奴隷の僕がご主人様に!? 〜森の奥で大きなお兄さんを捕まえました〜

赤牙

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お兄さんの腕の中で眠ります……。

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リアムさんの魔法で枯れ木に火をつけると真っ暗だった森の中がぼんやりと明るくなる。パチパチと小枝が音を立て燃え、僕とリアムさんの顔を赤々と染める。
持ってきていた小さな鍋に水を入れてお湯を沸かしお茶を淹れる。今日のお茶は出発前にマーサさんがくれた特製の薬草茶だ。
一口飲めば体が芯から温まり、緊張だらけだった一日の疲れも和らぐ……。

「マーサさんがくれたお茶凄く美味しいですね」
「あぁ、そうだな」
「あの……リアムさん。森の主とっても強そうでしたけど、怖くなかったんですか?」
「あぁ。俺達が森の主の縄張りに入ったから気は立っていたが、強さでいうなら大した事はないよ」
「ふふ。リアムさんは本当に凄いですね……」

一角獣を見ても恐れるどころか果敢にも挑んで行くリアムさんの姿はまるで……本物の英雄のようだった。
隣国の英雄でもある黒騎士様はリアムさんにそっくりだとマーサさんが言っていたけど、もしリアムさんが黒騎士様だとしてもおかしくは無い。

強くて優しくてカッコいいリアムさん。
料理は下手だけど、なんでも出来てしまう凄い人で……僕とレノー様の為に獰猛な一角獣にも勇敢に立ち向かえる人……。
もし、本当にリアムさんが黒騎士様ならば……記憶が戻れば二度と会う事はないだろうな……。英雄としての輝かしい日常に戻れば僕のことなんてすぐに忘れちゃうんだろうな……。

そんな事を考えると胸がズキッと痛む。
もしこのままリアムさんの記憶が戻らなければ……なんて考えが浮かんできたので首を振って打ち消し、お茶を飲んで気分を落ち着かせた。


軽く食事を済ませ、明日に備えて寝床の準備をしようとすると腕を掴まれ……何故か僕はリアムさんの膝の上に座らせられる。

「ふぇ……? あの……これは?」

状況が分からずにリアムさんを見上げると、なんだか浮かない表情をしている。

「どうしたんですか……?」
「んー……。別々に眠るよりも、ココが近くにいてくれた方が何かあった時に守りやすいなと思ってな……。今日はこのまま寝てもいいか?」
「このまま……」

後ろから抱きしめられるような形で眠るなんて、リアムさんの体に逆に負担をかけてしまうんじゃないかな……?
それに……なんだか恥ずかしいし……。

「この体勢……キツくないんですか?」
「あぁ。ココは小さいからどうって事ないよ。それに、毎晩寝相の悪いココを抱きしめながら寝ているからな……。ココが腕の中にいないと落ち着かないんだ」
「はにゃ! ぼ……僕、毎晩そんなご迷惑をかけていたんですかぁ!?」
「迷惑なんかじゃないよ。ココは抱き枕としてちょうどいいからな……」

確かに僕が先に目を覚ます時は大抵リアムさんに抱きしめられていたけれど、まさか毎晩迷惑をかけてたなんて……。
反省していると頭上でクスクスと笑い声が聞こえ、リアムさんは僕を抱きしめてくる。

「はぁ……。ココを抱きしめていると安心する。今日の疲れも吹き飛んでしまいそうだ」
「うぅ……。ちょっと恥ずかしいですけど……リアムさんがそう言うのなら……」

そんな事を言ってはいるが、太くて逞しい腕に包まれている僕の方が安心感は強い。すっぽりと包み込まれたまま二人で揺れる炎を見つめていると、リアムさんがポツリと言葉を漏らす。


「もし俺の記憶が戻ったとしたら……。俺が望めばココの傍にいてもいいか?」

僕の……傍に……?

「リアムさん……。記憶……戻ったんですか?」
「いや……。もしもの話だよ……」

普段なら本音を言うのは恥ずかしいけれど、いつもと違う状況に素直に答えることができそうだ……。もしも記憶の戻ったリアムさんが一緒に居たいと言ってくれるのならば……それは本当に嬉しい。

「そうですね……。リアムさんが望んでくれるのならば……傍にいてほしいです」
「本当か!?」
「はい。リアムさんが嫌じゃなければ……」
「嫌な訳あるか! いる! ずっとココの傍にいる!」

リアムさんはそう言うと僕の事をギュッと抱きしめて首筋に顔を埋めてくる。なんだかくすぐったくてケラケラと僕の笑い声が静かな森に響く。

それからリアムさんとこれからの話で盛り上がる。
レノー様が薬で元気になったら皆で一緒に狩りに行ったり、ダンさんの作った料理を皆で食べて……以前の生活を思い浮かべながら、そこにリアムさんの姿も当て嵌めていけば幸福な風景が広がる。

「早くレノー様に薬を届けないといけませんね……」
「あぁ。起きたらすぐに出発するから、もう寝ようか」
「はい……。おやすみなさい、リアムさん」
「おやすみ、ココ」

リアムさんに抱きしめられたまま目を閉じるとすぐに睡魔が襲ってきて僕は夢の中へと落ちていった……。
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