人が消えた世界で

赤牙

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第一章

14話

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食事が終わる頃、部屋のドアをノックする音が聞こえる。

「イザベラ様。お客様がお見えです」
「あら……。少し待っていただくように伝えて」
「それが……急用との事なので……」
「ハイルくんの食事が終わったばかりなのよ……」

イザベラさんはそう言うと僕の方を見てくる。

「ねぇハイルくん。あと、体を綺麗に拭いて着替える予定だったんだけど……私の代わりにそこにいるゴードンに頼んでもいいかしら?」

『体を拭く』という言葉に思わず反応してしまう。
女性に裸を見られるなんて…恥ずかしくて無理だ…。

「大丈夫です……」

そう答えるとイザベラさんはドアの向こうにいるゴードンさんへと事情を話す。

「失礼します」と、言って部屋へ入ってきたのは馬の半獣人。
白髪混じりの髪の毛を綺麗に整えた気品あふれる雰囲気の老紳士に僕は緊張してしまう。

「ゴードンはこの屋敷の執事なの。何でもできるから困ったことがあれば頼ってね」
「ハイル様。ゴードンです。どうぞよろしくお願いします」

礼儀正しく僕にお辞儀してくるゴードンさんに、ちゃんとした礼儀作法なんて知らない僕は「よろしくお願いします……」と、今にも消えてしまいそうな声でボソボソと挨拶する。

イザベラさんが部屋を出てゴードンさんと二人きりになると、部屋のクローゼットから着替えやタオルを取り出しお湯を準備したりと……テキパキと動いていく。

「さぁハイル様。体を拭いてもよろしいですか?」
「は、はい……お願いします……」

僕が緊張しているのが分かったのか優しく微笑みかけられ温かいタオルで体を拭かれる。

気持ちいい……。
体を温めるように少し熱めのタオルで肩を覆われると思わず顔が緩み「はぁ~」と、声を漏らしてしまう。
僕の表情にゴードンさんも頬を緩ませ「気持ちいいですか?」と、聞いてくるのでコクコクと頷く。

ゴードンさんは言葉数は少ないが、その落ち着いた雰囲気に包まれると安心してしまう……。

体を綺麗に拭かれると着替えまで手伝ってくれる。
ずっと寝たままだった体は着替えをするだけでも一苦労だった。だが、サッパリした体と新しい服がとても気持ちいい……。

「着替えも済みましたが、他にお手伝いが必要な事はありませんか?」
「大丈夫です」
「では、何かあればこの鈴でお呼び下さい。すぐに参りますので……」

ゴードンさんはそう言うと僕に一礼して部屋を出て行く。

「あ、あの!……ありがとうございました」

僕がそう声をかけるとゴードンさんは口元を綻ばせまた一礼して部屋を出ていく。


本当にここにいる人達は優しい人ばかりだ…。
そう思いながらベッドで横になると、満腹感と適度な疲労感に眠気が強くなる。
そして僕はそのまま夢の中へと落ちていった。
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