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第一章
52話
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「ん……」
喉…乾いた…
そう思い目が覚め体を動かそうとすると、ぎゅうっ…と抱きしめられている事に気付く。
もちろん目の前にはアストさんがいて…もちろん裸で…もちろん僕も素っ裸だ。
それを自覚するとアストさんとの乱れるような行為を思い出す。
まだ、記憶が途切れ途切れなので耐えられるが…なんて大胆な事をやってしまったのだろうと顔から火が出そうなくらい恥ずかしくなった。
まだ気持ち良さそうにスヤスヤと眠るアストさんを見れば発情期が少しは落ち着いたのかな…と安心する。
「アストさん…可愛い…」
そう呟くと、薄らと瞼が開き蜂蜜色の瞳と目が合う。
「ん……ハイル…」
そう言うとアストさんは抱きしめていた僕をさらにギュッと抱きしめ首筋に顔を埋めてくる。
まるで幼い子供のような行為がとても可愛らしくて胸がキュンとする。
「おはようございます。アストさん。体調はどうですか?」
「…おはようハイル。体調……はっ!ハイルこそ大丈夫か?昨日はあんなに激しく抱いてしまって…」
寝ぼけた顔から一変していつもの凛々しい顔に戻るとアストさんは僕のことを心配そうに見つめてくる。
「あー…多分。大丈夫だと思います…」
「そうか…それならいいのだが…」
「アストさん。喉乾きませんか?僕、屋敷からお水もらってきます」
「それならきっと大丈夫だ。ゴードンとフィッツが部屋の前の棚に飲み物や食べ物を準備してくれているだろうから」
アストさんはそう言うと、名残惜しそうに僕の体から離れ起き上がる。
脱ぎ散らかした服を簡単に身にまとうと、軽い足取りで部屋を出ていく。
僕も起きないと…
そう思って体を起こすと、体はいつもより気怠くて…腰にズシンと重さを感じる。
どうにか起き上がる事はできたが…ベッドから立ちあがろうとすると足がプルプルと震えた。
なんじゃこりゃ…
僕が立ちあがるのに苦戦していると、アストさんが両手に水と食事を持って部屋に戻ってくる。
「あ、アストさん。ありがとうございます」
「ん?ハイル…もしかして立てないのか?」
なかなか立ち上がらない僕を見たアストさんは食事を机の上に置くと僕の所へとやってきてくれる。
「なぜか上手く立てなくて…」
なんだか恥ずかしくて苦笑いしながらそう伝えると、アストさんはひょいっと僕を横抱きで抱え上げる。
「やはり無理をさせてしまっていたな…」
「ア、ア、アストさん!僕…裸で…その…何も…はいてない…です…」
「ん……?あ……すまない…」
僕もアストさんも顔を赤くして互いを見ないように目を逸らす。
再びベッドに戻された僕はアストさんがいつも着ている服を着せられる。
「少し大きいかもしれないが…今はこれで我慢してくれ」
「はい…」
服を着せられた後は、立てない僕をまたアストさんが抱きかかえてくれる。なんだか体中をアストさんに包まれているようで…僕は嬉しくて口元が綻ぶ。
ソファーへと辿り着くとアストさんの膝の上に座らせてもらったまま食事をする。
「ほら…ハイル。これも美味しいぞ…」
「はい。ありがとうございますアストさん」
病気でもないのにアストさんは色々と僕の世話をしてくれて…恥ずかしいやら嬉しくいやら…。
食事を食べ終えればまたベッドに向かって二人でゴロリと横になる。
「はぁ…お腹いっぱいですね…」
「そうだな」
「あの…アストさん。発情期は…もう大丈夫なんですか?」
「あぁ…昨日ハイルを抱いて落ち着いたようだ。本当にありがとう…ハイル…」
そう言ってアストさんは僕の唇に軽くキスをしてくれる。
「気にしないで下さい。僕はアストさんの番なんですから…」
そう言うと、アストさんはとても嬉しそうに顔を綻ばせ…僕もその笑顔を見ると嬉しさと愛しさで心が満たされる。
僕達はこれからもずっとこんな風に穏やかで愛に溢れた生活を送っていくんだと思っていた…。
けれど…僕達の穏やかな日々はそう長くは続かなかった。
第一章 fin
喉…乾いた…
そう思い目が覚め体を動かそうとすると、ぎゅうっ…と抱きしめられている事に気付く。
もちろん目の前にはアストさんがいて…もちろん裸で…もちろん僕も素っ裸だ。
それを自覚するとアストさんとの乱れるような行為を思い出す。
まだ、記憶が途切れ途切れなので耐えられるが…なんて大胆な事をやってしまったのだろうと顔から火が出そうなくらい恥ずかしくなった。
まだ気持ち良さそうにスヤスヤと眠るアストさんを見れば発情期が少しは落ち着いたのかな…と安心する。
「アストさん…可愛い…」
そう呟くと、薄らと瞼が開き蜂蜜色の瞳と目が合う。
「ん……ハイル…」
そう言うとアストさんは抱きしめていた僕をさらにギュッと抱きしめ首筋に顔を埋めてくる。
まるで幼い子供のような行為がとても可愛らしくて胸がキュンとする。
「おはようございます。アストさん。体調はどうですか?」
「…おはようハイル。体調……はっ!ハイルこそ大丈夫か?昨日はあんなに激しく抱いてしまって…」
寝ぼけた顔から一変していつもの凛々しい顔に戻るとアストさんは僕のことを心配そうに見つめてくる。
「あー…多分。大丈夫だと思います…」
「そうか…それならいいのだが…」
「アストさん。喉乾きませんか?僕、屋敷からお水もらってきます」
「それならきっと大丈夫だ。ゴードンとフィッツが部屋の前の棚に飲み物や食べ物を準備してくれているだろうから」
アストさんはそう言うと、名残惜しそうに僕の体から離れ起き上がる。
脱ぎ散らかした服を簡単に身にまとうと、軽い足取りで部屋を出ていく。
僕も起きないと…
そう思って体を起こすと、体はいつもより気怠くて…腰にズシンと重さを感じる。
どうにか起き上がる事はできたが…ベッドから立ちあがろうとすると足がプルプルと震えた。
なんじゃこりゃ…
僕が立ちあがるのに苦戦していると、アストさんが両手に水と食事を持って部屋に戻ってくる。
「あ、アストさん。ありがとうございます」
「ん?ハイル…もしかして立てないのか?」
なかなか立ち上がらない僕を見たアストさんは食事を机の上に置くと僕の所へとやってきてくれる。
「なぜか上手く立てなくて…」
なんだか恥ずかしくて苦笑いしながらそう伝えると、アストさんはひょいっと僕を横抱きで抱え上げる。
「やはり無理をさせてしまっていたな…」
「ア、ア、アストさん!僕…裸で…その…何も…はいてない…です…」
「ん……?あ……すまない…」
僕もアストさんも顔を赤くして互いを見ないように目を逸らす。
再びベッドに戻された僕はアストさんがいつも着ている服を着せられる。
「少し大きいかもしれないが…今はこれで我慢してくれ」
「はい…」
服を着せられた後は、立てない僕をまたアストさんが抱きかかえてくれる。なんだか体中をアストさんに包まれているようで…僕は嬉しくて口元が綻ぶ。
ソファーへと辿り着くとアストさんの膝の上に座らせてもらったまま食事をする。
「ほら…ハイル。これも美味しいぞ…」
「はい。ありがとうございますアストさん」
病気でもないのにアストさんは色々と僕の世話をしてくれて…恥ずかしいやら嬉しくいやら…。
食事を食べ終えればまたベッドに向かって二人でゴロリと横になる。
「はぁ…お腹いっぱいですね…」
「そうだな」
「あの…アストさん。発情期は…もう大丈夫なんですか?」
「あぁ…昨日ハイルを抱いて落ち着いたようだ。本当にありがとう…ハイル…」
そう言ってアストさんは僕の唇に軽くキスをしてくれる。
「気にしないで下さい。僕はアストさんの番なんですから…」
そう言うと、アストさんはとても嬉しそうに顔を綻ばせ…僕もその笑顔を見ると嬉しさと愛しさで心が満たされる。
僕達はこれからもずっとこんな風に穏やかで愛に溢れた生活を送っていくんだと思っていた…。
けれど…僕達の穏やかな日々はそう長くは続かなかった。
第一章 fin
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