βの花が開くまで(オメガバース)

赤牙

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6話:二人目の友達

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 入学式が終わると、いよいよ本格的な大学生活が始まる。
 なるべく効率よく単位を習得できるように時間割を考えるが、意外とこれが大変だったりする。
 社会学部なので、理系の学部に比べると必修科目数も少なく予定は立てやすいのだが、不器用な僕にはなかなかの難関だった。
 リビングでう~んと頭を抱えていると、アランがやってくる。

「ケイ、考え事?」

 時間割と睨めっこしていた顔をあげて、アランに問いかける。

「科目の予定をどうしようかなって思って。アランはもう予定は立て終わったの?」
「あらかた終わったかな。一緒に考えようか?」
「え? いいの?」
「オレ、意外とこういうの得意なんだ」

 アランはそう言うと、シラバスにざっと目を通して時間割を作ってくれる。
 パズルのピースを埋めていくように、アランはあっという間に時間割りを作ってくれ、その完成度の高さに僕は「うわぁ~」と感嘆してしまう。
 アランは時間割りを指差し細かく説明してくれる。

「ケイは朝起きるのが早いから、一限目を多くして午後はゆっくり過ごせるようにしたよ。あと、水曜日は『ニクヨシ』の特売日だから午前中は授業の予定を外して、金曜日はスーパー『コマツ』のタイムサービスがある時間はとりあえずあけておいたよ」
「えぇっ!? そんなとこまで考えて作ってくれたの?」
「ケイが楽しそうに話してたのを思い出してさ。必要なかったら変更していいから」

ーーか、神すぎる……

 アランの神すぎる対応に感動し時間割りを大切に抱きしめてお礼をする。

「アラン、ありがとう! すごく助かったよ。このお礼はいつかさせてね」
「気にしなくていいよ。ケイにはいつも助けてもらってるからね」
「いやぁ~僕は何にもできてないよ。むしろ、アランに助けてもらってばかりな気がするよ」

 へへッと苦笑いすると、アランは優しく微笑む。

「そんなことないよ。ケイがルームメイトじゃなかったら、こんなに楽しく過ごせてなかっただろうしね」

 エリートアルファ様から褒められると、とっても照れ臭くて頬が熱くなる。

「そういえば、アランの学部ってどこなの?」
「オレは生命医科学部だよ」
「生命医科学部……」

 星花大学の生命医科学部といえば、偏差値70オーバーの秀才のみが合格できる学部。
 さすがアランとしか言いようがない。
 僕は尊敬の眼差しでアランを見上げる。

「わぁ~アランって、ほんとに凄いね」
「合格できたのは運も味方してくれたおかげだよ」

 謙虚に微笑むアランに、ただでさえ好感度が高いのにさらに爆上がりだ。
 そんな人がルームメイトってことに、何故だか嬉しくなって頬が緩んでしまう。



 大学登校二日目。
 初めての講義に少しの不安と緊張でドキドキしながら教室に入る。
 早めについていい場所を確保しようと思ったが、僕と同じ考えの人が数人いて後ろの列や、列の端はすでに何箇所か埋まっていた。
 視力が悪い僕は真ん中の列の右端を確保する。
 授業開始時間が近づくと人も増えてきて、席は八割近く埋まっていた。
 
「隣いい?」

 そう声をかけてきたのは、明るいオレンジ色の髪をした青年だった。

「どうぞ」
「あんがと」

 青年は大きめのリュックを背中からおろすと、ゴソゴソとリュックの中をあさる。
 授業に必要なものを取り出していくが、何か見つからないのか「あっれ~」と独り言を呟きながら首を傾げている。
 青年の机を見ると、教科書などはあるが筆記用具が一つもなかった。

「あの……もしかして、筆記用具忘れました?」

 そう声をかけると、青年は困った顔をして僕に振り返る。

「もしかしなくて忘れた。ごめん、ペン貸してくれん?」

 顔の前で両手を合わせる青年に「いいよ」と言ってペンを貸せばニパッと明るい笑顔を見せてくれる。

「ありがとう~! ごめんけど、今日一日このペン借りててもよか?」
「う、うん。いいよ」

ーー『よか?』って、九州の方言で『いい?』って意味だっけ?

 そんなことを考えていると、講師の先生がやってきて講義が始まる。
 先生の自己紹介から始まり、九十分の講義はやはり長く、講義が終わると少し疲れを感じた。
 この後の講義場所を確認していると、隣にいた青年が声をかけてくる。

「なぁなぁ、この後の社会学総論も受けるん?」
「うん、その予定だよ。君も?」
「俺も~。なぁ、次の講義も一緒に受けようや! あ、俺の名前は白木 叶斗しらき かなと。叶斗でも、カナでもなんでも好きなふうに呼んでよかけん」

 なまりの強い叶斗くんに押されて、僕も自己紹介する。
 その日は、叶斗くんと一緒に講義を受けて二日目が終わった。


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