9 / 38
ゲスターの事情
しおりを挟む
「チッ……。相変わらず貧相な食事だな……」
この屋敷に来てからようやく半年が経とうしているが今だにこの屋敷の質素さや貧相な食事には慣れない。
数口食事を食べたところで手を止めデュークに下げるように命じる。
「すみませんゲスター様。すぐに代わりの食事を持って参ります」
この屋敷に来てから半年……。
あの忌々しい遺言書さえなければこんな生活など送らなくてもすんだものを……。
遺言書が保管されている金庫を睨みつけていると、デュークが代わりの食事を持ってやってくる。
『ヴァントーラ公爵家の全財産は、レノー・ヴァントーラの契約従者であるココに譲る』
その遺言書を見せられたのは叔父であるレノーが危篤状態だと聞いてやってきた当日の夜の事だった……。
危篤状態だと聞いていたよりも元気そうな叔父を見てガックリと肩を落とした所に叔父から突きつけられた衝撃的な事実……。
叔父は子どもに恵まれず公爵家の後継は叔父の弟である父が引き継ぐ事になっていた。王都近くにある公爵家の本家はすでに父へ譲渡し、領地経営や貴族のいざこざに疲れたからと言って、叔父は遠く離れた地へと拠点を移した……と、いうところまでは父から聞いてはいた。
五男である私は爵位を継ぐ権利も遠く、父が死ねば次にヴァントーラ公爵家を継ぐのは兄のうちの誰かだ……。
それならばと、叔父にあたるレノーに媚びを売り叔父の遺産相続を有利に進めて行こうとしたのだが……気難しい叔父の機嫌を取るのは思ったよりも難しく難航していた。
元々の持病が悪化した時も弱り目に付け込めば……と、思ったが余計に不機嫌にしてしまうだけだった。
そんな時に出てきた遺言書に落ち着いていられるはずもない。
………だから実力行使にでた。
叔父の持病が再度悪化するようにこちらで用意した医師に薬を処方させ、また弱らせていく。
身動きが取れない間に屋敷の使用人達を解雇していき、自分にとって都合のいい者達を配置していけばこの屋敷は私の手に落ちたも同然……。
だが、私達がやってきてすぐに叔父に死なれれば怪しまれる事もある。なので、叔父の看病をする為に屋敷で過ごしているように装い、嫌々ながらここでの生活をなんとか過ごしている。
それに……あの忌々しい遺言書をどうにかしなければ私の努力も水の泡……。
叔父の書いた遺言書は魔法契約された物で本人以外は契約破棄ができない代物だ。叔父の死と共にその契約は執行される。
だから叔父にすぐ死なれてはいけない……。
「ゲスター様。注文されていた物が三日後に到着するようです」
「そうか! では……ついにこの生活から抜け出せるのだな」
デュークの言葉に久しぶりに明るい気持ちになる。
注文していたのは即効性のある『毒薬』……。
それを使い叔父に最後を迎えてもらう予定だ。ただ、私達が毒を盛る訳ではない。
毒を飲ませる役目はココにやってもらう。
遺言書の効力も罪人には通用しない。そこに、もう一枚の私が用意した遺言書が見つかれば、叔父の財産は全て私のもの……。
「物が到着しましたらココの小屋にも同じ物を忍ばせておきます」
「あぁ。よろしく頼むよデューク」
私は数日後に訪れる幸福な日々を思い浮かべながら用意された食事に舌鼓を打った。
この屋敷に来てからようやく半年が経とうしているが今だにこの屋敷の質素さや貧相な食事には慣れない。
数口食事を食べたところで手を止めデュークに下げるように命じる。
「すみませんゲスター様。すぐに代わりの食事を持って参ります」
この屋敷に来てから半年……。
あの忌々しい遺言書さえなければこんな生活など送らなくてもすんだものを……。
遺言書が保管されている金庫を睨みつけていると、デュークが代わりの食事を持ってやってくる。
『ヴァントーラ公爵家の全財産は、レノー・ヴァントーラの契約従者であるココに譲る』
その遺言書を見せられたのは叔父であるレノーが危篤状態だと聞いてやってきた当日の夜の事だった……。
危篤状態だと聞いていたよりも元気そうな叔父を見てガックリと肩を落とした所に叔父から突きつけられた衝撃的な事実……。
叔父は子どもに恵まれず公爵家の後継は叔父の弟である父が引き継ぐ事になっていた。王都近くにある公爵家の本家はすでに父へ譲渡し、領地経営や貴族のいざこざに疲れたからと言って、叔父は遠く離れた地へと拠点を移した……と、いうところまでは父から聞いてはいた。
五男である私は爵位を継ぐ権利も遠く、父が死ねば次にヴァントーラ公爵家を継ぐのは兄のうちの誰かだ……。
それならばと、叔父にあたるレノーに媚びを売り叔父の遺産相続を有利に進めて行こうとしたのだが……気難しい叔父の機嫌を取るのは思ったよりも難しく難航していた。
元々の持病が悪化した時も弱り目に付け込めば……と、思ったが余計に不機嫌にしてしまうだけだった。
そんな時に出てきた遺言書に落ち着いていられるはずもない。
………だから実力行使にでた。
叔父の持病が再度悪化するようにこちらで用意した医師に薬を処方させ、また弱らせていく。
身動きが取れない間に屋敷の使用人達を解雇していき、自分にとって都合のいい者達を配置していけばこの屋敷は私の手に落ちたも同然……。
だが、私達がやってきてすぐに叔父に死なれれば怪しまれる事もある。なので、叔父の看病をする為に屋敷で過ごしているように装い、嫌々ながらここでの生活をなんとか過ごしている。
それに……あの忌々しい遺言書をどうにかしなければ私の努力も水の泡……。
叔父の書いた遺言書は魔法契約された物で本人以外は契約破棄ができない代物だ。叔父の死と共にその契約は執行される。
だから叔父にすぐ死なれてはいけない……。
「ゲスター様。注文されていた物が三日後に到着するようです」
「そうか! では……ついにこの生活から抜け出せるのだな」
デュークの言葉に久しぶりに明るい気持ちになる。
注文していたのは即効性のある『毒薬』……。
それを使い叔父に最後を迎えてもらう予定だ。ただ、私達が毒を盛る訳ではない。
毒を飲ませる役目はココにやってもらう。
遺言書の効力も罪人には通用しない。そこに、もう一枚の私が用意した遺言書が見つかれば、叔父の財産は全て私のもの……。
「物が到着しましたらココの小屋にも同じ物を忍ばせておきます」
「あぁ。よろしく頼むよデューク」
私は数日後に訪れる幸福な日々を思い浮かべながら用意された食事に舌鼓を打った。
11
お気に入りに追加
1,041
あなたにおすすめの小説

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺
るい
BL
国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる