美醜逆転した世界に転がり落ちたらイケメンたちに囲われました。

赤牙

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本章

145話:一方その頃イケメン達は… ⑥ 〜ディランSide〜

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『白い悪魔』ことサリュイ・ベルナールの居場所を見つけた私達はすぐにその場所へと向かう。
貴族の別邸として購入されたその屋敷には厳重な警備体制が敷かれており、そう簡単には侵入できないようになっていた。

「まぁ……隣国の要人の様な人物だからこれくらいは当たり前か……」
「ディランさん。どうしますか? 俺が一人で侵入してもいいですが……」

バルドの言葉に私は小さく首を横にふる。

「今はコソコソと動き回るよりも正面から行った方がいいだろう」
「正面……?」
「あぁ。第一王子の名で押し切る」

クリストファーに視線を向ければ頷き、私とクリストファーはサリュイ・ベルナールのいる屋敷へと向かった。

門前ではもちろん足止めをくらったが、王族のみが持てる紋章入りの指輪を見せれば門番は一気に顔色を変える。
門番がしどろもどろしている間に中へと入れば屋敷の使用人と思われる男が顔を青くしこちらに駆け寄ってくる。

「ク、クリストファー王子! 今日はどのようなご用件で……」
「ここにサリュイ・ベルナールが滞在していると聞いてな……。サリュイ・ベルナールと話をしたいのだが」

拒否など許さないと言いたげな冷たく低い声に使用人は小さく震えながら「こちらへ……」と、屋敷の中へと案内される。
だだっ広い応接間へと通されしばらくすると、部屋の扉が開き一人の少年が入ってくる。

怯える使用人とは対照的に堂々とした態度。
色素が抜けた真っ白な髪と肌……緋色の瞳……醜く歪んだその顔は仮面を装着していないせいか不気味さが増している。


「初めまして。サリュイ・ベルナールです。今日は一国の王子がどういった御用件でしょうか」

余裕があるのかサリュイは王子を目の前にしているというのにソファーへ座ると足を組みこちらに微笑みかけてくる。

「ここにカオルという少年がいると聞いてな……」
「カオル……? はて? 私も従者は数多くいますので全員の名前は把握しておりませんが……カオルと名乗る者をクリストファー王子に捧げればよろしいのでしょうか?」
「カオルは……何処だ……」
「何処だと言われましても……。カオルと名乗る者はこの国には溢れるくらいにいますので……とりあえず10人程カオルを御用意いたしましょうか? きっとクリストファー王子の気にいる『カオル』が見つかりますよ」
「っっ……ふざけるなっ!」

先程より顔を綻ばせ薄ら笑いを浮かべるサリュイの態度にクリストファーは苛立っているのかグッと拳を握りしめる。
相手のペースに傾きかけた所で私はゆっくりと口を開く。

「その少年は……クリストファー王子の婚約者だ。すまないがここに王子の婚約者であるカオルがいる情報は掴んでいる。大人しく引き渡してもらおうか。……それともサリュイ殿は争い事をお望みかな?」

『婚約者』という言葉を聞いた瞬間、サリュイの顔から薄ら笑いが消え、冷えた表情に変わる。
そして少し考え込み口を開く。

「そうですか……。………では、カオルを譲ってくれませんかクリストファー王子」
「貴様………」
「クリストファー……。落ち着け……」
「ふふ。冗談ですよ。しかし……ヴェルニ公爵も第一王子の婚約者を私に渡すなど……舐めたことを……」

突然でた『ヴェルニ公爵』の名前に、私とクリストファーは目を見開く。
カオルを取り戻した際に追及しようとした内容をアッサリと話すなど……

「どうしました? ヴェルニ公爵の名前が出て驚かれました?」
「………そうだな」
「僕も商人です。利益の大きな方につくのは定石です……。それに……僕は利用されるのがあまり好きではないので……」

私達に微笑みかけるサリュイ……。
しかし、その目は笑ってはいない。

「商人としてか……。そちらの条件はなんだ」
「流石王子……話が早い。一から十まで説明しないと理解できないヴェルニ公爵様とは大違いですね」

ニンマリと笑顔を向けるサリュイは慣れたように商談を始める。
王子を目の前にしてもこの堂々とした態度……。『白い悪魔』と呼ばれる意味を理解する。

それから暫くし、話がまとまるとサリュイは「そうだ!」と、何か面白い事でも思いついたと表情を綻ばせる。

「クリストファー王子。本音を言えば……僕もカオルを返したくはありません。これもいい機会なのでカオルに本音を聞いてみませんか?」
「本音を……? 何を言っている……」

眉間に皺を寄せるクリストファーとは対照的に、サリュイは口角を上げる。


「カオルに選ばせてはどうかと言っているんですよ……。本当に愛しているのは誰なのか……」





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