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第一章
2話
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森での生活も3ヶ月が経ち今のところ大きな問題もなく過ごせている。
満月の次の日に大人達は秘密の場所に集まり生存確認と現状の報告や次に向かう場所の話し合いをしている。
昨日は満月だったので父さんは集会へと向かう予定だ。
「ハイル。父さんが出かけている間は森をうろつくんじゃないぞ」
「分かってるよ。僕も、もう15になるんだから子ども扱いしないでよ」
「はは。そうだな。じゃあ行ってくるよ」
父さんを見送り僕は朝食の後片付けなどを行なっていく。
家事も終わればやる事も無くなり、木の根に腰掛けぼーっとして過ごす。
「暇だ……。そういえば昨日仕掛けた罠…どうなってるかなぁ…」
父さんが帰ってきた時にお肉食べさせてあげたいな。
森をうろつくなと言われたけれど仕掛けた罠はここから近いから大丈夫だろう…そう思い僕は仕掛けた罠へと向かった。
「あっ! また兎が罠にかかってる!」
僕は嬉しくなって罠の方へと向かい捕まえた兎を袋へ入れる。今日捕まえた兎は丸々と太っていた。
父さん喜ぶだろうな…。
そんな事を考えていると背後からガサッと音が聞こえ…それと同時に僕の視界は真っ暗になる。
「えっ!? な、何っ??」
突然の出来事に驚き慌てて視界を覆う物へと手を伸ばす。
袋?なんで……?
麻のような袋を頭に被せられた事を理解したと同時に僕の体は宙に浮き誰かに担がれる。
「やだ! おいっ! 離せっ!!」
手足をジタバタさせ背中や腹部を殴ったり蹴ったりするが担いでいる奴には効果が無い。
くそっっ……それなら…
腕も相手の頭へと伸ばし髪を引っ張っろうとすると僕には無いものが手に触れる。
髪の毛とは明らかに違うものが頭に付いている。
柔らかくてふわふわしていて…
「半獣……人…」
そんな…嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だッッッ!!
逃げないと………殺される…!
そう思い手に触れた半獣人の耳を思いっきり引っ張ると「痛っっ!!」と半獣人が声をあげて担いでいた腕の力が少し緩む。
その隙に背中側から転がり落ちるように逃げ出し麻の袋を脱ぎ捨て必死に森の中を走る。
嫌だ…死にたくない……。
葉や枝を手ではらいながら森の中を全力で走っていく。心臓はバクバクと跳ね息をする度に肺が痛い。
木の根が張り出し何度も足を取られそうになりながら必死になって逃げ、木の影に隠れる。
半獣人が追ってくる足跡は聞こえない…。
ハァハァと息を整えてそっと後ろを見るが、さっきの半獣人は見当たらない。
恐怖と疲労で足はガクガクと震え今にも座り込んでしまいそうだ…。
「よかった…逃げれ……」
「んなわけねーだろ」
声がした木の上を見上げると、さっきの半獣人がニタァと笑みを浮かべたと同時に僕へと襲いかかってきて…
僕の意識はそこで途絶えてしまった。
✳︎
ガタゴトと揺れを感じて僕は目を覚ます。
顔には捕まった時と同じように麻の袋がかけられていて周りはほとんど見えない。
手足も縄で結ばれて身動き取れない…。
しばらくすると馬車が止まり、襟足を掴まれて無理矢理起こされると足の縄だけ外された。
「おら。さっさと歩け」
森で出会った半獣人の声が頭上で聞こえる。
ひんやりとした外の空気から建物の中に入ったのか急に暖かくなる。
しばらく歩かされるとドアが開く音がして、もう一人足音が増える。
「ほら頼まれた品だ」
「はは。待ってたよ……。ほら金だ」
「……確かに。人間なんてどうするんだ?お前には必要ないだろ…」
「まぁ、研究も兼ねて必要なんだ」
「ふーん……。まぁ、あまり無理するなよ。この家にかけてるバカデカい結界も相当魔力使ってんだろ? また心臓に負担がかかるぞ」
「はいはいはい。強大な魔術を使うにはリスクが伴う事なんて言われなくても分かってるよ。じゃあ、また用があったら連絡するから」
「はぁ……。相変わらず勝手な奴だな。じゃあまたな」
『研究』と言っていたが…僕は生きたまま何かされるのだろうか…。僕は2人の会話を聞き震えが止まらなかった。
僕を捕まえた半獣人がいなくなると、頭に被せられた袋が外される。
突然明るくなった視界に目を細めて正面を見ると背の高い狐の半獣人がいた。
黄金色の耳をピクピクと動かしながら狐の半獣人は僕の事をジロジロと品定めするように見てくる。
「あの僕……」
「自分がどうなったか知りたいんだろ? 君は私に買われたんだよ。面倒だからついでにこれから君がどうなるか説明しておくね。君にはこれから『凶獣化』した半獣人の元へと行って凶獣化を癒してもらう。仕事はそれだけだよ」
狐の半獣人は満面の笑みを浮かべ僕にそう告げた。
満月の次の日に大人達は秘密の場所に集まり生存確認と現状の報告や次に向かう場所の話し合いをしている。
昨日は満月だったので父さんは集会へと向かう予定だ。
「ハイル。父さんが出かけている間は森をうろつくんじゃないぞ」
「分かってるよ。僕も、もう15になるんだから子ども扱いしないでよ」
「はは。そうだな。じゃあ行ってくるよ」
父さんを見送り僕は朝食の後片付けなどを行なっていく。
家事も終わればやる事も無くなり、木の根に腰掛けぼーっとして過ごす。
「暇だ……。そういえば昨日仕掛けた罠…どうなってるかなぁ…」
父さんが帰ってきた時にお肉食べさせてあげたいな。
森をうろつくなと言われたけれど仕掛けた罠はここから近いから大丈夫だろう…そう思い僕は仕掛けた罠へと向かった。
「あっ! また兎が罠にかかってる!」
僕は嬉しくなって罠の方へと向かい捕まえた兎を袋へ入れる。今日捕まえた兎は丸々と太っていた。
父さん喜ぶだろうな…。
そんな事を考えていると背後からガサッと音が聞こえ…それと同時に僕の視界は真っ暗になる。
「えっ!? な、何っ??」
突然の出来事に驚き慌てて視界を覆う物へと手を伸ばす。
袋?なんで……?
麻のような袋を頭に被せられた事を理解したと同時に僕の体は宙に浮き誰かに担がれる。
「やだ! おいっ! 離せっ!!」
手足をジタバタさせ背中や腹部を殴ったり蹴ったりするが担いでいる奴には効果が無い。
くそっっ……それなら…
腕も相手の頭へと伸ばし髪を引っ張っろうとすると僕には無いものが手に触れる。
髪の毛とは明らかに違うものが頭に付いている。
柔らかくてふわふわしていて…
「半獣……人…」
そんな…嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だッッッ!!
逃げないと………殺される…!
そう思い手に触れた半獣人の耳を思いっきり引っ張ると「痛っっ!!」と半獣人が声をあげて担いでいた腕の力が少し緩む。
その隙に背中側から転がり落ちるように逃げ出し麻の袋を脱ぎ捨て必死に森の中を走る。
嫌だ…死にたくない……。
葉や枝を手ではらいながら森の中を全力で走っていく。心臓はバクバクと跳ね息をする度に肺が痛い。
木の根が張り出し何度も足を取られそうになりながら必死になって逃げ、木の影に隠れる。
半獣人が追ってくる足跡は聞こえない…。
ハァハァと息を整えてそっと後ろを見るが、さっきの半獣人は見当たらない。
恐怖と疲労で足はガクガクと震え今にも座り込んでしまいそうだ…。
「よかった…逃げれ……」
「んなわけねーだろ」
声がした木の上を見上げると、さっきの半獣人がニタァと笑みを浮かべたと同時に僕へと襲いかかってきて…
僕の意識はそこで途絶えてしまった。
✳︎
ガタゴトと揺れを感じて僕は目を覚ます。
顔には捕まった時と同じように麻の袋がかけられていて周りはほとんど見えない。
手足も縄で結ばれて身動き取れない…。
しばらくすると馬車が止まり、襟足を掴まれて無理矢理起こされると足の縄だけ外された。
「おら。さっさと歩け」
森で出会った半獣人の声が頭上で聞こえる。
ひんやりとした外の空気から建物の中に入ったのか急に暖かくなる。
しばらく歩かされるとドアが開く音がして、もう一人足音が増える。
「ほら頼まれた品だ」
「はは。待ってたよ……。ほら金だ」
「……確かに。人間なんてどうするんだ?お前には必要ないだろ…」
「まぁ、研究も兼ねて必要なんだ」
「ふーん……。まぁ、あまり無理するなよ。この家にかけてるバカデカい結界も相当魔力使ってんだろ? また心臓に負担がかかるぞ」
「はいはいはい。強大な魔術を使うにはリスクが伴う事なんて言われなくても分かってるよ。じゃあ、また用があったら連絡するから」
「はぁ……。相変わらず勝手な奴だな。じゃあまたな」
『研究』と言っていたが…僕は生きたまま何かされるのだろうか…。僕は2人の会話を聞き震えが止まらなかった。
僕を捕まえた半獣人がいなくなると、頭に被せられた袋が外される。
突然明るくなった視界に目を細めて正面を見ると背の高い狐の半獣人がいた。
黄金色の耳をピクピクと動かしながら狐の半獣人は僕の事をジロジロと品定めするように見てくる。
「あの僕……」
「自分がどうなったか知りたいんだろ? 君は私に買われたんだよ。面倒だからついでにこれから君がどうなるか説明しておくね。君にはこれから『凶獣化』した半獣人の元へと行って凶獣化を癒してもらう。仕事はそれだけだよ」
狐の半獣人は満面の笑みを浮かべ僕にそう告げた。
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