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第二章
2話〜Sideルナ〜
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自分の魔力の流れを感じて…魔力の流れが淀まないように……
集中……集中……。
「よし…。ルナ、目を開けていいわよ」
そう言われて目を開けると母様から頭を撫でられる。
「魔力コントロールも上手になってきたわね。でも属性魔術を使用した時に少し不安定になる時があったわ。そこを注意しながらやれば完璧よ」
「はい。母様ありがとう」
褒められた事が嬉しくて口元を綻ばせると母様も笑顔を見せてくれる。
強くて綺麗で魔術が上手な母様は私の憧れだ。
母様に似て魔力の強い私は小さな頃から魔力コントロールの練習をやっている。今まで魔力の暴走を起こさなかったのも母様との特訓の成果だと思う。
「最近は属性の力が強くなってきてるわね…。これからは属性魔術も練習しましょうね! ルナは雷の属性が一番相性がいいからまずは簡単な攻撃魔術から始めていかなきゃね! あと、雷の障壁を作れるようになるとすっごく便利よ! 相手が近接だと触っただけで痺れて動けなくなるから! あとは……」
母様は、とても楽しそうに私の属性魔法はこんな使い方をしたらいいとアドバイスをくれる。
私は幼い頃、自分の魔力の多さに恐怖しか感じていなかった。
いつか私も魔力が暴走し……兄様のように凶獣化してしまうんじゃないか…。
怖くて不安で……ずっと泣いていた時もあった。
けれど、母様が魔術の楽しさを教えてくれて……絶対に私を凶獣化させないと約束してくれた。
「母様。私これからも頑張るね……」
「えぇ。これからも一緒に頑張りましょうね」
私の言葉に母様はいつもの優しい笑顔を向けてくれる。
大丈夫……。私には母様がついている。
絶対に……凶獣化なんてしない……。
母様をまた悲しませたりなんてしない。
朝の稽古が終わればソルと一緒に学園へと向かう。
今日の授業は歴史とその後は魔術試験の全体練習が予定されている。
あと一週間後に開かれる魔術試験は、宮廷魔導師を目指す私にとって大事な試験の一つだ。
この試験の結果で、来年の魔術専攻クラスのクラス分けがされる。宮廷魔導師を目指すのならば特進クラスへ入らなければいけない。
絶対に……失敗はできない。
次の魔術試験の全体練習の事を考えながら歴史の授業をボンヤリと聞いていると、隣にいるソルがコソコソと私に話しかけてくる。
「なぁなぁルナ。先生が説明してる『人の歴史』って、ハイルが話してくれた内容と少し違うな」
ソルがそんな事を言うので先生が黒板に書いた内容を見ると……確かにハイルさんが教えてくれた『人の歴史』とは違っていた。今、私達に教えている内容は少し半獣人にとって都合のいいように解釈されている感じがする……。
「いいですか。『人』に対して私達半獣人がとった行動により人は絶滅しました。その事を私達は決して忘れてはいけません」
先生は最後に綺麗な言葉で授業のまとめをしていると、後ろの方から私に聞こえるようにクラスメイトの話し声が聞こえてくる。
「『人』がいなくて困るのは凶獣化する奴だけだろ」
「そうそう。凶獣化なんて……あんな知能もないただの獣になんて俺は絶対なりたくねーな」
「はは。言えてる言えてる。魔力がどんなに強くても頭が良くても……凶獣化したら終わりだな」
クスクスと笑いながら私に向けられる言葉……。
宮廷魔導師を夢見ている子は私だけじゃなくクラスにも何十人といる。クラスの中でも魔力が高く、母様との練習で魔術に慣れている私は魔術の成績はクラスの中でもトップの成績だ。
しかし、宮廷魔導師を目指す子の中には、そんな私のことが気に食わないと思っている人もいる。
こんな嫌味は散々言われて来たので少しずつ慣れはしてきたが……やはり言われて嬉しいものではない。
最初はそんな嫌味や悪口に落ち込む事も多かったが、その度にソルが私を励ましてくれた。
今も隣で私の代わりにソルが後ろの席の子達に向けて睨みをきかしている。
「チッ……。またアイツら嫌味な事いいやがって……。剣術の授業の時ボコボコにしてやる」
「ありがとうソル。でも、そんな事したらまた先生に怒られちゃうよ」
「大丈夫大丈夫っ! この前はムカついてやりすぎちゃったけど、次は上手くやるからさ!」
「もう……」
ニヒヒと八重歯を見せながら笑うソルを見ながら私は苦笑いする。
ソルは私の心の痛みに敏感で、いつも私を守ってくれる。
たまにやり過ぎてしまう事もあるが……私にとってソルは大きな心の支えだ。
きっとソルがいてくれるから私の心は安定していて、凶獣化する事なく今まで過ごせたと思う。
歴史の授業が終われば次はいよいよ魔術試験の全体練習だ。
「ルナ。魔術試験の練習頑張ろうな!」
「うん」
私は大きく頷き全体練習が開かれる森へとソルと共に向かった。
集中……集中……。
「よし…。ルナ、目を開けていいわよ」
そう言われて目を開けると母様から頭を撫でられる。
「魔力コントロールも上手になってきたわね。でも属性魔術を使用した時に少し不安定になる時があったわ。そこを注意しながらやれば完璧よ」
「はい。母様ありがとう」
褒められた事が嬉しくて口元を綻ばせると母様も笑顔を見せてくれる。
強くて綺麗で魔術が上手な母様は私の憧れだ。
母様に似て魔力の強い私は小さな頃から魔力コントロールの練習をやっている。今まで魔力の暴走を起こさなかったのも母様との特訓の成果だと思う。
「最近は属性の力が強くなってきてるわね…。これからは属性魔術も練習しましょうね! ルナは雷の属性が一番相性がいいからまずは簡単な攻撃魔術から始めていかなきゃね! あと、雷の障壁を作れるようになるとすっごく便利よ! 相手が近接だと触っただけで痺れて動けなくなるから! あとは……」
母様は、とても楽しそうに私の属性魔法はこんな使い方をしたらいいとアドバイスをくれる。
私は幼い頃、自分の魔力の多さに恐怖しか感じていなかった。
いつか私も魔力が暴走し……兄様のように凶獣化してしまうんじゃないか…。
怖くて不安で……ずっと泣いていた時もあった。
けれど、母様が魔術の楽しさを教えてくれて……絶対に私を凶獣化させないと約束してくれた。
「母様。私これからも頑張るね……」
「えぇ。これからも一緒に頑張りましょうね」
私の言葉に母様はいつもの優しい笑顔を向けてくれる。
大丈夫……。私には母様がついている。
絶対に……凶獣化なんてしない……。
母様をまた悲しませたりなんてしない。
朝の稽古が終わればソルと一緒に学園へと向かう。
今日の授業は歴史とその後は魔術試験の全体練習が予定されている。
あと一週間後に開かれる魔術試験は、宮廷魔導師を目指す私にとって大事な試験の一つだ。
この試験の結果で、来年の魔術専攻クラスのクラス分けがされる。宮廷魔導師を目指すのならば特進クラスへ入らなければいけない。
絶対に……失敗はできない。
次の魔術試験の全体練習の事を考えながら歴史の授業をボンヤリと聞いていると、隣にいるソルがコソコソと私に話しかけてくる。
「なぁなぁルナ。先生が説明してる『人の歴史』って、ハイルが話してくれた内容と少し違うな」
ソルがそんな事を言うので先生が黒板に書いた内容を見ると……確かにハイルさんが教えてくれた『人の歴史』とは違っていた。今、私達に教えている内容は少し半獣人にとって都合のいいように解釈されている感じがする……。
「いいですか。『人』に対して私達半獣人がとった行動により人は絶滅しました。その事を私達は決して忘れてはいけません」
先生は最後に綺麗な言葉で授業のまとめをしていると、後ろの方から私に聞こえるようにクラスメイトの話し声が聞こえてくる。
「『人』がいなくて困るのは凶獣化する奴だけだろ」
「そうそう。凶獣化なんて……あんな知能もないただの獣になんて俺は絶対なりたくねーな」
「はは。言えてる言えてる。魔力がどんなに強くても頭が良くても……凶獣化したら終わりだな」
クスクスと笑いながら私に向けられる言葉……。
宮廷魔導師を夢見ている子は私だけじゃなくクラスにも何十人といる。クラスの中でも魔力が高く、母様との練習で魔術に慣れている私は魔術の成績はクラスの中でもトップの成績だ。
しかし、宮廷魔導師を目指す子の中には、そんな私のことが気に食わないと思っている人もいる。
こんな嫌味は散々言われて来たので少しずつ慣れはしてきたが……やはり言われて嬉しいものではない。
最初はそんな嫌味や悪口に落ち込む事も多かったが、その度にソルが私を励ましてくれた。
今も隣で私の代わりにソルが後ろの席の子達に向けて睨みをきかしている。
「チッ……。またアイツら嫌味な事いいやがって……。剣術の授業の時ボコボコにしてやる」
「ありがとうソル。でも、そんな事したらまた先生に怒られちゃうよ」
「大丈夫大丈夫っ! この前はムカついてやりすぎちゃったけど、次は上手くやるからさ!」
「もう……」
ニヒヒと八重歯を見せながら笑うソルを見ながら私は苦笑いする。
ソルは私の心の痛みに敏感で、いつも私を守ってくれる。
たまにやり過ぎてしまう事もあるが……私にとってソルは大きな心の支えだ。
きっとソルがいてくれるから私の心は安定していて、凶獣化する事なく今まで過ごせたと思う。
歴史の授業が終われば次はいよいよ魔術試験の全体練習だ。
「ルナ。魔術試験の練習頑張ろうな!」
「うん」
私は大きく頷き全体練習が開かれる森へとソルと共に向かった。
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