美醜逆転した世界に転がり落ちたらイケメンたちに囲われました。

赤牙

文字の大きさ
上 下
159 / 181
本章

139話:悪魔と呼ばれた美少年の事情 ②〜サリュイSide〜

しおりを挟む
僕が声をかけると少し驚いた顔をして固まってしまうが…他の者のように恐怖や嫌悪感に満ちた表情は見られない。
カオルの方へと近づいていき、じっ…と見つめる。

近くで見れば見るほどに可愛らしい顔をだなぁ…。

黒髪黒眼は少し珍しいし、何よりカオルはとても可愛くて僕は一目で気に入った。
何故こんなに可愛いのに仮面をつけているのかはとても謎だったが…深くは考えない事にした。

ヴェルニは気に入れば洗脳して連れていっていいと言っていたな…。じゃあ…

僕が洗脳の魔道具を起動するとカオルの顔はみるみる青ざめ恐怖の色に染まる。
確かにキラキラ光った謎のモヤに襲われれば怖いと思うよなぁ…遠隔型はまだまだ改良しなくちゃいけないな。

カオルの様子を見ながらブツブツと呟いていると、洗脳が完了したのかカオルは力なくヘタリと座り込む。


『カオル聞こえる?聞こえたら返事をして』
「はい…」

カオルの目を見ながら命じると素直な返事が返ってくる。
うん。しっかり洗脳できてるね。

『いい子…。ねぇカオル…僕のことどう見える?正直に答えてごらん』
「…怖いです」
「あ……やっぱり怖いの?」

どんな見た目でも受け入れると聞いていたが…やっぱり僕みたいなのはダメか…。

少し期待をしていた分、いつもよりガッカリはしたが慣れているので気にせず声をかけようとした時、カオルは僕の方をじっと見つめ顔を横にふる。

「違います…綺麗だなって…。綺麗すぎて怖いんです…」

僕はカオルの言っている意味が分からず言葉を詰まらせる。

僕の事が…綺麗?
冗談でも言っているのかと思いたいくらいだが、洗脳している状況で冗談なんて言えるはずがないし…カオルは本心でそんな事を言っているの?

そう思うとさらにカオルの事が気に入ってしまい僕は口元が緩んでしまう。
付けていた仮面も外してあげると可愛い可愛いカオルの顔が現れる。

「あぁ…凄く可愛い顔だ。この黒髪と黒い瞳…とても綺麗だ。仮面で隠すなんて勿体ないよ」

サラサラの黒髪を撫でてカオルの頬を優しく撫でると「ん…」と可愛らしい声を漏らす。

『僕の名前はサリュイ。今日からカオルのご主人様だよ』
「…はい。ご主人様」


こうして僕はカオルの主人となった。
カオルと過ごす日々は幸せに溢れていた。

カオルはいつも僕の事を好きだと言ってくれる。
可愛い、綺麗はまるで口癖のように言っていた。
そんな言葉を使うようには命令していないので…その言葉達はカオルの本心なのではないかと僕は思っている。

ヴェルニがカオル変わり者だと言っていた意味がよく分かった。

カオルが僕に向ける眼差しはとっても優しい…。
今までの奴隷達は洗脳されていてもこんなに優しい目をしていなかった。

カオルと触れ合うと安心する…
カオルとのキスは凄く気持ちがよくて…
カオルと初めて体を重ねた時は幸せしか感じなかった…

最初はカオルの事をただの奴隷だって思っていたけれど…僕にとってカオルはなくてはならない存在になった。



今もスヤスヤと僕の隣で可愛い寝顔を見せるカオルが愛おしくてたまらない。

愛しい…愛しい…僕のカオル。

そっと頬を撫でるとカオルはヘラっと口元を綻ばせる。

残りの仕事を終わらせて国に帰ったらすぐにカオルと結婚式を挙げる予定だ。
カオルは派手なのは嫌だと言っていたから二人だけの小さな結婚式を挙げる。

そこで僕達は永遠の愛を誓い合う…。


しかし…カオルが僕を愛してくれるのは洗脳されているからだ…。そう思うと胸がギュッと痛くなる。
もし…洗脳を解いてしまえばカオルはきっと僕の前からいなくなってしまう。

嫌われて…他の皆のように僕のことを気持ち悪いって思うかも…

そう考えると怖くなってしまい…僕は眠っているカオルにそっと抱きついた。
カオルの胸に顔を埋めギュッと抱きしめていると、カオルの腕が僕を包み込んでくれる。


「サリュイ様…?どうしたんですか?怖い夢でも見ました?」

少し眠そうな声が頭上で聞こえたのでそっと顔をあげる。

「カオルに…嫌われる夢を見た…」
「サリュイ様を嫌うなんて…夢の中の俺はきっと偽物ですね…」

カオルはそう言うといつもの優しい笑顔を見せてくれる。

「カオルは僕の事が好き?」
「はい…。俺はサリュイ様が大好きですよ」
「うん…」

カオルの言葉を聞き、また胸元へと顔を埋めぎゅうっ抱きしめるとカオルは優しく俺の頭を撫でてくれる。


この手をずっと離したくない…。
もう…どんな形でもいいんだ…。
カオルが僕の傍にいてくれるなら…。
しおりを挟む
感想 114

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

ある日、人気俳優の弟になりました。

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

処理中です...