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第一章
44話
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夕食も食べる事が出来ず僕はベッドにうずくまっていた。
心配したガイルさんが声をかけてくれたが会う勇気が出なくて…ドア越しに返事だけをした。
王都に行くと決めたが…誰も知らない場所で一人で過ごす事に不安を感じる。
どんな扱いを受けるのだろうか。
また閉じ込められるのではないか…最悪なパターンばかりを想像してしまう。
これからどうなるのかな…
すっかり暗くなった外を見つめていると、部屋のドアをノックする音が聞こえる。
「ハイル。起きているか…?」
「アスト…さん…」
ベッドから起き上がりドアの方へ向かう間に鼓動はドクドクと早く脈打つ。
ドアを開けると不安そうな顔をしたアストさんが立っていた。
「ハイル…。話をしたい。入ってもいいか?」
「…はい」
アストさんはベッド横に置いてある椅子に座り、僕はベッドへと腰をかける。
今日も一緒に過ごしたはずなのに、なんだか久しぶりに会ったような気がする…。
互いに沈黙したまま見つめ合うとアストさんが口を開く。
「ハイル…王都に行くのか…?」
「はい…」
「っっ!……何故だ」
「自由に…なりたいからです…」
また自分の思いとは反対の言葉を口にして自分の首を絞めていく…。
アストさんは僕の言葉に顔を少ししかめながら、ゆっくりと頷いてくれる。
「そうか…自由か…。やはり閉じ込められた生活は嫌だよな…。なぁ…ハイル。俺達との生活が辛かったのか?」
「辛いことなんて…ありませんでした…」
僕はふるふると顔を横に振り、少しだけ自分の本音をアストさんに伝える。
「僕だって…本当は離れたくない。皆と…ずっと一緒にいたい…」
「じゃあこのまま一緒にいよう。王都になんて行かないでくれ…」
「でも、ダメなんです…ダメ…」
「ハイル…どうしたんだ…?そんな辛そうな顔をしてまで王都に行く理由はなんなんだ?」
「………。」
また涙がこみ上げてきて下を向くとアストさんはそっと手を握ってくれる。その温もりに胸が締め付けられる。
好き…アストさんが好き…
心の中に溢れた気持ちが言葉になって漏れないように必死に閉じ込める。
「理由は…言えません…」
「……そうか」
あぁ…
もう二度と会えないのなら…この気持ちを伝えてもいいかな…
僕がそう思っていると、アストさんは何か決心をしたような顔をして口を開く。
「俺も王都について行く…」
「えっ……?」
「ハイルを一人にはしたくない…。いや…俺はハイルとずっと一緒にいたいんだ…」
「一緒…に…?」
アストさんを見上げると、ほとんど瞬きをせずに僕のことを見つめている。
その真剣な眼差しに目を逸らすことなどできず、熱を帯びた蜂蜜色の瞳に囚われてしまいそうだ…
「ハイル…好きだ。君のことが出会ってからずっと好きなんだ」
僕はその言葉に驚き目を瞬かせてしまう。
「いつかハイルに気持ちを伝えたいと思っていた…。だが…拒否される事を恐れて言い出す事ができなかったんだ…。ハイルと過ごす日常は俺にとって一番の幸せなんだ。ずっと一緒にいたい…これから先もずっと…」
握られた手は少し震えていてアストさんの緊張が伝わってくる。僕を見つめる瞳は少しだけ不安に揺れていた。
アストさんが…僕のことを好き…ずっと一緒にいたい…
伝えられた言葉を心の中で何度も噛み締めると、キュッと胸が締め付けられ幸せな気持ちが溢れてくる。
僕も好き…。アストさんが…大好き…
「好きです…。僕もアストさんのことが好きです…」
「……!?ハ、ハイル!?え?今なんて…」
緊張してボソボソと呟くように言ってしまった僕の告白を聞いて、アストさんは目を見開いて信じられないといった顔をしながら少し慌てている。
その姿がなんだか可笑しくて僕は少し笑ってしまう。
「アストさん。僕はあなたが好きです…大好きです!」
二度目はハッキリと気持ちを伝えるとアストさんの両腕が伸びてきて、ぎゅうっと抱きしめられる。
「ア、アストさん…?」
「ハイル…もう一度言ってくれ…」
「あっ…はい。アストさん好きです…」
「…もう一度」
「アストさん…大好きです…」
抱きしめられた腕が緩みアストさんが顔をこちらに向ける。幸せそうにふにゃりと微笑む顔を見て僕もつられて笑顔になる。
「ハイル。俺も大好きだ」
どうしよう…。アストさんが僕の事を好きだなんて…
嬉しすぎてどうにかなってしまいそうだ…
アストさんは尻尾を嬉しそうに振り、また僕を抱きしめてくれる。腕の中はとても居心地が良くて僕もそっとアストさんの背中に腕を回す。
このまま時が止まってしまえばいいのに…
僕はそう思いながらアストさんをギュッと抱きしめた。
心配したガイルさんが声をかけてくれたが会う勇気が出なくて…ドア越しに返事だけをした。
王都に行くと決めたが…誰も知らない場所で一人で過ごす事に不安を感じる。
どんな扱いを受けるのだろうか。
また閉じ込められるのではないか…最悪なパターンばかりを想像してしまう。
これからどうなるのかな…
すっかり暗くなった外を見つめていると、部屋のドアをノックする音が聞こえる。
「ハイル。起きているか…?」
「アスト…さん…」
ベッドから起き上がりドアの方へ向かう間に鼓動はドクドクと早く脈打つ。
ドアを開けると不安そうな顔をしたアストさんが立っていた。
「ハイル…。話をしたい。入ってもいいか?」
「…はい」
アストさんはベッド横に置いてある椅子に座り、僕はベッドへと腰をかける。
今日も一緒に過ごしたはずなのに、なんだか久しぶりに会ったような気がする…。
互いに沈黙したまま見つめ合うとアストさんが口を開く。
「ハイル…王都に行くのか…?」
「はい…」
「っっ!……何故だ」
「自由に…なりたいからです…」
また自分の思いとは反対の言葉を口にして自分の首を絞めていく…。
アストさんは僕の言葉に顔を少ししかめながら、ゆっくりと頷いてくれる。
「そうか…自由か…。やはり閉じ込められた生活は嫌だよな…。なぁ…ハイル。俺達との生活が辛かったのか?」
「辛いことなんて…ありませんでした…」
僕はふるふると顔を横に振り、少しだけ自分の本音をアストさんに伝える。
「僕だって…本当は離れたくない。皆と…ずっと一緒にいたい…」
「じゃあこのまま一緒にいよう。王都になんて行かないでくれ…」
「でも、ダメなんです…ダメ…」
「ハイル…どうしたんだ…?そんな辛そうな顔をしてまで王都に行く理由はなんなんだ?」
「………。」
また涙がこみ上げてきて下を向くとアストさんはそっと手を握ってくれる。その温もりに胸が締め付けられる。
好き…アストさんが好き…
心の中に溢れた気持ちが言葉になって漏れないように必死に閉じ込める。
「理由は…言えません…」
「……そうか」
あぁ…
もう二度と会えないのなら…この気持ちを伝えてもいいかな…
僕がそう思っていると、アストさんは何か決心をしたような顔をして口を開く。
「俺も王都について行く…」
「えっ……?」
「ハイルを一人にはしたくない…。いや…俺はハイルとずっと一緒にいたいんだ…」
「一緒…に…?」
アストさんを見上げると、ほとんど瞬きをせずに僕のことを見つめている。
その真剣な眼差しに目を逸らすことなどできず、熱を帯びた蜂蜜色の瞳に囚われてしまいそうだ…
「ハイル…好きだ。君のことが出会ってからずっと好きなんだ」
僕はその言葉に驚き目を瞬かせてしまう。
「いつかハイルに気持ちを伝えたいと思っていた…。だが…拒否される事を恐れて言い出す事ができなかったんだ…。ハイルと過ごす日常は俺にとって一番の幸せなんだ。ずっと一緒にいたい…これから先もずっと…」
握られた手は少し震えていてアストさんの緊張が伝わってくる。僕を見つめる瞳は少しだけ不安に揺れていた。
アストさんが…僕のことを好き…ずっと一緒にいたい…
伝えられた言葉を心の中で何度も噛み締めると、キュッと胸が締め付けられ幸せな気持ちが溢れてくる。
僕も好き…。アストさんが…大好き…
「好きです…。僕もアストさんのことが好きです…」
「……!?ハ、ハイル!?え?今なんて…」
緊張してボソボソと呟くように言ってしまった僕の告白を聞いて、アストさんは目を見開いて信じられないといった顔をしながら少し慌てている。
その姿がなんだか可笑しくて僕は少し笑ってしまう。
「アストさん。僕はあなたが好きです…大好きです!」
二度目はハッキリと気持ちを伝えるとアストさんの両腕が伸びてきて、ぎゅうっと抱きしめられる。
「ア、アストさん…?」
「ハイル…もう一度言ってくれ…」
「あっ…はい。アストさん好きです…」
「…もう一度」
「アストさん…大好きです…」
抱きしめられた腕が緩みアストさんが顔をこちらに向ける。幸せそうにふにゃりと微笑む顔を見て僕もつられて笑顔になる。
「ハイル。俺も大好きだ」
どうしよう…。アストさんが僕の事を好きだなんて…
嬉しすぎてどうにかなってしまいそうだ…
アストさんは尻尾を嬉しそうに振り、また僕を抱きしめてくれる。腕の中はとても居心地が良くて僕もそっとアストさんの背中に腕を回す。
このまま時が止まってしまえばいいのに…
僕はそう思いながらアストさんをギュッと抱きしめた。
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