雄だなんて……」
タリスは下唇を噛み俺を睨みつける。
「貴方が英雄に選ばれた本当の理由は、王の人気取りの駒として選ばれただけだ。孤児から英雄になったなんて聞けば愚かな平民は自分の事のように喜びますからね……。それで民衆からの信頼を取り戻そうなんて考える王も王だ……。そんな理由で、本来ならばイーゼル兄さんが手にするはずだった英雄の称号がこんな奴に与えられるなんて許せない!」
タリスの話を聞き、俺は呆然としてしまう。
俺が英雄を与えられた理由もそうだが……イーゼルが俺の事をそんな風に思っているなんて思ってもみなかった……。
何も言い返してこない俺を見てタリスは少し満足した表情を浮かべ、近くに置いてあった箱から小瓶を取り出す。
「お、おい! タリス! 本当にやるのか……?」
「当たり前だろ……」
「お、俺嫌だぞ! 人が目の前で死ぬなんて!」
青年達はタリスから距離を取るように後退りを始める。
タリスは震える手で小瓶を持つと一歩一歩俺の方へとやってくる……。
「大丈夫だ……。毒を飲ませたら転移石で深淵の森に飛ばす。毒で死ぬか魔獣に殺されるか……英雄様の最後を見届けられないのは残念だけどな……」
少し引き攣ったタリスの顔は、今の状況に後にも引けず苦しんでいるようにも見えた……。
「やめておけ……後悔するのはお前だぞ……」
「うるさいっ! お前さえいなければよかったのに……お前が全部悪いんだ!」
タリスは俺の髪を鷲掴みし顔を上げると小瓶に入っていた毒を口に当ててくる。
この甘ったるい香りは……ユリネの毒か……。
流石に俺も死にたくはないので口に入れられた毒を吐き出すが、口に残った少量の毒は確実に俺の体を蝕んでいく……。
「タリス! 早く、転移石で深淵の森に飛ばそうぜ! 誰かにバレたらマズイって!」
「分かってるよ!」
タリスは慌てて転移石を俺の方へと放り投げると、詠唱を始め転移石はキラキラと光り輝き始める。
「ハハ……。これで黒騎士はいなくなるんだ……。僕が黒騎士を倒したんだ……」
「………必ず……復讐に行くからな……」
眩い光に包まれる中、俺は嫌がらせのように恨言をタリスにぶつける。
「ヒッ……」と、小さく声を上げ顔を歪めるタリスを見ながら俺は転移石により深淵の森へと転送された……。
部屋の中にはタリスと同年代の17~18歳の青年達が数名いた。
「英雄様を連れてきたぞ」
タリスが意気揚々と部屋へと入っていき、俺は乱雑に床へ投げ捨てられる。
痺れていうことをきかない体だが意識はハッキリしているので青年達を睨みつければ皆顔を青くする。
「お、おい……。これ、本当に黒騎士じゃん……」
「マジで連れてきたのかよ……」
青年達はヒソヒソと話始める。タリスは青年達の言葉を聞き、苛立ったのか声をあげる。
「なんだよ。今更怖気付いたのか? お前達だって、貴族でもない下等な奴が英雄だなんて許せないって言ってたじゃないか!」
「あれは話の流れで……ただの冗談だと思ったんだよ。だから……」
何やら仲間割れが始まり、今のうちに魔法を使ってこの状況を俺の有利な方にと思い無詠唱で魔法を使おうとするが上手く魔法が使えない。
腕を見ればいつのまにか魔力封じ腕輪つけられていた。
クソッ……
体の痺れは今だに変わらず、俺は床に這いつくばっていることしかできずにいた。
「なぁタリス。英雄殺しなんて辞めようぜ。バレたら俺達ヤバい事になるって……」
「うるさいっ! もうここまでやって後になんて引ける訳ないだろ……。それに……これは兄さんが望んでる事なんだ。だから僕が代わりにやってあげるんだ……。英雄にはイーゼル兄さんこそが相応しいんだ」
イーゼルが望んでいる……?
タリスの言葉に俺の表情が変化したのが分かったのか、タリスは顔を歪め俺に語り始める。
「イーゼル兄さんはいつも僕に言っていました。力だけの下品な孤児が騎士団に入ってから騎士団の品格が落ちたって。下品で野蛮で考えなしで……この前のレッドドラゴンの討伐だって、兄さんが助けなければ貴方は死んでたって。なのに死に損ないが英雄だなんて……」
タリスは下唇を噛み俺を睨みつける。
「貴方が英雄に選ばれた本当の理由は、王の人気取りの駒として選ばれただけだ。孤児から英雄になったなんて聞けば愚かな平民は自分の事のように喜びますからね……。それで民衆からの信頼を取り戻そうなんて考える王も王だ……。そんな理由で、本来ならばイーゼル兄さんが手にするはずだった英雄の称号がこんな奴に与えられるなんて許せない!」
タリスの話を聞き、俺は呆然としてしまう。
俺が英雄を与えられた理由もそうだが……イーゼルが俺の事をそんな風に思っているなんて思ってもみなかった……。
何も言い返してこない俺を見てタリスは少し満足した表情を浮かべ、近くに置いてあった箱から小瓶を取り出す。
「お、おい! タリス! 本当にやるのか……?」
「当たり前だろ……」
「お、俺嫌だぞ! 人が目の前で死ぬなんて!」
青年達はタリスから距離を取るように後退りを始める。
タリスは震える手で小瓶を持つと一歩一歩俺の方へとやってくる……。
「大丈夫だ……。毒を飲ませたら転移石で深淵の森に飛ばす。毒で死ぬか魔獣に殺されるか……英雄様の最後を見届けられないのは残念だけどな……」
少し引き攣ったタリスの顔は、今の状況に後にも引けず苦しんでいるようにも見えた……。
「やめておけ……後悔するのはお前だぞ……」
「うるさいっ! お前さえいなければよかったのに……お前が全部悪いんだ!」
タリスは俺の髪を鷲掴みし顔を上げると小瓶に入っていた毒を口に当ててくる。
この甘ったるい香りは……ユリネの毒か……。
流石に俺も死にたくはないので口に入れられた毒を吐き出すが、口に残った少量の毒は確実に俺の体を蝕んでいく……。
「タリス! 早く、転移石で深淵の森に飛ばそうぜ! 誰かにバレたらマズイって!」
「分かってるよ!」
タリスは慌てて転移石を俺の方へと放り投げると、詠唱を始め転移石はキラキラと光り輝き始める。
「ハハ……。これで黒騎士はいなくなるんだ……。僕が黒騎士を倒したんだ……」
「………必ず……復讐に行くからな……」
眩い光に包まれる中、俺は嫌がらせのように恨言をタリスにぶつける。
「ヒッ……」と、小さく声を上げ顔を歪めるタリスを見ながら俺は転移石により深淵の森へと転送された……。
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