美醜逆転した世界に転がり落ちたらイケメンたちに囲われました。

赤牙

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本章

134話:白い悪魔 ③

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サリュイ様と暮らし始めて数日が経つ…

サリュイ様は常に俺を連れて行動する。
食事もお風呂も寝る時もずっと一緒だ。そして仕事にも…

俺は豪華な応接間のソファーでサリュイ様の隣に座り、今も商談の話を一緒に聞いている。


サリュイ様は俺よりも若い15歳なのだが、その歳で自分の店を持っている隣国の有名な武器商人だった。
とんでもなく頭のいいサリュイ様は自作で武器や魔道具を作ってしまうらしい。

そしてサリュイ様の元には、毎日毎日色んな人達がやってきて仕事の話をしている。
サリュイ様の作る魔道具はとっっても凄いらしく、話の中で出てくる金額はとんでもなかった…。


「ん~その値段では売ることができませんね」
「なっ!?これ以上の金を出せと言うのか!」

商談に来ていた男性は顔を真っ赤にして怒りを露わにしている。
男性の怒声も気にする事なく「そうですね~」と爽やかな笑顔を向けるサリュイ様を見て、男性の苛立ちはさらに大きくなった。

「くそっっ…。人の足元ばかり見やがって…調子に乗るなよ!この醜い悪魔めっ!」

男性はサリュイ様に暴言を吐き捨てるとバンッと扉を開けて部屋を出て行く。

「な、なんなんですかあの人…サリュイ様に向かって醜いなんて…」

俺がさっきの男の言葉にムカついていると、サリュイ様がヨシヨシと頭を撫でてくれる。

「気にしなくていいよカオル。あんなのはいつものことだから」
「でも…でも…」
「ふふ。カオルは怒った顔も可愛いね」

サリュイ様はさっきの男の言葉など本当に気にしていない様子で俺の頬を撫でながらニコニコしていた。

まぁ…サリュイ様が気にしていないのならいいのだけど、天使のように愛らしい人に醜いだなんてひどい奴だ…

俺はそう思いながら、サリュイ様をギュッと抱きしめる。

「サリュイ様は醜くなんかありませんからね。凄く凄く可愛いです」
「ありがとうカオル…」

サリュイ様も俺の背中に腕を回すとギュッと抱きしめてくれた。



午前中のサリュイ様の仕事が落ち着くと一緒に食事を食べて、サリュイ様の部屋のベッドでゴロゴロしながら過ごす。
ベッドで横になっているとサリュイ様は眠そうに俺の方へとすり寄ってくる。

…可愛いなぁ。

サリュイ様はご主人様なのに、俺はサリュイ様が可愛くて仕方がなかった。
ウトウトと目を閉じるサリュイ様の頭を撫でながら俺も一緒に目を閉じた。


「サリュイ様。ヴェルニ公爵様がお見えです」

お昼寝をしていると部屋のドアがノックされ使用人さんが来客が来たと伝えてくれる。サリュイ様は「分かった」と、返事をして俺を連れて応接間へと向かう。

応接間にはすでにヴェルニ公爵が来ていて、でっぷりした体をソファーに埋めていた。


「サリュイ様。お久しぶりです。おや…贈り物も気に入っていただけたようですね」

ヴェルニ公爵はサリュイ様の後ろにいる俺を見ると目を細めて笑顔を見せる。

「あぁ。とても気に入っているよ」

サリュイ様に『気に入っている』と言われると少し嬉しくてニヤケてしまう。
いつものようにサリュイ様の隣にちょこんと座り仕事の邪魔にならないように静かにしておく。

「それで用件は何ですか?」
「あのですね…もっと強力な洗脳魔道具が欲しいのですが…」
「強力なものですか…。まぁありますけど、値段は前回の品物の倍はしますよ」
「倍……。それでも構いません。洗脳してしまえば逆らうことのできないものを…」

ヴェルニ公爵は歪んだ気持ちの悪い笑顔を見せながら頷く。

「では準備しておきますね。作成するのに少し時間をいただきますがよろしいですか?」
「はい!それは勿論!」
「分かりました。それにしても…誰に使うのですか?前に話していた…第二王子を洗脳されるおつもりですか?」
「はは…あれは冗談ですよ冗談!そんな恐ろしい事を私ができる訳ないですよ…」
「あれは冗談だったのですか?僕はてっきり本音かと…。いやぁ残念ですね…ヴェルニ公爵がこの国を支配すれば、素敵な国になると思ったのですが」

サリュイ様が笑顔でそう言うと、ヴェルニ公爵も満更ではない顔をして「実は…」とコソコソと話し始める。

「サリュイ様がおっしゃる通り私が王になるべく戦いをしかけようと思っています。まずは手始めに第二王子を洗脳し私の息子との婚約を結ばせようと思いまして…」
「やはりそうでしたか。ふふ。これからが楽しみですね。では、魔道具の準備ができ次第連絡させていただいますね」

そう言ってヴェルニ公爵との商談が終わり、公爵が部屋を出て行くとサリュイ様は俺の膝の上にゴロンと寝転がってくる。

「はぁ~ヴェルニって、ほんとバカだよね~。おだてればなんでも喋っちゃうんだから。あんなバカが王なんて笑っちゃうよ。あいつ自分じゃなーんにもできないのに」

俺はよく状況が分からないので、うんうんと話を聞きながら膝に乗せられたサリュイ様の頭を優しく撫でる。

「顔がいいだけで何でもできるなんて思ってるんだから…。でも、そのおかげで僕は儲けてるからいいんだけどね~。でも、本当にヴェルニが王になったらこの国もおしまいだね…。ねぇ、カオルはこの国のこと好き?」
「国が好きかと聞かれても……あまり考えた事がありません」
「そうだよね~、一般市民は国の事なんて考えないもんね。カオルの故郷だからヴェルニに好き勝手されるのは嫌だなぁ…まぁヴェルニがこの国の権力握っちゃったら奪えばいっか!」

サリュイ様はニコニコ笑いながら無邪気にそんな事を言うが、国を奪うってことは争いが起きるってことだよな…。

そんな事をサリュイ様に考えさせちゃいけない…

「サリュイ様…」
「ん?どうした?」

俺はサリュイ様の頬に手を当て真っ直ぐに見つめる。俺の真面目な顔に笑っていたサリュイ様の顔も真剣な表情に変わる。

「俺は国なんていりません。サリュイ様が傍にいてくれれば…それだけで十分です」
「……本当に?」
「はい」

ニコリと笑顔向けると、サリュイ様もクスッと笑ってくれる。

「本当にカオルは僕の事が好きだね」
「はい。俺はサリュイ様が大好きです」

「……洗脳を解いてもカオルが僕の事を好きでいてくれたらいいのに」
「??」

サリュイ様は小さな声でブツブツと呟いた後、俺に優しくキスをしてくれる。
初めてサリュイ様からキスをしてくれた事に感動した俺はその後も沢山キスをおねだりした。
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