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第一章
8話〜ガイルSide〜
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「この部屋か!」
ようやく地下通路を見つけ奥に進むと結界が張られた部屋を見つける。
「どいて! 私が開けるから!」
イザベラが鬼気迫る顔で割って入り結界へと手をかざす。
「あぁ~もうっ! なんてまどろっこしい術式かけてんのよ! こうなったらぁ……力技よ!」
ありったけの魔力を流し込んでいるのかビキビキとドアが軋む。
イザベラが最後の一押しとばかりに力を込めて魔力を流し込むとドアが破壊される。
ぱらぱらと木屑が飛び部屋の中の空気が外へと漂ってくるのだが…
「ゔっ…!? 酷い匂い…」
鼻が効く半獣人にはあまりにもキツい匂いに思わず顔をしかめてしまう。
アンモニア臭など様々な臭いが混じり強烈な異臭が部屋の中には充満していた。
部屋の中を見渡すと机とベッドが一つ…。
そしてベッドに横たわる少年が見えた。
「あぁ……うそ……」
イザベラは走り出し少年の方へと駆け寄り、恐る恐る触れるが少年はピクりとも動かない…。
やはり……間に合わなかったのか……
「まだ息がある! 治癒魔術が使える人は来て! 私治癒魔術は初期しか使えないのよ!」
イザベラは自分ができる治癒魔術をかけながら声を張り上げる。
「イザベラ……少年は生きているのか…?」
「ええ。かろうじて……。ただこのままじゃ死んでしまうわ。応急処置が終わったら早く屋敷へ連れて帰りましょう!」
イザベラはそう言うと、ぐったりと横たわる少年に必死に治癒魔術をかけ続ける。
魔術の使えない私は屋敷へ連絡を入れ、すぐに治療ができるように手配をする。
イザベラ達の応急処置が終えると少年を私の上着で包み込み館へと運んでいく。
頼む……。助かってくれ……。
最初に見つけた時よりも顔色は少し良くなった気がするが、まだ意識は戻らない。
少年に負担がかからないようにしっかりと抱きしめ馬の手綱を握る。
出来る限り揺らさないように…だが早く…。
館へと到着すると同時に玄関先で待機していた羊の半獣人の女性が駆け寄る。
「マリオン! 早く治療を!」
「準備はできてるわ! 色々聞きたいことあるけどまずは状態を確認させて! さぁ、早く部屋へ!」
部屋の一つを少年の治療ができるように準備されベッドや医療用の道具が並ぶ。
「脱水……栄養失調……極度の貧血……。酷い状態ね…。これは魔術でどうこうなる状態じゃないわ。さあ、準備していた点滴持ってきて」
少年の体を診察しながらマリオンはテキパキと処置を行っていく。
少年の腕へと点滴の針が入るがその痛みでも少年は目を覚まさない。
このまま目覚めないじゃないかと心配になる…。
私は結局何も出来ずにただ見守る事しかできなかった…
無意識に拳を握りしめると、イザベラがそっとその手を優しく包み込んでくれる。
「あの子は大丈夫だろうか……」
「大丈夫よ。きっとマリオンが元気にしてくれるわ」
「あぁ……そうだな。すまない弱気になって」
私とイザベラはマリオン達の邪魔にならぬようそっと部屋を後にする。
今、私にできる事は少年が無事に目を覚ます事をただ祈るだけだ。
ようやく地下通路を見つけ奥に進むと結界が張られた部屋を見つける。
「どいて! 私が開けるから!」
イザベラが鬼気迫る顔で割って入り結界へと手をかざす。
「あぁ~もうっ! なんてまどろっこしい術式かけてんのよ! こうなったらぁ……力技よ!」
ありったけの魔力を流し込んでいるのかビキビキとドアが軋む。
イザベラが最後の一押しとばかりに力を込めて魔力を流し込むとドアが破壊される。
ぱらぱらと木屑が飛び部屋の中の空気が外へと漂ってくるのだが…
「ゔっ…!? 酷い匂い…」
鼻が効く半獣人にはあまりにもキツい匂いに思わず顔をしかめてしまう。
アンモニア臭など様々な臭いが混じり強烈な異臭が部屋の中には充満していた。
部屋の中を見渡すと机とベッドが一つ…。
そしてベッドに横たわる少年が見えた。
「あぁ……うそ……」
イザベラは走り出し少年の方へと駆け寄り、恐る恐る触れるが少年はピクりとも動かない…。
やはり……間に合わなかったのか……
「まだ息がある! 治癒魔術が使える人は来て! 私治癒魔術は初期しか使えないのよ!」
イザベラは自分ができる治癒魔術をかけながら声を張り上げる。
「イザベラ……少年は生きているのか…?」
「ええ。かろうじて……。ただこのままじゃ死んでしまうわ。応急処置が終わったら早く屋敷へ連れて帰りましょう!」
イザベラはそう言うと、ぐったりと横たわる少年に必死に治癒魔術をかけ続ける。
魔術の使えない私は屋敷へ連絡を入れ、すぐに治療ができるように手配をする。
イザベラ達の応急処置が終えると少年を私の上着で包み込み館へと運んでいく。
頼む……。助かってくれ……。
最初に見つけた時よりも顔色は少し良くなった気がするが、まだ意識は戻らない。
少年に負担がかからないようにしっかりと抱きしめ馬の手綱を握る。
出来る限り揺らさないように…だが早く…。
館へと到着すると同時に玄関先で待機していた羊の半獣人の女性が駆け寄る。
「マリオン! 早く治療を!」
「準備はできてるわ! 色々聞きたいことあるけどまずは状態を確認させて! さぁ、早く部屋へ!」
部屋の一つを少年の治療ができるように準備されベッドや医療用の道具が並ぶ。
「脱水……栄養失調……極度の貧血……。酷い状態ね…。これは魔術でどうこうなる状態じゃないわ。さあ、準備していた点滴持ってきて」
少年の体を診察しながらマリオンはテキパキと処置を行っていく。
少年の腕へと点滴の針が入るがその痛みでも少年は目を覚まさない。
このまま目覚めないじゃないかと心配になる…。
私は結局何も出来ずにただ見守る事しかできなかった…
無意識に拳を握りしめると、イザベラがそっとその手を優しく包み込んでくれる。
「あの子は大丈夫だろうか……」
「大丈夫よ。きっとマリオンが元気にしてくれるわ」
「あぁ……そうだな。すまない弱気になって」
私とイザベラはマリオン達の邪魔にならぬようそっと部屋を後にする。
今、私にできる事は少年が無事に目を覚ます事をただ祈るだけだ。
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