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リアムの過去 ②

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俺の出生はよく分かっていない。
物心ついた時には孤児院で生活をしていた。
下は赤ん坊から上は16歳まで、独り立ちできるまで皆孤児院で過ごしていた。

裕福な生活ではないが皆と過ごす日々は楽しかった。
しかし、そんな楽しい生活が終わる瞬間が訪れる。
8歳になる子供は必ず受ける洗礼の儀で、俺に魔力がある事が判明する。
そもそも魔力という物は遺伝的な要素が強く、基本魔力持ちの貴族の家系にしか生まれない。

まぁ、大した魔力じゃなければ問題なかったのだが……俺の魔力量は膨大で鑑定していた鑑定士が悲鳴を上げるほどだった。


そうなれば身寄りのない孤児の俺を貴族達はこぞって取り合いを始める。
魔力とは貴族にとって『力』だ。
男ならば『英雄』に、女ならば『聖女』になれる。
英雄や聖女を出した一族には陞爵しょうしゃくや王族に継ぐ権力を手にする事ができる。


そして、俺を養子へと迎え入れたのは金持ち侯爵家。
俺を手に入れれば公爵家も夢じゃないと意気込み、俺を英雄に仕立て上げようと訓練を始めた。
まぁ、その訓練が酷いのなんのって……。
その時はまだ小さくて可愛い俺は、反抗することもなく黙ってその訓練を受け入れていた。
実際にその訓練のおかげで、騎士団の学校では一位、二位を争う程の強さになっていた。

その一位と二位を争っていたのが公爵家出身のイーゼルという男だ。
争っていたと言えば仲が悪そうに聞こえるが、イーゼルはとても紳士な男だった。
剣の試験ではいつも俺とイーゼルが決勝に残り全力でぶつかり合った。互いにベストを尽くし、決着がつくと同時に二人して倒れ込むことなんてしょっちゅうだ。

「ロンヴァルト……今日も……最高の試合だったな……」
「あぁ……そうだな……」

綺麗な金髪が土埃で汚れていてもイーゼルが微笑むだけで何故か煌めいて見える。『爽やか』という言葉がこんなにも似合う男は他にいないだろうと俺は思っていた。

それからも俺とイーゼルは二人で切磋琢磨し、無事に学校を卒業し騎士団へ。
それからは二人でタッグを組み功績を積み上げていった……。

そして俺たちは『白騎士』と『黒騎士』と呼ばれるようになった。もちろん爽やかイーゼルが白騎士で、くすんだ俺が黒騎士だ。

イーゼルは多種多様な魔法を使い真っ白な鎧を汚す事が少なかったが、最前衛に突っ込み泥や返り血を浴びる事の多い俺には黒い鎧の方が良かった。

これからも俺達は二人でタッグを組み騎士を続けていく。
そう思っていた時に、緊急司令が出される。


王都周辺にドラゴンが現れたのだ。
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