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お兄さんとお仕事します!

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リアムさんの存在がデュークさんにバレてから早いもので一週間が経つ。

僕の従者として一緒に働くように命じられ、リアムさんがトラブルを起こせば連帯責任だからな!と、デュークさんに念押しされる……。また無茶な事を言われるんじゃないかと心配していたのだが……どうやらその心配は不用だったようだ。


掃除、洗濯、水汲み、火起こし、そして狩りに……デュークさんから言い渡される無理難題もそつなくこなしていき、ここの所デュークさんは悔しそうな表情ばかり見せる。

そんなデュークさんとは対照的に、厨房にいるマーサさんやダンさんはその様子を遠目で楽しそうに見ていて……レノー様が床に伏せて少し雰囲気が暗くなったお屋敷の中がリアムさんによって明るくなっていく。

もちろんリアムさんの活躍により、僕の仕事もぐんと少なくなり凄く助かっている。リアムさんの優しさや底抜けな笑顔は僕の心まで温かく照らしてくれる……。



「ココ。食物庫に入れておく分はこれだけでいいのか?」
「はい! あの……リアムさん重たくないんですか? 僕も少し手伝いますよ」
「大丈夫だよココ。これくらいどうってことない」

リアムさんはジャガイモの大袋を両肩に平然と担ぐとスタスタと食物庫の方へと向かう。本来ならとても重たいジャガイモの大袋は何人かで運び、食物庫がある地下室の階段は狭く大人数は通れないので途中で小分けにして階段を何往復もしなくてはいけない。
だが、手間も時間も体力も使う作業もリアムさんならば一回で済んでしまうのだ。

「あらぁ~もうジャガイモ運び終わったの?」

僕達が運び終えたと同時にマーサさんも手伝いに来てくれたが、すでにジャガイモ運びが終わったと伝えればニコニコと笑顔を浮かべていた。

「厨房の片付けも終わったから、夕食作りが始まるまで少し休憩にしようかねぇ~」
「はいっ!」

皆で休憩所へと向かい、到着するとマーサさんが手際良くお茶を淹れてくれる。
僕達もコップを並べ準備をすれば、マーサさん特製の紅茶が振る舞われる。

「今回はねぇ~アップルティーを用意してみたんだけど、どうかしら?」

ふわりとリンゴの香りがしてサッパリとした口当たりの紅茶に僕とリアムさんの頬は緩む。

「マーサさん、凄っっごく美味しいです!」
「体に染み渡り癒されますね……。マーサさんが用意してくれる物はなんでも美味しいですね」
「もぉ~二人してそんなに褒めないでよ~」

マーサさんは少し照れながら、もっと飲みなさいと紅茶のお代わりを注ぎながら世間話を始める。

「そういえば、一昨日久しぶりのお休みで街に行ったら、リアムくんにそっくりな姿絵を見つけたのよ!」
「えぇっ!? リアムさんにそっくりな絵ですか?」
「そうなのよ! 露店に売っていたから思わず見入ってたら、お店の人がその絵のモデルは隣国の黒騎士様だっていうのよ~」
「黒騎士様……? 黒騎士様って言ったら隣国の英雄ですよね?」
「そうなのよ! 姿絵では立派な甲冑を着けて凛々しい表情を浮かべた立ち姿だったんだけど、リアムくんが同じ格好したらとっても似てると思ったのよ~」

隣国の英雄……黒騎士様……

黒騎士様の噂は時折耳にする事がある。
剣術も魔法も桁違いに強くて勇敢で……厄災と言われる凶暴な魔獣を倒した事でも有名な人だ。


力も強くて魔法も使えて……なんでも出来るリアムさんが黒騎士様……?

そんな事を思いながらリアムさんを見上げると、リアムさんはゲラゲラと笑い出してしまう。

「ハハッ。もし俺が隣国の英雄様なら、その英雄様はとんだお間抜けだな。森の奥で迷子になってココの罠にかかってお世話までされて……。俺にしてみればココの方が英雄に相応しいよ」
「ふぇ!? な、何を言ってるんですかリアムさん! 英雄様に失礼ですよ!」
「そうか? 沢山の幸せをくれるココは俺にとっては英雄だぞ?」

いつものように頭を撫でられると、なんだか恥ずかしくなってしまい顔が熱くなる。

「あらあら。ココも小さな英雄様だったのね」
「マ、マーサさんまでそんな事言わないで下さいよ~」

リアムさんとマーサさんに揶揄からかわれていると休憩所の扉が開き、不機嫌な声が響き渡る。

「ココ。ゲスター様がお呼びだ。すぐに書斎に来なさい。いいか、一人で来るんだぞ」

不機嫌な声の主であるデュークさんは要件だけ告げるとリアムさんと僕を睨みつけてすぐに部屋を出て行く。

「ハァ……また今日は一段と不機嫌だねぇ……。最近は陰気くさい顔に磨きがかかってきてるわね……。ココ、何かやっちゃったのかい?」
「いえ……心当たりはないんですが……」
「ココ、一人で大丈夫か? 俺も一緒に……」
「ううん。一人で大丈夫ですよ。怒られるのには慣れてますから」

皆が心配しないようにへへッと笑いながら僕は休憩所を後にし、ゲスター様がいる書斎へと向かった……。
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