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第一章
24話 〜ガイルSide〜
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「ハイルくん…泣いてたわ…」
「あぁ…。酷い事を言ってしまったな…」
ハイルの様子を見に行ってくれたイザベラは目を赤く腫らし帰ってくる。
酷い言葉をぶつけてしまった自分に苛立ち髪をぐしゃっと掻き乱す。
『人であるハイルには関係のない事だ』
酷い言葉だな…。
この言葉を突きつけた時、ハイルの瞳は一瞬にして失望の色に染まった。
いつかハイルがアストの事を知る時が来るだろうと覚悟はしていた。
アストの存在に恐怖すると思っていたのだが、まさか助けたいと言ってくるとは思わなかった。
ハイルは血を舐めさせるだけだから大丈夫だと言っていたが、凶獣化の治療の為に何千何万もの人が血を流し無残に死んでいる。
それが分かっていてハイルを危険な目に合わせる事はできない…。
例え自分の息子の為でも…。
アストが凶獣化したのは13歳の春。
元々イザベラに似てアストの魔力は高く凶獣化しないように小さな頃からイザベラと魔力をコントロールできるように訓練していた。
アストは努力家で辛いはずの魔力コントロールの訓練も嫌な顔せずに取り組んでいた。
『俺は凶獣化になんて負けない…。もっと力をつけていつか父さんみたいに騎士になるんだ!』
アストはいつも笑顔で『将来は騎士になる!』と夢を語っていた。
魔力のコントロールは上手くいき魔力が暴走しやすい10歳を迎えてもアストは凶獣化しなかった。
このまま無事に成長していってくれれば…そう皆が思っていた時にアストは突然凶獣化してしまう。
イザベラはアストを凶獣化させてしまったのは自分のせいだと責め、狂ったように治療法を探しては試していく。
人の血液が残っていたと噂を聞いては紛い物の獣の血を手に入れ飲ませ、凶獣化を治す効果のある魔道具があると怪しい人物から売り込まれても疑う事なく高価な魔道具を買っていく。
そして、最後には奇妙な宗教にのめり込んでいった…。
そんなイザベラを止める事が出来ず、まだ幼かったソルとルナは変わりゆく母親と獣になってしまった兄を見て怯えていた。
追い討ちをかけるように、凶獣化したアストは手がつけられない程に暴れる獰猛な獣となり、イザベラと私はアストに何度も謝り涙を堪えながら拘束具をつけ檻に閉じ込めた…。
イザベラも私も…家族皆が限界だった。
ボロボロになった私達を見た両親は、王都を離れ辺境地に所有していたこの土地の領主をしながら自然と共に過ごしてみるのはどうかと提案してくれた。
イザベラはアストの治療法を探すならば王都にいた方がいいと拒否したが、ずっと拘束具を付け檻に入れられたアストの気分転換と家族での旅行も兼ねて辺境地へと行こうと提案すると渋々納得してくれた。
王都から遠く離れた辺境地は王都の様に近代的で利便性のいい場所ではなかったが、緑が多くのどかな風景が広がり見ているだけで穏やかな気持ちにしてくれた。
ソルとルナは家族で行く旅行に嬉しそうに大はしゃぎしていた。
目的地の屋敷へと到着すると屋敷を管理している執事のゴードンとフィッツが出迎えてくれる。
私の両親からアストの様子を聞いていたゴードンは離れにある小さな屋敷の一室を改修し、アストが過ごせるようにしてくれていた。
頑丈な鉄格子はあるものの、日当たりの良い部屋に興味を示しアストは部屋の中をグルグルと何度か歩き回るとお気に入りの場所を見つけ横になる。
いつも獲物を狙うような目付きで牙を剥き私達に敵意を見せていたのが嘘のように、落ち着いた様子を見せるアストの姿にイザベラは安堵し緊張の糸が切れたように涙を流した。
「イザベラ…大丈夫かい…」
「ガイル…。私…ここで皆と過ごしたい…」
「あぁ…そうだな」
それから私は勤めていた騎士団を辞め家族皆とこの土地に移り住む。
イザベラも、でたらめな噂話や周りからの哀れみの目から解放され徐々に以前の優しいイザベラに戻っていく。
ソルとルナもこの土地を気に入り、バラバラになった家族はまた一つになった。
そして月日は流れ…あの日、私達はハイルと出会う。
探し求めていたアストの凶獣化を治すことができる『人』を目の前に喜ぶ気持ちよりも、同族がこんな小さな少年を道具のように扱っていた事に怒りを覚えた。
それからは、ハイルが元気になる事…それだけを願いながら一緒に過ごしていった。
笑い合い、時には喧嘩もして…ハイルはいつしか皆にとって大切な存在になっていった。
もう…あの子を傷つけるような事をしてはいけないんだ…。
「アスト…すまない…」
書斎の本棚に飾ってあるアストの写真を見つめ私はそう呟く事しかできなかった。
「あぁ…。酷い事を言ってしまったな…」
ハイルの様子を見に行ってくれたイザベラは目を赤く腫らし帰ってくる。
酷い言葉をぶつけてしまった自分に苛立ち髪をぐしゃっと掻き乱す。
『人であるハイルには関係のない事だ』
酷い言葉だな…。
この言葉を突きつけた時、ハイルの瞳は一瞬にして失望の色に染まった。
いつかハイルがアストの事を知る時が来るだろうと覚悟はしていた。
アストの存在に恐怖すると思っていたのだが、まさか助けたいと言ってくるとは思わなかった。
ハイルは血を舐めさせるだけだから大丈夫だと言っていたが、凶獣化の治療の為に何千何万もの人が血を流し無残に死んでいる。
それが分かっていてハイルを危険な目に合わせる事はできない…。
例え自分の息子の為でも…。
アストが凶獣化したのは13歳の春。
元々イザベラに似てアストの魔力は高く凶獣化しないように小さな頃からイザベラと魔力をコントロールできるように訓練していた。
アストは努力家で辛いはずの魔力コントロールの訓練も嫌な顔せずに取り組んでいた。
『俺は凶獣化になんて負けない…。もっと力をつけていつか父さんみたいに騎士になるんだ!』
アストはいつも笑顔で『将来は騎士になる!』と夢を語っていた。
魔力のコントロールは上手くいき魔力が暴走しやすい10歳を迎えてもアストは凶獣化しなかった。
このまま無事に成長していってくれれば…そう皆が思っていた時にアストは突然凶獣化してしまう。
イザベラはアストを凶獣化させてしまったのは自分のせいだと責め、狂ったように治療法を探しては試していく。
人の血液が残っていたと噂を聞いては紛い物の獣の血を手に入れ飲ませ、凶獣化を治す効果のある魔道具があると怪しい人物から売り込まれても疑う事なく高価な魔道具を買っていく。
そして、最後には奇妙な宗教にのめり込んでいった…。
そんなイザベラを止める事が出来ず、まだ幼かったソルとルナは変わりゆく母親と獣になってしまった兄を見て怯えていた。
追い討ちをかけるように、凶獣化したアストは手がつけられない程に暴れる獰猛な獣となり、イザベラと私はアストに何度も謝り涙を堪えながら拘束具をつけ檻に閉じ込めた…。
イザベラも私も…家族皆が限界だった。
ボロボロになった私達を見た両親は、王都を離れ辺境地に所有していたこの土地の領主をしながら自然と共に過ごしてみるのはどうかと提案してくれた。
イザベラはアストの治療法を探すならば王都にいた方がいいと拒否したが、ずっと拘束具を付け檻に入れられたアストの気分転換と家族での旅行も兼ねて辺境地へと行こうと提案すると渋々納得してくれた。
王都から遠く離れた辺境地は王都の様に近代的で利便性のいい場所ではなかったが、緑が多くのどかな風景が広がり見ているだけで穏やかな気持ちにしてくれた。
ソルとルナは家族で行く旅行に嬉しそうに大はしゃぎしていた。
目的地の屋敷へと到着すると屋敷を管理している執事のゴードンとフィッツが出迎えてくれる。
私の両親からアストの様子を聞いていたゴードンは離れにある小さな屋敷の一室を改修し、アストが過ごせるようにしてくれていた。
頑丈な鉄格子はあるものの、日当たりの良い部屋に興味を示しアストは部屋の中をグルグルと何度か歩き回るとお気に入りの場所を見つけ横になる。
いつも獲物を狙うような目付きで牙を剥き私達に敵意を見せていたのが嘘のように、落ち着いた様子を見せるアストの姿にイザベラは安堵し緊張の糸が切れたように涙を流した。
「イザベラ…大丈夫かい…」
「ガイル…。私…ここで皆と過ごしたい…」
「あぁ…そうだな」
それから私は勤めていた騎士団を辞め家族皆とこの土地に移り住む。
イザベラも、でたらめな噂話や周りからの哀れみの目から解放され徐々に以前の優しいイザベラに戻っていく。
ソルとルナもこの土地を気に入り、バラバラになった家族はまた一つになった。
そして月日は流れ…あの日、私達はハイルと出会う。
探し求めていたアストの凶獣化を治すことができる『人』を目の前に喜ぶ気持ちよりも、同族がこんな小さな少年を道具のように扱っていた事に怒りを覚えた。
それからは、ハイルが元気になる事…それだけを願いながら一緒に過ごしていった。
笑い合い、時には喧嘩もして…ハイルはいつしか皆にとって大切な存在になっていった。
もう…あの子を傷つけるような事をしてはいけないんだ…。
「アスト…すまない…」
書斎の本棚に飾ってあるアストの写真を見つめ私はそう呟く事しかできなかった。
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