奴隷の僕がご主人様に!? 〜森の奥で大きなお兄さんを捕まえました〜

赤牙

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お兄さんと万能薬を作ります!

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リアムさんの腕の中でぐっすりと眠ってしまった僕は、耳心地のいい声と爽やかな笑顔で起こされる。
いつも一緒に寝ているとはいえ、やっぱり恥ずかしくて下を向きながら朝の挨拶をしてリアムさんの腕から抜け出した。

軽い朝食を食べ支度を済ませればすぐに出発する。
大きな一角獣のツノはリアムさんが運んでくれて、せめてリアムさんのペースについていけるように必死に足を動かす。

「ココ。無理して早く進まなくていいんだぞ。焦ると怪我してしまうからな……」
「いえ。これくらい大丈……うわっ!」

会話に気を取られた瞬間、木の根に足を引っ掛けてしまいこけそうになった所をリアムさんが支えてくれて、どうにか怪我せずにすむ。

「ほら、焦ると危ないだろ?」
「すみません……」
「まぁ、レノー様の事を考えれば焦る気持ちも分かるが……ココが嫌じゃなければまた抱えて帰ってもいいんだぞ?」

リアムさんの言葉に、ゲスター様からレノー様の状態を聞き泣いてしまった時の事を思い出し顔が熱くなる。あの時は気が動転していて……リアムさんに抱きかかえられてもなんとも思わなかったが今は……。

「だ、大丈夫です! 僕、気をつけながら頑張ります!」
「そうか……少し残念だが、なるべく早く小屋に辿り着くように頑張ろうな!」

リアムさんに頭をポンポンされ励まされ僕達は森の中を進んで行った。



空が茜色に染まる頃、ようやく小屋へと辿り着く。
無事に帰ってこれた安堵感からか、ドッと疲れも襲ってくるが、ここで休んでいる訳にはいかない。
今からツノを飲めるよう粉末にしなければいけない。一角獣のツノはとても硬いので、その作業が結構大変だと聞いていた僕は再度気合いを入れる。

「なぁココ。このツノはどうするんだ? このままレノー様に与えるのか?」
「ツノは砕いて粉状になるまですり潰すんです。大人の体ならスプーン二杯分を飲めば病気も良くなるって聞きました。でも、粉にするのが凄く大変みたいで……明日までにレノー様に飲ませられる分を用意できたらって思ってるんです」
「そうか……。じゃあ、とりあえず砕いてすり潰せばいいんだな」

リアムさんは麻袋に一角獣のツノを入れ剣の柄でガンガンと叩くと、ツノはあっという間に粉々に。それをすり鉢に入れゴリゴリとすり潰していく……。

「うわぁ……。リアムさん凄い……」
「コイツのツノを落とす時、結構硬くてな……自慢の剣だけじゃ切り落とせそうになかったから魔力も込めて力技で切り落としたんだ。だから、潰す時も魔力を込めてやってみればどうかなって思ったんだが……どうやら上手くいったようだな」

粉末状になった一角獣のツノは何故だかキラキラ輝いていて、なんだか不思議な感じがする。

「キラキラしてますね……」
「そうだな」
「これは……飲んでも大丈夫なんでしょうか?」
「ん~大丈夫だとは思うが……味見してみるか」

リアムさんは指で粉をすくいペロっと舐める。

「少し甘いな……。舌も痺れないし、体に悪い感じはしないな」
「へぇ~甘いんですね」
「ココも味見してみるか?」
「あ、はい!」

リアムさんがそう言ったので、僕は何も考えずにリアムさんの指に残っていた粉をペロッ……と舐める。

確かにほんのり甘くて、粉砂糖を舐めている感じがする。飲み込みにくさはないし、これならレノー様にも飲んでもらえるかもしれない。

そんな事を考えながらリアムさんへと視線を向ければ、顔を赤くしたまま同じポーズで固まっている……。

「リ、リアムさん!? どうしたんですか!? もしかして……薬のせいで体が痺れてるんですか?」
「あ……いや……違うんだ。その……突然の出来事に頭が処理できなくてな……」

アハハ……と、笑いながらリアムさんは何も無かったようにすり鉢を片付け始める。
リアムさんも疲れが溜まっているのかもしれないなぁ……と、ちょっぴり可笑しなリアムさんを心配しながら、僕達は明日に備えて早めにベッドへと入る。

明日、レノー様に薬を飲んでもらえばきっと元気になる……。

そんな希望を持ちながら僕は目を閉じた……。
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