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第一章
33話
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「これで今日の分は終わりです」
「あぁ~やっと終わった…」
僕は目の前にある本を見ながらフゥ…と息を吐く。
ルナは今も僕の家庭教師みたいな事をしてくれている。学園に通いながら空いた時間を僕の為に使ってくれていて、文字以外の知識や魔術の事なども教えてくれた。
「ルナは凄いね。僕より年下なのに色んな事を知っていて」
「小さな頃から母様や父様から色々と教えてもらいました。でも、ハイルさんも短い期間でここまで覚えられるなんて凄いです」
「そんなことないよ。ルナの教え方が上手なんだよ」
僕がそう言うとルナは嬉しそうに口元を綻ばせる。
ソルから聞いたがルナは学園でもトップの成績で頭も良くて魔術も上手らしい。
魔術はイザベラさんに小さな頃から教え込まれていると言っていた。
ちなみにソルは勉強と魔術はからっきしだが剣術はトップだと自慢していた。
「ハイルさん。兄様と仲良くなったんですね」
「うん。今はアストさんに触れても大丈夫だし、近くで話をするのも平気なんだ」
「よかったです。兄様いつもハイルさんの話ばかりするから」
「僕のことって…温室で二人でダラダラしてるだけなのに何を話してるんだろ…」
「ふふ。内緒です」
「えぇ~」
ルナはクスクスと笑いアストさんが何を話していたのかは秘密にされた。
「でも本当によかったです…。兄様にとってハイルさんは特別な存在だから…」
「特別…?」
「はい。特別です!」
「そっか…特別かぁ…」
ルナの言っている『特別な存在』の意味はよく分からなかったが、誰かの特別だと言われる事はとても嬉しくて…少し恥ずかしかった。
✳︎✳︎
「ハイル!今日は遅かったな」
ルナとの勉強が終わり温室へと向かうと先に来ていたアストさんが出迎えてくれる。
以前よりも一緒に過ごす時の距離は近くなり、今では少し間を開けて隣同士でソファーに座れるようになった。
「こんにちはアストさん。さっきまでルナに勉強を教えてもらってたんです」
「そうか。お疲れ様」
アストさんはそう言うと、ソファーをポンポンと叩き早く隣に座って欲しそうに微笑みかけてくる。
『兄様にとってハイルさんは特別な存在だから』
ソファーへと向かっている途中にさっきのルナの言葉を思い出してしまい、アストさんの事を意識してしまう。
普段なら何も考えずに隣に座るのだが、今日はなんだか恥ずかしくて…いつもより距離をとって座った。
「…ハイル?どうかしたか?」
「へっ!?いや、ど、どうもしてませんよ!」
僕の挙動不審な態度が気になるのかアストさんはじぃ…っと僕を見つめてる。
バチッと目が合えば思わず目を逸らしてしまう。
「…離れた方がいいか?」
アストさんの言葉に逸らしていた目線を戻すと、悲しげな顔でこちらを見ていた。
僕は首を横に振りアストさんを見つめる。
「あの…ごめんなさい。僕…今日はなんだかおかしくて…」
「おかしい?…体調が悪いのか?熱でもあるのか?」
心配そうな顔でグイっと近づかれると思わず固まってしまう。
アストさんは僕の指先をそっと握ると「大丈夫か?」と瞳を不安げに揺らし覗き込んでくる。
「大丈夫…です…」
「だが…顔が赤いぞ?」
「へっ!?」
アストさんにそう言われて意識しだすと更に顔が熱くなり鼓動が早くなる。
なんでこんなにドキドキしているのか自分でもわからずに、その日はアストさんに色々と心配されながら過ごした。
この気持ちは何だったのだろう…
自分でも自分の気持ちがよく分からず僕はその晩悩みながら眠りについた。
「あぁ~やっと終わった…」
僕は目の前にある本を見ながらフゥ…と息を吐く。
ルナは今も僕の家庭教師みたいな事をしてくれている。学園に通いながら空いた時間を僕の為に使ってくれていて、文字以外の知識や魔術の事なども教えてくれた。
「ルナは凄いね。僕より年下なのに色んな事を知っていて」
「小さな頃から母様や父様から色々と教えてもらいました。でも、ハイルさんも短い期間でここまで覚えられるなんて凄いです」
「そんなことないよ。ルナの教え方が上手なんだよ」
僕がそう言うとルナは嬉しそうに口元を綻ばせる。
ソルから聞いたがルナは学園でもトップの成績で頭も良くて魔術も上手らしい。
魔術はイザベラさんに小さな頃から教え込まれていると言っていた。
ちなみにソルは勉強と魔術はからっきしだが剣術はトップだと自慢していた。
「ハイルさん。兄様と仲良くなったんですね」
「うん。今はアストさんに触れても大丈夫だし、近くで話をするのも平気なんだ」
「よかったです。兄様いつもハイルさんの話ばかりするから」
「僕のことって…温室で二人でダラダラしてるだけなのに何を話してるんだろ…」
「ふふ。内緒です」
「えぇ~」
ルナはクスクスと笑いアストさんが何を話していたのかは秘密にされた。
「でも本当によかったです…。兄様にとってハイルさんは特別な存在だから…」
「特別…?」
「はい。特別です!」
「そっか…特別かぁ…」
ルナの言っている『特別な存在』の意味はよく分からなかったが、誰かの特別だと言われる事はとても嬉しくて…少し恥ずかしかった。
✳︎✳︎
「ハイル!今日は遅かったな」
ルナとの勉強が終わり温室へと向かうと先に来ていたアストさんが出迎えてくれる。
以前よりも一緒に過ごす時の距離は近くなり、今では少し間を開けて隣同士でソファーに座れるようになった。
「こんにちはアストさん。さっきまでルナに勉強を教えてもらってたんです」
「そうか。お疲れ様」
アストさんはそう言うと、ソファーをポンポンと叩き早く隣に座って欲しそうに微笑みかけてくる。
『兄様にとってハイルさんは特別な存在だから』
ソファーへと向かっている途中にさっきのルナの言葉を思い出してしまい、アストさんの事を意識してしまう。
普段なら何も考えずに隣に座るのだが、今日はなんだか恥ずかしくて…いつもより距離をとって座った。
「…ハイル?どうかしたか?」
「へっ!?いや、ど、どうもしてませんよ!」
僕の挙動不審な態度が気になるのかアストさんはじぃ…っと僕を見つめてる。
バチッと目が合えば思わず目を逸らしてしまう。
「…離れた方がいいか?」
アストさんの言葉に逸らしていた目線を戻すと、悲しげな顔でこちらを見ていた。
僕は首を横に振りアストさんを見つめる。
「あの…ごめんなさい。僕…今日はなんだかおかしくて…」
「おかしい?…体調が悪いのか?熱でもあるのか?」
心配そうな顔でグイっと近づかれると思わず固まってしまう。
アストさんは僕の指先をそっと握ると「大丈夫か?」と瞳を不安げに揺らし覗き込んでくる。
「大丈夫…です…」
「だが…顔が赤いぞ?」
「へっ!?」
アストさんにそう言われて意識しだすと更に顔が熱くなり鼓動が早くなる。
なんでこんなにドキドキしているのか自分でもわからずに、その日はアストさんに色々と心配されながら過ごした。
この気持ちは何だったのだろう…
自分でも自分の気持ちがよく分からず僕はその晩悩みながら眠りについた。
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