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第一章
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「父さん見て!今日は兎が罠にかかってたよ!」
「そうかそうか。やったなハイル」
巨体な大木が鬱蒼と茂るこの森で僕と父さんは村を離れ生活をしている。
森での生活は不自由な事も多いが慣れてしまえばそれが当たり前になっていく。
この世界は以前、僕達『人』で溢れ返っていたと聞く。
しかし、人が支配する世界がある日変わってしまう。
『半獣人』と呼ばれる獣と人の混じり合った種族の出現。
最初は数が少なく人に虐げられていた半獣人だったが、人よりも力が強く長く生きる性質の為、長い年月をかけて半獣人は数を増やし力をつけていった。
それから虐げられていた半獣人と人は対立し、大きな戦争が起こった。長期的な戦いはもちろん半獣人に軍配があがり世界は半獣人を中心に回るようになった。
そんな半獣人の世界で生きていくには人は弱く徐々に数を減らしていった。
しかし、力を得た半獣人達にも一つ頭を悩ませる問題を抱えていた。
それは『凶獣化』。
魔力が強い10代の半獣人が力をコントロールできずに獣化してしまい理性を無くした獣になってしまう事例が多く発生したのだ。
凶獣化した半獣人の治療法がなかなか見つからず、鎖に繋がれただの獣になった子ども達の数はどんどん増えていった。
そんな時に、ある不幸な出来事がきっかけで凶獣化の治療法が見つかる。
街中で突然凶獣化した子どもが近くにいた人を襲ったのだ。
子どもとはいえ凶獣化した半獣人に人が勝てる訳もなく、襲った人へ鋭い牙を深々と肉に食い込ませ辺りは血の匂いでむせ返る。
しかしここで凶獣化した半獣人の子どもに変化が現れる。さっきまでの獰猛さが消え大人しくなりその後凶獣化が解けたのだ。
それを見ていた半獣人達が人の血には凶獣化を治す力があるのではないかと噂が流れだした。
半獣人達はすぐに研究に取り掛かり検証していった。
その結果、人の匂いは凶獣化した者を癒し落ち着かせ血は凶獣化を抑える効果があると発表された。
それから人を奴隷にする半獣人が増え『人狩り』が頻発する。
凶獣化を抑える為に人間を飼う者もいれば、ただ娯楽の為に人間を飼う者、人間を虐げたい者…理由は様々だった。
人は半獣人に狩られる事を恐れ隠れるように生活をする者が増えた。
半獣人より短命な人は半獣人に消費されどんどん数を減らし今では絶滅手前だ。
最近になり半獣人の王も人の保護を謳いそれに賛同する者も増えたが裏では今尚『人狩り』は行われている。
そして、一週間前に僕達が住んでいた村の近くでも半獣人を見かけたという情報が入ってきた。
それからすぐに村の人々は散り散りに逃げるように村を離れ、この大きな森の中へと一時的に身を潜めている。
半年程森の中で過ごしながら、半獣人のいない安全な場所へと逃げる準備をしていく。
こんな生活を僕は生まれてから15年続けている。
村の場所を変えるのはこれで3回目だ。
場所を変えるたびに誰かいなくなる。
次に消えるのは自分の番かもしれない…そう思いながら僕達は生活をしている。
僕と父さんは大木の根の空洞に拠点を構えて生活している。
今日捕まえた兎を捌いて夕飯の準備をしていく。
父さんが見つけた山菜やキノコもあり今日はご馳走だった。
食事も済ませて森が暗くなると同時に僕達も眠る。
「ねぇ父さん…次はどんな場所に行くのかな…」
「そうだなぁ…次は川が近くにあるといいな。魚久しぶりに食べたいだろ?」
「…うん。村の皆元気かなぁ?早く会いたいね」
「あぁ。すぐに会えるさ。さぁ明日も朝からやる事があるから寝るぞ」
「うん…。おやすみ父さん」
「おやすみハイル」
父さんはすぐに寝息をたて眠る。
僕はなんだか眠れなくて月明かりに照らされている森を見つめて村の人達の事を考える。
村長は元気だろうか?
隣の家のチビ助達は我儘言ってオバさん達を困らせてないかな?
…大好きなあの子はどうしてるかな?
色々考えていると少しずつ眠たくなってくる。
神様…どうか皆と無事に再会できますように…。
毎日同じ事を神様に願い僕は瞼を閉じ眠りについた。
「そうかそうか。やったなハイル」
巨体な大木が鬱蒼と茂るこの森で僕と父さんは村を離れ生活をしている。
森での生活は不自由な事も多いが慣れてしまえばそれが当たり前になっていく。
この世界は以前、僕達『人』で溢れ返っていたと聞く。
しかし、人が支配する世界がある日変わってしまう。
『半獣人』と呼ばれる獣と人の混じり合った種族の出現。
最初は数が少なく人に虐げられていた半獣人だったが、人よりも力が強く長く生きる性質の為、長い年月をかけて半獣人は数を増やし力をつけていった。
それから虐げられていた半獣人と人は対立し、大きな戦争が起こった。長期的な戦いはもちろん半獣人に軍配があがり世界は半獣人を中心に回るようになった。
そんな半獣人の世界で生きていくには人は弱く徐々に数を減らしていった。
しかし、力を得た半獣人達にも一つ頭を悩ませる問題を抱えていた。
それは『凶獣化』。
魔力が強い10代の半獣人が力をコントロールできずに獣化してしまい理性を無くした獣になってしまう事例が多く発生したのだ。
凶獣化した半獣人の治療法がなかなか見つからず、鎖に繋がれただの獣になった子ども達の数はどんどん増えていった。
そんな時に、ある不幸な出来事がきっかけで凶獣化の治療法が見つかる。
街中で突然凶獣化した子どもが近くにいた人を襲ったのだ。
子どもとはいえ凶獣化した半獣人に人が勝てる訳もなく、襲った人へ鋭い牙を深々と肉に食い込ませ辺りは血の匂いでむせ返る。
しかしここで凶獣化した半獣人の子どもに変化が現れる。さっきまでの獰猛さが消え大人しくなりその後凶獣化が解けたのだ。
それを見ていた半獣人達が人の血には凶獣化を治す力があるのではないかと噂が流れだした。
半獣人達はすぐに研究に取り掛かり検証していった。
その結果、人の匂いは凶獣化した者を癒し落ち着かせ血は凶獣化を抑える効果があると発表された。
それから人を奴隷にする半獣人が増え『人狩り』が頻発する。
凶獣化を抑える為に人間を飼う者もいれば、ただ娯楽の為に人間を飼う者、人間を虐げたい者…理由は様々だった。
人は半獣人に狩られる事を恐れ隠れるように生活をする者が増えた。
半獣人より短命な人は半獣人に消費されどんどん数を減らし今では絶滅手前だ。
最近になり半獣人の王も人の保護を謳いそれに賛同する者も増えたが裏では今尚『人狩り』は行われている。
そして、一週間前に僕達が住んでいた村の近くでも半獣人を見かけたという情報が入ってきた。
それからすぐに村の人々は散り散りに逃げるように村を離れ、この大きな森の中へと一時的に身を潜めている。
半年程森の中で過ごしながら、半獣人のいない安全な場所へと逃げる準備をしていく。
こんな生活を僕は生まれてから15年続けている。
村の場所を変えるのはこれで3回目だ。
場所を変えるたびに誰かいなくなる。
次に消えるのは自分の番かもしれない…そう思いながら僕達は生活をしている。
僕と父さんは大木の根の空洞に拠点を構えて生活している。
今日捕まえた兎を捌いて夕飯の準備をしていく。
父さんが見つけた山菜やキノコもあり今日はご馳走だった。
食事も済ませて森が暗くなると同時に僕達も眠る。
「ねぇ父さん…次はどんな場所に行くのかな…」
「そうだなぁ…次は川が近くにあるといいな。魚久しぶりに食べたいだろ?」
「…うん。村の皆元気かなぁ?早く会いたいね」
「あぁ。すぐに会えるさ。さぁ明日も朝からやる事があるから寝るぞ」
「うん…。おやすみ父さん」
「おやすみハイル」
父さんはすぐに寝息をたて眠る。
僕はなんだか眠れなくて月明かりに照らされている森を見つめて村の人達の事を考える。
村長は元気だろうか?
隣の家のチビ助達は我儘言ってオバさん達を困らせてないかな?
…大好きなあの子はどうしてるかな?
色々考えていると少しずつ眠たくなってくる。
神様…どうか皆と無事に再会できますように…。
毎日同じ事を神様に願い僕は瞼を閉じ眠りについた。
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