美醜逆転した世界に転がり落ちたらイケメンたちに囲われました。

赤牙

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138話:悪魔と呼ばれた美少年の事情 ①〜サリュイSide〜

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『何なのあの見た目は…』
『気持ちが悪い…まるで悪魔だ…』


幼い頃からそう言われ続けた。
色素の薄い真っ白な肌と白い髪…淡紅色の瞳で見つめれば皆の顔が恐怖で引き攣る。

特に何をした訳でもないのに、この見た目だけで皆は僕に近づかない。


唯一救いだったのは武器商人を生業にしている父がいた事。
父も醜い外見をしていたが、それを武器にして商売をしていた。

「醜い奴が売る武器って何だか強そうだろ?交渉する時はあえて仮面を外して笑顔で凄むと効果抜群だ!」

笑いながらいつも父はそんな事を言っていた。
自分の外見に悩んでいた時も父はいつも励ましてくれた。

「サリュイも気味が悪いと言われても気にするな。将来は父さんの跡を継いでくれるんだろ?悪魔の作った魔道具!って感じで売り出したら売れるぞ~」
「えぇ~なんかダサい…」
「そうか~?俺はカッコいいと思うんだがなぁ~」

ケラケラと笑う父の言葉や笑顔に何度も救われた。
こんな見た目じゃ学校にも行けない僕はずっと家に引きこもり武器や魔道具の勉強ばかりしていた。

幸い魔力も多い僕は魔道具を作るのに向いていて…センスもあったようで次々に新作を作り出していく。
父から案を出されると頭の中で図面を展開してテキパキと作っていくと驚きながらも喜んで褒めてくれた。

「凄いな!さすが俺の息子だ!」

そう言ってもらえるのが嬉しくてどんどん作っては父さんの元に持って行った。
新作が出来る度に嬉しそうに微笑み頭を撫でてくれる父が僕は大好きだった…。
僕の魔道具や武器を売る時には、父の傍らに座り商売相手との交渉の仕方も教えてもらった。
大好きな父と過ごす時間は本当に幸せだった…。


しかし、そんな父も僕が11歳の時に病気で他界してしまう。


絶望の淵に立たされながらも残された父の店を潰すまいと僕は11歳で店の店主となった。
子供だからと言って僕を小馬鹿にして商品を安く買い叩こうとする奴もいたが、父さんの教え通りに仮面を外し笑顔で交渉すると相手も僕の顔を見て恐怖や嫌悪感をあらわにし黙り込む事が多かった。

最初の頃はとても忙しかったが徐々に仕事にも慣れてくると、少しずつ父がいない寂しさが襲う…。
その寂しさを埋める為…僕は洗脳の魔道具を作る事にした。

そして洗脳の魔道具が完成し僕は奴隷を一人買う。
その奴隷は父さんにどこか似ていて…僕の心の穴を埋める相手になってもらった。

初めての洗脳はあまり上手くいかず、奴隷は僕の顔を見ると怯えていた。それから少しずつ調整していくと、僕が近寄っても怯えなくなった。

洗脳の内容は至って簡単だ。

『僕の事を愛してほしい』

奴隷はその命令通り、僕の事を愛してくれた。
愛してくれるなら形だけでもいいと最初はそう思っていたが…一緒に過ごしてきた事による一方的な奴隷に対する信頼感が生まれ僕は奴隷にこう命令する。

「僕の事が好きか正直に答えて…」

命令された奴隷は少し黙りこむとゆっくりと口を開く。

「サリュイ様は醜くて…怖くて…好きではありません」

奴隷の言葉にショックを受け、何故あんな事を聞いてしまったのかと後悔した。

洗脳しただけでは人の心なんて変わらないと気付かされたが……それからも僕は次々と奴隷を買い洗脳しては皆に同じ質問を繰り返していった…。

いつかきっと僕を受け入れてくれる人がいると思いながら…。


それから僕の洗脳の魔道具や武具は国内外で売れに売れた。
王家も顧客に入ると僕の生活も立場も一気に変化していった…。

僕を羨む者も多くいたが…僕が欲しいのは地位や金や名誉ではない。
僕の事を愛してくれる人…ただそれだけだ。


「サリュイ様。珍しい玩具を手に入れられそうなんですが…いかがですか?」
「珍しい玩具…?」

隣国のナリス国で商談をしていると、ヴェルニ公爵がニタニタと笑いながらそんな話をしてくる。

「一体どんな玩具なのですか?」
「どんなに恐ろしい見た目の者も受け入れる少し変わった奴隷です」
「へぇ……どんな見た目でも…」

ヴェルニの話に僕は少し興味を持ち、一度会ってみることにした。


それから数日後、ヴェルニ主催の夜会が開かれ僕はヴェルニが指定した一室で『カオル』という人物が来るのを待っていた。

しばらく待っていると、部屋の扉が開く音がして一人の少年がキョロキョロしながら部屋に入ってくる。
遠目から見ても可愛らしい少年に僕は少し緊張する。

本当に…僕を見ても怖がらないのかな…?

そう思い、こちらへ近づいてくる少年に僕は声をかけた。

「ねぇ。君がカオル?」
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