奴隷の僕がご主人様に!? 〜森の奥で大きなお兄さんを捕まえました〜

赤牙

文字の大きさ
上 下
5 / 38

お兄さんに名前を付けよう!

しおりを挟む
朝からやらかしてしまった僕は赤くなった顔を冷やそうと外に置いている水瓶から水を汲み顔を洗う。
冷たい水で顔を洗い寝ぼけていた頭もスッキリしたところで、お兄さん用の水桶とタオルを持って部屋へと向かう。

「あの、朝からすみませんでした。寝ぼけてお兄さんの腕を枕だと思って抱きついてしまって……」
「気にする事はない」

笑顔でそう言ってくれるお兄さんの優しさに感謝しつつ、顔を拭いて下さいと濡れたタオルを渡す。
頭に巻いていた包帯は寝ている間にズレてしまったようで、お兄さんに椅子に座ってもらい包帯の巻き直しがてら傷の状態を確認させてもらう。

「血は止まっているみたいですね。でも、後数日は薬草を貼って包帯で保護していた方がいいかもしれませんね」
「分かった。ありがとうココ」
「いえ、僕のせいで怪我させてしまったのでこれくらい当たり前です」

昨日採取していた薬草を傷口につけ包帯を巻き終えた僕は仕事へ向かう準備を始める。

「お兄さんすみません。早朝の仕事があるので僕はお屋敷に行ってきますね。仕事が一旦終われば朝食を持って戻ってくるので、それまで待ってて下さい」
「あぁ、分かったよ」

お兄さんにそう言って小屋を出てお屋敷へと向かえば朝からマーサさん達が忙しそうに朝食の準備を始めていた。
僕もその中に加わり雑用をこなしていく。
野菜の皮むき、水汲み、皿洗い……朝はいつも忙しくあっという間に時間が過ぎていく。

ゲスター様の朝食がすみ後片付けも終われば、僕達使用人の遅めの朝食が始まる。
今日の賄いは卵焼きとパンとスープだった。

「マーサさん。今日の朝食は小屋で食べてきますね。あと……スープを少し多めにもらってもいいですか?」
「ん? ココがそんな事を言うなんて珍しいわね。スープくらい余るほどあるんだから沢山持っていきなさい」

マーサさんはそう言うと大きめのお椀にたっぷりとスープを注いでくれる。マーサさんにありがとうございますとお礼を言って、スープを溢さないように気をつけながら小屋へと戻ればお兄さんは大人しく小屋の中で僕の事を待ってくれていた。

「お兄さん。お待たせしました! 朝食にしましょう!」

お屋敷から持ってきた卵焼きとパンを机に置き、スープは昨日と同じく具材を追加していく。
今日も干し肉や干し野菜を入れてスープを温めなおせば朝食の完成だ。

手を合わせて朝食を食べれば、お兄さんは昨日と同じように美味しそうな顔をして食事を食べてくれる。
卵がある分、昨日よりも豪華に見えるが、大きなお兄さんにとっては物足りない量かもしれない。

「こんだけの量じゃ、お兄さんには足りないですよね……」
「そんな事はない。料理が美味しいから量が少なくても満足できている」

相変わらず優しいお兄さん……。そう言えば、ずっと『お兄さん』と呼んでいたけど、これからも『お兄さん』って呼べばいいのかな?
名前も分かんないから何て呼ぶのが正解なんだろう……?

「あの……お兄さん」
「ん? どうした?」
「お兄さんを呼ぶ時は何て呼んだらいいですか? 今までみたいに『お兄さん』でいいのならそのまま『お兄さん』って呼びますけど……」

僕の問いかけにお兄さんは少し考えて口を開く。

「じゃあ……ココに俺の名前をつけてほしい」
「ふぇっ!?」

まさかの返答に、僕は持っていたお椀を落としそうになる。

「ぼ、僕がお兄さんの名前を付けるんですか!?」
「あぁ。俺はココに捕まえられたからな……。ココに名前を付けてもらいたい」
「ふぇぇぇ……」

お兄さんにそんな事を言われたら断りたくても断れない……。
僕はう~ん……と、腕組みをしながら必死にお兄さんに合う名前を考える……。

「じゃ、じゃあ……『リアム』って名前はどうですか?」
「リアム……」
「はい……」

大きくて強そうなお兄さんを思い浮かべながら考えた名前だが……お兄さんは気に入ってくれるだろうか?

「ココ、素敵な名前をありがとう。リアム……凄く気に入ったよ。なぁ、俺の事を名前で呼んでくれないか?」
「………リアムさん」

ドキドキしながら自分で付けたお兄さんの名前を呼び視線を向ければ、目尻を下げて嬉しそうな表情を浮かべてくれる。



こうしてお兄さんの名前は『リアム』に決定した。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺

るい
BL
 国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

大好きだけどお別れしましょう〈完結〉

ヘルベ
恋愛
釣った魚に餌をやらない人が居るけど、あたしの恋人はまさにそれ。 いや、相手からしてみたら釣り糸を垂らしてもいないのに食らいついて来た魚なのだから、対して思い入れもないのも当たり前なのか。 騎士カイルのファンの一人でしかなかったあたしが、ライバルを蹴散らし晴れて恋人になれたものの、会話は盛り上がらず、記念日を祝ってくれる気配もない。デートもあたしから誘わないとできない。しかも三回に一回は断られる始末。 全部が全部こっち主導の一方通行の関係。 恋人の甘い雰囲気どころか友達以下のような関係に疲れたあたしは、思わず「別れましょう」と口に出してしまい……。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!

ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。

処理中です...