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第一章
31話
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ガイルさん達との訓練を頑張っているアストさんは日に日に変わっていき片言だった言葉も今ではスラスラと話せるようになっていく。
そして食事のマナーも身につけアストさんは今日から食事も一緒に食べることになった。
アストさんはソルとルナの隣に座り、机を挟んで向かい合う僕とは一番離れた席を準備されていた。
「ハイル…大丈夫か?」
「はい。大丈夫です」
僕の隣で少し心配そうな表情でガイルさんが話しかけてくれるので笑顔でそう返事する。
アストさんとは温室で一緒に過ごす事も多く、最近では色々と話もするようになった。
一緒の空間にいる事に恐怖は感じないが、まだ触れたりするのは怖くて…一定の距離は保ったままだ。
ソルとルナはアストさんと一緒に食事をするのが嬉しいのかアストさんを挟んでワイワイと楽しそうに話をしている。
こう見ると…兄弟だから三人とも似ているな…。
そう思いながら三人を見ていると食事が配膳される。今日も美味しそうな食事が並び食べ始めていくがアストさんの事が気になってチラリとそちらに目線を向ける。
アストさんはナイフもフォークも上手に使い食事をしていた。
まだ内面は幼さが残るところもあるが、こうやって見れば普通の青年にしか見えない。
凶獣化しなければ…アストさんもガイルさんのような立派な獅子の青年になれていたんだんだろうな…。
そう思いアストさんを見ていると目が合いニカッと微笑みかけてくれる。
ドキッとして思わずパッと目を背けると、アストさんは眉毛をハの字に下げて悲しそうな顔を見せる。
ルナはそんな表情を見せるアストさんに気づいたのかヨシヨシと撫でて慰めていた。
✳︎
食事が終わり部屋へと戻るとルナが部屋へと訪ねてきた。
「ルナ。どうしたの?」
「あの…ハイルさんは、まだ兄様が怖いですか?」
ルナのストレートな質問に思わずドキリとしてしまう。
アストさんに対する恐怖を感じる事はない。
最近はどちらかというと僕の方がアストさんの事を意識している気がするくらいだ…。
「ううん…。前はとても怖かったけれど…今は怖くないよ」
「ほんと!よかった!兄様ハイルさんに怖がられて…嫌われてるんじゃないかって凄くしょげてたからその言葉を聞いたら喜びます」
ルナは僕の返事に嬉しそうな表情を浮かべた。
凶獣化が戻ったばかりのアストさんに抱きつかれた時は本当に恐怖しかなかった…。
でも、それからアストさんは時間をかけて僕に近づいてきてくれた。
自分自身の事だけでも大変な毎日だったはずなのに、僕が怖がらないようにと気にかけてくれて…。
アストさんを助けたいと思って凶獣化を治したはずなのに僕は何をやってるんだ…!
ちゃんと僕もアストさんと向き合わないと…。
そして食事のマナーも身につけアストさんは今日から食事も一緒に食べることになった。
アストさんはソルとルナの隣に座り、机を挟んで向かい合う僕とは一番離れた席を準備されていた。
「ハイル…大丈夫か?」
「はい。大丈夫です」
僕の隣で少し心配そうな表情でガイルさんが話しかけてくれるので笑顔でそう返事する。
アストさんとは温室で一緒に過ごす事も多く、最近では色々と話もするようになった。
一緒の空間にいる事に恐怖は感じないが、まだ触れたりするのは怖くて…一定の距離は保ったままだ。
ソルとルナはアストさんと一緒に食事をするのが嬉しいのかアストさんを挟んでワイワイと楽しそうに話をしている。
こう見ると…兄弟だから三人とも似ているな…。
そう思いながら三人を見ていると食事が配膳される。今日も美味しそうな食事が並び食べ始めていくがアストさんの事が気になってチラリとそちらに目線を向ける。
アストさんはナイフもフォークも上手に使い食事をしていた。
まだ内面は幼さが残るところもあるが、こうやって見れば普通の青年にしか見えない。
凶獣化しなければ…アストさんもガイルさんのような立派な獅子の青年になれていたんだんだろうな…。
そう思いアストさんを見ていると目が合いニカッと微笑みかけてくれる。
ドキッとして思わずパッと目を背けると、アストさんは眉毛をハの字に下げて悲しそうな顔を見せる。
ルナはそんな表情を見せるアストさんに気づいたのかヨシヨシと撫でて慰めていた。
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食事が終わり部屋へと戻るとルナが部屋へと訪ねてきた。
「ルナ。どうしたの?」
「あの…ハイルさんは、まだ兄様が怖いですか?」
ルナのストレートな質問に思わずドキリとしてしまう。
アストさんに対する恐怖を感じる事はない。
最近はどちらかというと僕の方がアストさんの事を意識している気がするくらいだ…。
「ううん…。前はとても怖かったけれど…今は怖くないよ」
「ほんと!よかった!兄様ハイルさんに怖がられて…嫌われてるんじゃないかって凄くしょげてたからその言葉を聞いたら喜びます」
ルナは僕の返事に嬉しそうな表情を浮かべた。
凶獣化が戻ったばかりのアストさんに抱きつかれた時は本当に恐怖しかなかった…。
でも、それからアストさんは時間をかけて僕に近づいてきてくれた。
自分自身の事だけでも大変な毎日だったはずなのに、僕が怖がらないようにと気にかけてくれて…。
アストさんを助けたいと思って凶獣化を治したはずなのに僕は何をやってるんだ…!
ちゃんと僕もアストさんと向き合わないと…。
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