美醜逆転した世界に転がり落ちたらイケメンたちに囲われました。

赤牙

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147話:一方その頃イケメン達は… ⑧ 〜ディランSide〜

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「今……カオルにかけている洗脳魔法は僕が主人だと思うように暗示をかけています……。洗脳魔法のメカニズムは……本来の人格を眠らせ真っ新まっさらな状態にして上書きするように自分が主人である事を教え込めばいいんです……。洗脳の程度にもよりますが、洗脳が解ければ上書きした人格は消滅してしまうはずなのに……。ここまではっきりと人格が残っている例は少ないですね……」

カオルはサリュイの話を不安そうな顔をして聞いている。

自分が作り出された人格だと知ることは恐ろしいよな……。

大丈夫だとカオルの頭を撫でてやると、少しホッとした表情へと変わる。


「人格が消えない例もあるということだが……その人格が残っていた例は何が原因だったんだ?」
「そうですね……。はっきりとした要因は分かってはいませんが、洗脳者への強烈な感情を抱いた者が多いですね」
「強烈な感情……」
「その者達は長い時間をかけて、酷い体罰や人間扱いされない程の調教を受けていたようです……」

サリュイはそう言うと私に厳しい視線を向け、それと同時にクリストファーは目を見開く。

「そんな……まさか叔父上……カオルに……」
「わ、私はそんな事は断じてしていないからな!! カオルに体罰や調教などするわけがないだろう!」

二人の険しい視線に慌てて弁解するが、その慌て方に二人はより一層渋い表情を向けてくる。
弁明しなくては……と、口を開いた瞬間、私よりも先にカオルが発言する。

「ディランさんは俺に酷い事なんてしてません!」

私が悪者になっていると思ったのかカオルは少し瞳を潤ませ私の服を掴み必死にそう訴えかける。
カオルの言葉に少し胸を撫で下ろし油断していると、カオルの訴えは続く……。

「ディランさんは俺に気持ちいい事しかしてませんからね! いっぱいいっぱいエッチしてくれて、俺いっつも気絶しちゃうくらいなんですから! 俺がご奉仕しないといけない立場なのに、いつも気持ち良くしてくれる優しい優しいご主人様なんですからっ!!」

カオルはいかに自分が大切にされているかを訴えたかったのだろうが……その訴えは逆効果だよカオル……。

クリストファーはショックを受けた様子でブツブツと何か呟きだし、サリュイはまた唇を噛み締め泣き出しそうな表情を浮かべる。
カオルはそんな二人を見てプイッと顔を背けて私の腹に顔を埋めてくる……。

「サリュイ殿。洗脳を解く方法を貴方は知っているのだろう?」
「…………はぃ」
「カオルを……洗脳から解放してくれないだろうか……」

私の言葉にサリュイは少し間を置いて小さく頷き、首に下げていたペンダントを取り外す。

「これは洗脳を解除する魔道具です。これを使えば……カオルの洗脳は解けます……」

目いっぱいに涙を浮かべながらサリュイはカオルの方へと近づいてくる。

「ねぇ……カオル。今のカオルは僕の事……嫌いかもしれないけど……一度顔を見せてくれないか……?」

震える声でサリュイが声を掛ければカオルは渋々顔を上げサリュイを見つめる。

「ありがとうカオル……。カオル……大好きだよ……」

サリュイがそう告げた時、またカオルの表情が変わり……今度は私の元を離れサリュイに抱きついてしまう。

「サリュイ様! 嫌です! 俺、サリュイ様と離れたくありません!」
「カオル……」
「俺と結婚してくれるんでしょ? 新婚旅行はサリュイ様のお気に入りの場所に連れて行ってくれるって言ったじゃないですかぁ……」

泣きじゃくりながらサリュイを求めるカオルは、どうやらサリュイの洗脳にかけられた人格に交代してしまったようだ……。
このままではサリュイが洗脳解除を断ってしまうかもしれない……と、思ったがサリュイは私の予想に反した言葉をカオルにかける。

「カオル……。僕はカオルと一緒にいられて幸せだった。けど、僕は本当のカオルと向き合うのを恐れ、逃げていた卑怯者なんだ」
「そんなこと……ないですよ……」
「ううん……。僕は寂しがり屋の臆病者で……人に嫌われたくなくて洗脳をかけた者しか自分の傍に置くことができなかったんだ。でも、カオルと出会って沢山の幸せをもらって……魔法なんかに頼らなくてもカオルを幸せにしたいって思っていたんだ。だから、今からする事は僕が望んでする事なんだ。カオル、僕のお願いを聞いてくれる?」

カオルはサリュイとの別れを知ってか涙をポロポロと流しながらもコクッと小さく頷く。

「サリュイ様……大好きです……」
「うん……。僕も大好きだよ……カオル」

二人は抱きしめ合い軽くキスを交わす。
エヘヘと嬉しそうに微笑むカオルにサリュイが洗脳解除の魔道具をカオルに渡せば、カオルの体は眩い光に包まる。



しばらくすると光は落ち着き、カオルが目を開ければ再び私の元へとサリュイから逃げるようにやってくる。

「ディランさん! 俺も……もう一人の俺みたいに消されちゃうの? またディランさんとさよならするの? 俺……嫌だよ……」

どうやら洗脳が解除されたのはサリュイのかけた洗脳だけだったようで、もう一人のカオルが泣きながら私に懇願してくる……。
小さな体を震わせて不安気に漆黒の瞳を揺らし……いっそこのままカオルを連れて逃げ出してしまいたいが、サリュイのカオルとの別れを見て私も覚悟を決める。

「カオル。怖がらなくて大丈夫だよ。元のカオルに戻るだけだから……。私はどんなカオルも愛している。カオルが望むならば私はずっとカオルの傍にいるから……」
「ディランさん……約束だよ……。ずっと俺の傍にいて……」
「あぁ。約束する」
「俺のこと……忘れないでいてくれる……?」
「忘れるわけないよ。私はずっとカオルの事を覚えているよ」

視線をカオルに合わせ頬を撫でれば、泣いていた顔も笑顔に変わる。

「カオル……愛してるよ」
「俺もディランさんを愛しています」

互いの気持ちを確認するように何度も愛を囁き合い、最後の口付けを交わす。
カオルは泣き顔を隠すように微笑みながら、サリュイから渡された魔道具を握りしめ再び眩い光に包み込まれた……。
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